リリーフ陣が劇的に改善

巨人移籍1年目の昨季、中継ぎで結果を残した
2年連続Bクラスから昨年V奪回を飾った巨人が劇的に改善した点は、救援陣だった。救援防御率を見ると2022年は3.78、23年が3.81といずれもリーグワーストだったが、昨年はリーグトップの2.27と大幅に良化した。
守護神の
大勢、セットアッパーの
カイル・ケラー、
アルベルト・バルドナード、
船迫大雅、
高梨雄平の活躍ぶりがフォーカスされるが、劣勢の展開で登板する投手たちの踏ん張りも忘れてはいけない。
ソフトバンクから移籍1年目の
泉圭輔が35試合登板で2勝0敗1セーブ5ホールド、防御率1.93をマーク。泉の好投が試合の流れを変えたケースもあった。9月11日の
広島戦(マツダ広島)で2点ビハインドの8回に登板して無失点に抑えると、打線が9回に一挙9得点爆発。逆転勝利で泉に白星がつき、リーグ優勝へ突き進んだ。
他球団の打撃コーチはこう語る。
「球威のある直球に加えてツーシームと縦のスライダーが厄介でした。制球がばらついていたイメージがあったけど、思った以上にまとまっていた。他球団なら『勝利の方程式』に組み込まれていたでしょう。ソフトバンク時代から力のある投手だなという印象がありましたけど、巨人に移籍してあらためて感じましたね」
22年に悔いの残る登板
188センチの長身から投げ下ろす投球フォームで、三振奪取能力が高い。ソフトバンクでは20年から3年連続30試合以上登板。忘れられない試合がある。マジック「1」で迎えた22年10月2日の
ロッテ戦(ZOZOマリン)。2点リードの6回に登板したが、
山口航輝に逆転3ランを浴びた。勝つか、引き分けでリーグ優勝が決まる試合を優位に進めながら、痛恨の一発で敗戦投手に。この試合がペナントレースの流れを変える形になり、2位の
オリックスに逆転優勝を許した。
巻き返しを狙った23年だが、3試合登板で防御率16.88と結果を残せなかった。「早く“やり返さないと”というところにとらわれ過ぎた。焦りが一番大きかったかもしれない」と振り返る。ただ、収穫もあった。ウエスタン・リーグでは46試合登板で47回1/3を投げて6四死球。制球力が安定したことで、「あとはそこにどうやって出力とかを乗せていくかだけ」と手応えをつかんでいた。
菅野智之への感謝
アダム・ウォーカーとのトレードで
高橋礼とともに巨人への移籍が決まったのは、そのシーズンのオフだった。新天地では球界を代表する右腕の
菅野智之に気にかけてもらった。週刊ベースボールの取材で、感謝の思いを語っている。
「2023年のオフにソフトバンクからトレードでジャイアンツに来て、すごい投手なので最初は慎重に恐る恐る……という感じだったんですけど、話していくうちに、菅野さんはすごく後輩思いな方なんだと知りました。野球の助言をもらうことができましたし、プライベートでもすごく仲良くしてもらいました。オリオールズでプレーすることが決まりましたね。シーズン中、2人でいるときに『来年、メジャーに行くわ』と言われました。以前ポスティングで行けなかったというのも知っていたので、35歳であれだけ活躍して、もう一回夢を追い掛けに行くのはカッコいいなと思いました。メジャーの夢がかなって僕もうれしいです」
菅野が海外FA権を行使してオリオールズに移籍したことで、奮起が求められるのは先発陣だけではない。リリーバーが試合の早い段階でマウンドに上がる機会が増える可能性が十分にある。泉は昨年の好成績に浮足立つことはない。「どこ(どんなシチュエーション)でも投げるからこそ、印象が薄いというか。数字で見たら抑えてはいても、数字以上の安心感はない。大勢みたいに、ピッチングに圧倒する力がないので、それが、僕が勝ちパターンにいけない理由の一つだと思う」と自己分析する。
まだ27歳と若い。信頼を積み上げて巨人の救援陣に不可欠な存在へ――。野球人生の全盛期はこれからだ。
写真=BBM