「注釈」つきのシーズン2勝

東大のキーマンとなる幹部が2025年春の「最下位脱出」を誓った。左から副将・酒井、主将・杉浦、副将・中山[写真=BBM]
東大が1月12日、2025年の活動をスタートさせた。スローガンは「逆襲」。その意図を、主将に立候補した不動の正捕手・杉浦海大(4年・湘南高)は説明する。
「東大は1998年春から54季連続最下位で、『6位でもしょうがない』という固定観念がある。六大学リーグの中にあって、その評価を引っ繰り返してやるんだ!! と。東京六大学野球連盟創設100年の2025年に勝ち点を奪取して、最下位を脱出する。東大が勝つと、『勇気をもらえる』と聞きます。文武両道、頭を使って勝てることを示していきたい」
クレバーな主将・杉浦を筆頭に、4年生の戦力が充実する。投手陣は右サブマリンの渡辺向輝(海城高)が軸。打線は不動の一番・酒井捷(4年・仙台二高)、二番・中山太陽(4年・宇都宮高)、五番・大原海輝(4年・県立浦和高)がいずれもベストナイン受賞経験者。酒井と中山は立候補して副将を務める。
「副将2人には、言葉に説得力があるんです。背中でも引っ張ってくれ、信頼感があります。最上級生は練習熱心ですし、一丸となって、けん引していきたい思いがあります」
昨秋、打率.341、1本塁打、4打点で初のベストナインを受賞した左の強打者・中山は「打率、本塁打、打点で秋以上の結果を残したい。主将・杉浦と、副将・酒井を、自分は下から押し上げていく役割を担いたい。練習の段階から、勝利への執念がついてきている」と意欲を語る。50メートル走6秒0の斬り込み隊長・酒井は2年秋にベストナインを受賞したヒットメーカー。「打率4割で首位打者を狙いたい。プロになりたい。自分の夢を追う」と、チームのために安打量産を固く誓っている。
東大は昨秋、7年ぶりのシーズン2勝を挙げた。しかし、杉浦は「注釈」をつける。
「昨年は慶應さんと法政さんから1勝ずつ挙げることができましたが、いずれも2回戦。(1勝1敗で)勝ち点勝負となった3回戦は力負けしました。8年前の秋に法政さんから勝ち点を挙げていますが、2連勝でした。つまり、主戦投手が投げる1回戦で勝つことが、勝ち点につながる。17年秋の法大戦は2試合で17得点でしたが、打線の破壊力がないと、1カードで2勝を挙げることはできません」
攻撃力アップのため、昨年11月の新チーム結成以降、外部コーチ2人が加わった。
荒井幸雄(元
ヤクルトほか)と栗山彰恭氏である。
「荒井さんはプロ野球ほかで経験、実績も豊富で、栗山さんは打撃アナリストとして分析、動作解析に長けている。嚙み合わせて、攻撃力強化を目指している」(東大・大久保裕監督)
主将・杉浦は「打撃練習のメニューも変わり、かなりレベルアップしている手応えがあります。(今春は)期待していただいて良いと思います」と、不敵な笑みを浮かべる。
大久保監督は「やられっぱなしではなく、やり返す。100周年を盛り上げていきたい」と意欲的だ。指揮官自ら「逆襲」を固く誓った。
文=岡本朋祐