MLB関係者も熱視線

右の強打者である創価大・立石は野球人生初という主将の大役を受け止め日々、練習に励んでいる[写真=BBM]
大学にして、野球人生初の主将だ。創価大でキャプテンナンバー1を着ける立石正広(4年・高川学園高)は背筋を伸ばして答えた。
「初めてということは、あまり意識していないですが、リーグ戦に入ればまた、いろいろと出てくると思います。開幕前の段階では、未知数な部分が多いです。プレーの面では、チームが苦しい場面で打つ。自分がやるべきこととして、そこだけは変わらないです」
3月15日、JR東日本とのオープン戦。三番・二塁で先発出場した立石は、5打数1安打2打点だった(試合は7対7の引き分け)。7回表一死満塁から中前2点適時打を放ち、勝負強さを披露。全5打席で異なる投手との対戦で、しかも、初見という難しい状況だったが一切、言い訳はしなかった。
「初回の第1打席で立ち後れてしまった(見逃しでの三球三振)。チームとして『初回を大事に』と言っている中で、やってはいけないプレー。その日のファーストスイングで、長打を打つ準備をしないといけない。日によってコンディションに差があるんです。体が開き気味、バットのヘッドが下がっていたり、その日の課題に早く気づいて、試合の中で修正していかないと、勝負はできません」
昨年11月の明治神宮大会では、左右に打ち分ける2本塁打(6打点)。打率.667をマークし、大会最多記録を更新する10安打で、創価大として全国大会最高成績となる準優勝を遂げた。強打の右打ち、しかも強肩、俊足の内野手。スカウトの評価はうなぎ登りであり、2025年の「ドラフト目玉」と言われている。
「何か一つのきっかけで上位指名、下位指名になる。いろいろな姿が見られている。毎試合、ベストパフォーマンスを見せられるか」
NPBスカウトだけでなく、MLB関係者も熱視線を送っている。立石は、かねてからメジャー志向が強い。「行きたいとは思っていますが、今のままでは無理。レベルアップしないといけません。NPBを経てからの挑戦? 今はそう考えています」。慎重な姿勢を崩さない。だが、メジャー挑戦の可能性はゼロではない。「いざそうなった場合、自分自身の実力もつけば、迷うことがあるかもしれない。ただ、今の段階では、どうなるかは分かりません。まずは、チームのためにベストを尽くすのみです」。さらに、慎重に言葉を選んだ。
MLB関係者は「足と肩はメジャーでも平均以上。大学3年時は三塁で、今は二塁ですが、遊撃も十分にできる能力がある。持ち味の打撃は、バットがボールに当たった際の打球音が、他の選手とは明らかに違います。その裏付けには、パワーとスイングスピードがあるからです。タイミングの取り方が長けており、対応力がある」と、好素材に惚れ込んでいる。
「究極の目標は打率10割」
東京新大学春季リーグ戦の開幕は4月2日(対東京国際大)。試合会場の大田スタジアムには、甲子園のセンバツ視察を終えた日米スカウト陣が大挙するはずだ。周囲の喧騒の中でも、立石は自らを見失わない。
「春はもちろん、リーグ優勝です。東京新大学リーグはレベルが上がっている。だからこそ、ここで創価大学が周りから『もう、これは無理だ』と言われるほど、圧倒したいです」
個人的な目標を聞くと、しばらく考えた。
「数字のことを考えると、気が遠くなるんです(苦笑)。キャリアハイである2年春の数字(打率.500、5本塁打、14打点)を越えたい思いはありますが。技術だけではなく、見ていただく方から『成長したな』と思われるようなプレーを継続していきたいと思います」
チームリーダーとしての立ち居振る舞い。立石はこの日のオープン戦も、全力プレーを貫いた。プレーヤーとして当然ではあるが、凡打でも一塁までの駆け抜けを怠ることはない。チームのための打撃に集中した上で、アスリートとしての本能が燃えたぎる。
「1打席、1打席に集中する。究極の目標は打率10割です」
あえて口にはしなかったが、昨年11月の明治神宮大会決勝で青学大に惜敗した無念は、今も心の中に残っている。活動拠点である八王子市内のワールドグラウンドの左中間後方には「めざせ 全国制覇」の文字が光る。主将・立石が文字通り、チームをけん引していく。
文=岡本朋祐