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開幕ローテ当確の田中将大「平成の怪物」の復活劇が良きお手本に

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オープン戦で2回無失点


田中は巨人で復活することができるか


 完全復活に向け、着実に歩を進めている。

 巨人・田中将大が3月2日のオープン戦・ヤクルト戦(東京ドーム)に先発し、2回2安打無失点。直球は最速145キロを計測し、昨年最多安打の長岡秀樹、本塁打、打点の2冠王に輝いた村上宗隆をいずれも直球でフライアウトに仕留めるなど、140キロ台前半の球速以上の威力を感じさせた。久保康生巡回投手コーチと二人三脚で取り組んでいるフォーム改造は順調に進んでいるようで表情が明るい。阿部慎之助監督は早くも開幕先発ローテーション入りを明言した。

 昨年はクリーニング手術を行った右肘の状態が上がらず、一軍登板は1試合のみ。プロ18年目で初の未勝利に終わり、シーズン後に楽天を退団した。手を差し伸べてくれた巨人で期する思いは強い。残り3勝に迫った日米通算200勝は通過点に過ぎず、首脳陣にも2ケタ勝利を期待されている。

カムバック賞を獲得した松坂


中日移籍1年目に6勝を挙げた松坂


 全盛期のように直球でねじ伏せる投球を取り戻すのは難しい。ツーシーム、スライダー、フォークなど多彩な変化球を織り交ぜて打者を打ち取る投球が必要になってくる。投球スタイルのモデルチェンジで、復活劇を遂げた松坂大輔氏は参考になるだろう。

「平成の怪物」の異名で、高卒1年目から3年連続最多勝を獲得するなど球界のエースとして活躍した松坂氏だが、30代から右肩や右肘の故障で思うように投げられない時期が続く。メジャーで8年間プレーし、15年にソフトバンクに移籍したが右肩の蝶に悩まされて3年間の在籍で1試合登板のみ。17年オフに退団し、中日にテスト入団したが復活に懐疑的な見方が多かった。

 だが、ここからはい上がった。150キロを超える往年の直球は投げられなくなったが、カットボールの配分を増やし、スライダー、カーブ、ツーシーム、チェンジアップ系など多彩な変化球を織り交ぜてバットの芯を外す。右肩に痛みが消えたことで思い切り腕を振れるようになった。当時の森繁和監督は「月に1度か2度、投げられればいいと思っていた」と考えていたが、一時は中6日にも挑戦した。走者を背負っても本塁生還を許さない粘りの投球を続け、11試合登板で6勝4敗、防御率3.74をマーク。カムバック賞のタイトルを受賞した。

「自分ができることをやっているだけ」


 昨年まで中日の監督を務めた野球評論家の立浪和義氏は、週刊ベースボールのコラムで高く評価していた。
 
「もはや150キロ超のストレートがあるわけではありませんが、カットボール、スライダーをうまく使い、昔とはまったく違ったピッチングスタイルになっています。特に感じるのは、非常に考えて投げているということです。実際にはどうなのか分かりませんが、その日のマウンドに立って打者に投げながら、今日の自分はどの球を軸にすればいいかチェックしているような印象もあります。最大の武器はカットボールです。使い方も多彩ですね。いわゆるフロントドア、バックドアといろいろな使い方をしていますし、左打者の内角をカットボールで攻めて、打者が詰まりたくないと始動を早め、引っ張りにきたところで、スッと外のチェンジアップですかしたりすることもありました」

 松坂氏は投球スタイルの変化について、週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っていた。

「えーっとですね、よく聞かれるんですけど、自分を知って、今何をできるかということを選択して投げているだけ。要は力投派から技巧派に変わったとか、そういう意識は僕にはないです。自分ができることをやっているだけです」

「徐々に……ですね。マイナーチェンジ、モデルチェンジをして復活をしたような言い方をされますけど、僕の中にまだその手応えはないです。どちらかというと、投げられてはいるけどいつまた投げられなくなるか分からないっていう不安は大きいですね。痛めたときも投げられなくなる予兆はなかったというか、急に来たので。その不安はあります」

 松坂氏は翌19年に右肩を故障。未勝利に終わり退団すると、古巣の西武で2年間プレーして現役引退したが、37歳で成し遂げた中日での復活劇は色褪せない。

 36歳の田中も5、6回を最少失点でしのぐ投球を続ければ、白星が自然と積み重なるだろう。「サンデーマー君」が定着すれば、チームにとっても大きなプラスアルファになることは間違いない。

写真=BBM

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