1月下旬に電撃復帰
セ・リーグの勢力図を変える選手がDeNAに電撃復帰した。トレバー・バウアーだ。横浜市内で1月27日に開催された「横浜DeNAベイスターズ 2025 初春の集い」でサプライズ発表された。VTRで登場し、「横浜、そして日本中のファンの皆さん、こんにちは。また皆さんに会えるのが楽しみで待ちきれません。今シーズン、再びベイスターズでプレーすることを伝えられてうれしいです。1人の選手として、一番になるのが好きなんだ。ずっとトレーニングをしてきた。絶好調で投手としてこれまでで最高の状態だ。僕にとって、沢村賞とサイ・ヤング賞を獲ることは本当に意味があることなんだ。それができたら野球人生の中で最高の栄誉だと思うし、今年はそれを成し遂げたいと思っている」と話し、会場に詰めかけたファンから大きな歓声が起こった。
2020年にサイ・ヤング賞を受賞するなどメジャー通算83勝をマーク。NPBでもその力を証明している。23年3月にDeNAに入団すると、19試合登板で10勝4敗、防御率2.76をマーク。目を見張るのは修正能力の高さだ。来日初登板となった5月3日の
広島戦(横浜)では7回7安打1失点で来日初勝利を飾ったが、続く5月9日の
巨人戦(新潟)で6回11安打7失点、16日の広島戦(横浜)でも2回8安打7失点と乱調が続いた。
メジャーでは高めの直球を多用して縦の変化で凡打に仕留める配球パターンが多かったが、日本の打者はコンパクトにはじき返してくる。直球、変化球を低めに集めるスタイルに変えると、安定感が一気に高まった。6月に4試合登板で4勝0敗、防御率2.08をマークして自身初の月間MVPを受賞。暑い夏場もパフォーマンスが落ちない。8月は3試合連続で中4日で先発するなど、6試合に先発して3勝1敗、防御率1.67。2度目の月間MVPに輝いた。
レジェンド右腕も高評価
野球評論家の
堀内恒夫氏は、バウアーについて週刊ベースボールのコラムで高く評価していた。
「バウアーのような中4日や5日を基本に先発登板するピッチャーが日本へやって来ると、誰もが目を見張ることになる。今季のバウアーの活躍と、日本のプロ野球へ投じた一石が、大きな波紋を生んだことは間違いないだろうね。仄聞によると、バウアーは若いころから動作解析カメラを導入して、変化球の握り方や、ボールをリリースする瞬間の手と指の角度などを研究していたというではないか」
「研究熱心さに加えて、投げるスタミナと情熱もある。外国人投手が日本へ来て打たれ続けると、気持ちが切れてしまうことが多々あるからね。ところが、バウアーはどんなときでも常に前向きな姿勢を保っている。『何としても打者を打ち取りたい!』という気迫を前面に押し出して、投げている。それが日本のピッチャーとは大きく異なるところだ。MLBのピッチャーが日本へやってきて成功する例は、それほど多くないと思う。その理由は、彼らがMLBでやってきたことをそのままやらないから。要するに日本の野球を甘く見てしまうからなんだよ」
勝利に対する執着心
すべての球種の精度が高く、シーズン終盤になっても投球の再現性が落ちない。堀内氏が指摘するように、勝利に対する執着心は他の選手が見習う点が多かった。レギュラーシーズン最終登板となった8月30日の
阪神戦(甲子園)。3回一死一塁で投前に転がった打球を処理する際に滑り込みながら捕球し、一塁に送球した(記録は内野安打と悪送球)。その後は打者2人を打ち取ったが、右足に違和感を覚えてこの回で降板。横浜市内の病院で「右腸腰筋遠位部損傷」と診断を受けて戦線離脱した。だが、「すべてのプレーで全力を尽くす。それができなくなったら、引退してもいいぐらいの覚悟で臨んでいる」と後悔するそぶりを見せなかった。
バウアー獲得の衝撃は大きい。他球団の首脳陣は「日本で通用することは証明しているからね。シーズンを通じて投げれば2ケタは勝つでしょう。セ・リーグの勢力図を変える存在です」と警戒を強める。
リーグ制覇、2年連続日本一へ。DeNAに最高のピースが戻ってくる。
写真=BBM