先発として安定感抜群
シーズンを通じて先発で回れば、2ケタ勝利に手が届くだろう。
阪神で来日3年目を迎えたジェレミー・ビーズリーだ。
総合力が高く、大崩れしない。昨年は、右肩のコンディション不良で開幕はファームで迎えたが、5月中旬に一軍昇格すると先発ローテーションに定着。後半戦は先発陣の中で安定感が際立っていた。14試合登板で8勝3敗、防御率2.47。変化球の質が非常に高く、カットボール、スライダー、スプリットの被打率は1割台だった。他球団の首脳陣は「現在のセ・リーグの助っ人外国人の中で、トップクラスの先発投手でしょう。変化球の投げミスが少ないし、直球は球速以上に押し込んでくる感覚がある。連打で得点を取るのが難しい。対策はいろいろ考えています」と警戒を強める。
「ナイスガイ」「人格者」
来日する外国人選手がNPBで1年目から活躍することが、難しい時代になっている。ビーズリーも2023年は調整法が難しかった。救援要員でスタートすると、チーム事情で先発に配置転換された。シーズン終盤は先発、中継ぎと両方の起用法を頭に入れて一、二軍を往復。18試合登板で1勝2敗、防御率2.20と成績だけを見れば、残留は微妙な状況だったが、阪神は契約延長を決断した。先発できっちり試合をつくった夏場以降の投球が評価されたのだろう。安定感が高まった要因について、週刊ベースボールの取材でこう語っていた。
「今までは、コーナーに目掛けて思いっきり投げていたんだ。でも先発をするようになって、軽くというか体全体に力を入れて投げなくても、キレのいいボールが投げられ、打者を打ち取れるということが分かったんだ。それができると長いイニングでも対応が可能になっていった。それがすごく僕にとって大きな気づきでもあった」
阪神の選手や関係者はビーズリーについて、「ナイスガイ」、「人格者」と口をそろえる。チーム事情でファームに降格した際も不満のそぶりを見せず、選手たちと積極的にコミュニケーションを取る。「郷に入っては郷に従え」。頭では分かっていても、異国の地で実践するのは難しい。右腕には信念がある。
「実際に、さまざまな場面でうまくいかずに怒りたくなることもある。でもその怒りは他人には関係ないことが多いと思うんだ。それを表情などに出しても意味がないと思う。それよりも何があってもポジティブに考え、笑顔で過ごしたほうが、何かと自分のためにもなると思っているんだ。それは人としての在り方でもあると思う」
際立つ「巨人キラー」ぶり
リーグ連覇を狙う
巨人は
菅野智之が海外FA権を行使してオリオールズに移籍したが、
田中将大、
甲斐拓也、
ライデル・マルティネスと他球団のビッグネームを獲得。阪神は目立った外部補強がなかったが、FAで去就が注目された
大山悠輔、
坂本誠志郎、
原口文仁、
糸原健斗の残留に成功し、現有戦力で十分に戦える手ごたえがある。最多勝に2度輝いた実績を持つ
青柳晃洋はポスティングシステムでフィリーズとマイナー契約を結んだが、近年は先発ローテーションで稼働していたとは言えず大きな戦力ダウンにはならないだろう。
才木浩人、
村上頌樹、
大竹耕太郎、
西勇輝に加えて、ビーズリーがどこまで白星を伸ばせるか。心強いデータがある。巨人戦の成績を見ると、23年は先発、救援で計3試合登板して無失点。昨年も「巨人キラー」ぶりが際立つ。3試合すべて先発登板で3試合登板し、3勝0敗、防御率1.00。不動の四番・
岡本和真は9打数無安打、6三振と完ぺきに抑え込んだ。リーグ連覇を逃した昨年は巨人との対戦成績で12勝12敗1分。23年は18勝6敗1分と大きく勝ち越し、首位を独走した。直接対決で宿敵を叩けばチームが勢いに乗れる。ビーズリーがV奪回のキーマンであることは間違いない。
写真=BBM