しっかりしている目的意識

星稜高出身の143キロ左腕・佐宗は昨春のセンバツ甲子園で4強進出。中学時代から大舞台での経験が豊富である[写真=BBM]
早大は2月1日、総合型選抜2群(アスリート選抜入学試験)で合格した新1年生4人が合流。午前9時から約5時間、活動拠点の安部球場(東京都西東京市)で初練習を行った。
星稜高出身の佐宗翼は「勝てる投手」である。星稜中では3年時に全日本少年大会で春夏連覇。星稜高では2年秋の明治神宮大会を、32年ぶりに制した。中学、高校で「日本一」を知るサウスポーである。自身の実績は謙虚に振り返り、早大での抱負を力強く語った。
「運が良かったのと、仲間の力があったからこそ、優勝することができました。東京六大学は応援も素晴らしい。神宮の早慶戦の大観衆の中で、優勝できたら一番だと思います」
高校卒業後はレベルの高い環境で野球を続けたいと考えていた。2年秋の明治神宮大会後、星稜高・山下智将監督と進路面談を行った。
「もっと上を目指せる、と言われたんです。神宮大会で自信がついたのもありましたが、華のある東京六大学、早慶戦を見て、神宮で投げたいと、早稲田大学を志望しました」
練習初日。あこがれの先輩から声をかけられた。「一緒に頑張って行こう! 分からないことがあれば、何でも聞いてね」。1年秋から不動のリリーバーとして、
小宮山悟監督から全幅の信頼を得ている左腕・香西一希(3年・九州国際大付高)だ。ストレートは130キロ台だが、変化球を巧みに操り、相手打者を見て投げるピッチングのコツを熟知。最速143キロの佐宗も得意のスライダーを軸に、ツーシーム、フォークを投げ分けるのが武器である。現在はチェンジアップの習得にも努め、力勝負ではなく、投球術が生命線である。
「高校時代から、香西さんの投げている姿を参考にしてきました。自分の目指すべき像です。星稜高では複数の指導者から『球速を追い求めるな』とアドバイスを受けてきましたが、自分の特長はボールのキレ。香西さんはウォーミングアップのときにも隣に来てくれ、自分のことを気にしていただき、良いスタートを切ることができました。身近な存在として(アスリート選抜入試の同期入学である)小松(小松龍一、花巻東高)がいます。彼は球速が持ち味で、良い部分を吸収していきたい」
小宮山監督は3月の沖縄・浦添キャンプの帯同を示唆しているが、あくまでもチームとして動く経験の場として位置付けており「大きく育てます。急がせない」と明言する。しかし、クレバーな佐宗はこう受け止めている。
「春のリーグ戦開幕までには、対外試合が組まれており、たくさん練習する時間がある。焦ることはしませんが、あくまでも、春のリーグ戦で投げられるように準備していきたい」
投げる、投げないは別にして、春のシーズンに照準を合わせる。チームで戦っていく上で、投手としての最低限の責務と考えている。
将来像も明確。目的意識がしっかりしている。
「ドラフト1位で、プロ入りしたい」
最高到達点を定め、そこから逆算をして、計画的に物事を進める几帳面な性格である。
「プロは甘い世界ではなく、必ずしも行けるとは限らない。プロに行くために、何をするか。学校生活、寮生活、日々の練習と、プロセスを大事にしていきたい。4年間、大学でしっかり勉強もして、人として、選手としても成長できる時間にしていきたいと思います」
4年8シーズンの数字設定はしなかった。「なるべく多く勝ちたい。早慶戦で投げて勝ちたい」。高校2年秋に「秋日本一」を遂げた神宮は「投げやすいです」と、慣れ親しんだマウンドが佐宗の大学デビューを待っている。
文=岡本朋祐