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昨年4勝止まりも…来オフにFAで争奪戦可能性の「中日の右腕」は

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4年ぶりに100イニング未満


昨年は開幕投手を務めたが成績は振るわなかった柳


 悔しさは結果で晴らすしかない。球団史上初の3年連続最下位に沈んだ中日は、井上一樹監督が就任して首脳陣が刷新。選手も目の色を変えている。

 先発ローテーションの軸として期待される柳裕也はその一人だ。昨年は13試合登板で4勝5敗、防御率3.76と不完全燃焼の結果に。「来年に何としてもつなげるために、死に物狂いでやります」とシーズン終了後に沖縄で行われた秋季キャンプに、30代で唯一参加した。指揮官にもその思いは伝わっている。井上監督は「来年に復活を期するという気持ちがあるなら、若手と同じ全部のメニューをこなすぐらいの気構えがないと復活なんかできないよっていう話をしたときに『行かせていただきます』と。決意を感じた。じゃあ、そうしようかと」と語っている。

 先発陣で昨年規定投球回数に到達した投手は高橋宏斗小笠原慎之介の2人のみ。高橋宏は12勝4敗、防御率1.38で最優秀防御率のタイトルを受賞した。本来なら柳も先発でシーズンを通して稼働してもらわなければ困る投手だ。プロ8年目で初の開幕投手を託され、開幕3試合で19ニングを投げて自責点1のみと幸先良いスタートを切ったが、その後は集中打を浴びて崩れるマウンドが続いた。6月16日のロッテ戦(ZOZOマリン)で5回8安打4失点と踏ん張れず4敗目を喫すると、登録抹消されてファームでの調整期間は2カ月以上に及んだ。8月以降の一軍登板も2試合に終わり、投球回数は67イニング。4年ぶりに100イニングを切った。

 責任感の強い男は、選手会長として11月23日に行われたファンフェスタで締めのあいさつに立つとファンの前で謝罪した。

「中日ドラゴンズは今年も最下位に終わり、3年連続の最下位となってしまいました。選手一同、連日たくさんファンの皆さんにたくさん応援してもらったにもかかわらず、このような成績になってしまったことを申し訳なく思っています。申し訳ありませんでした」

入団後、Aクラスは1度のみ


 総合力の高さは誰もが認める。21年に11勝6敗、防御率2.20で最優秀防御率、最多奪三振(168)のタイトルを獲得。投球回数172イニングはリーグ最多だった。22、23年は打線の援護に恵まれず2ケタ勝利に届かなかったが、いずれも150ニングを超えている。だが、自分の成績が良ければ満足するわけではない。低迷期が続き、選手会長に就任した23年。キャンプ前日の全体ミーティングで、熱い思いをナインに明かして話題になった。柳は週刊ベースボールのインタビューで、その真意を以下のように語っていた。

「ずっとチームが低迷している中で、こうやって毎年、1月31日を迎えて全員で集まって『明日から1年頑張ろう』と言っている。でも結局、シーズンが終わってみればBクラスだったり、最下位だったり。もうこんな状況を打破したい、しなければならないということですね。何とか全員で弱いドラゴンズを終わりにしようということを言わせてもらいました。こんな状況なのに、それでも応援してくれる大勢のファンがいる。でもそれは当たり前のことじゃないと」

高橋周平さん、木下拓哉さん、具体的な個人名も挙げて、僕も含めた中堅どころが頑張っていきましょうと。そこが中心になって頑張っていかないと何も変わっていかない。若手に対しても、試合に出ているような選手はチームのみんなから信頼を得られるように、野球はもちろんのこと、私生活や態度でもしっかりやってもらいたいと話しました」

順調に行けばFA権取得


 柳は一軍で順調に先発を回れば、今シーズン中に国内FA権を取得する。他球団の関係者は「投手としての能力が高いだけでなく、リーダーシップがあり若手のお手本になる。権利を行使すれば、複数球団の争奪戦になるでしょう」と高い評価を口にする。

 もちろん、今の柳にFA権のことは頭の片隅にもないだろう。中日に17年に入団以来リーグ優勝を味わった経験がなく、Aクラスに進出したのも20年の1度のみ。応援してくれるファンのためにも、優勝争いの緊張感を味わいたい。巻き返しに向け、重要なキーマンであることは間違いない。

写真=BBM

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