菅野の復活をアシスト

今年も小林の力が必要な時が必ずやってくるはずだ
リーグ連覇を狙う
巨人で定位置が注目されるのが捕手だ。昨オフに
ソフトバンクから
甲斐拓也をFAで補強。
阿部慎之助監督が現役時代に背負った10番を着け、「自分自身、(移籍は)初めての経験。気持ちも新たに、すごく引き締まっています。キャンプは『土台づくり』だと思っているので、とにかくジャイアンツの野球を知る機会にしたい」と表情を引き締めていた。
ソフトバンクで4度の日本一を経験し、常勝軍団の「扇の要」として牽引してきた。阿部監督が「やっぱり彼は、日本を代表するキャッチャーですから。チームに与える安心感は絶大じゃないかな。(テレビ中継の)画面から見ていても、ピッチャーと表情だけで会話ができるようなキャッチャー」と称賛する。ただ、現有戦力の
岸田行倫、
大城卓三、
小林誠司も負けられない。
岸田は昨年チーム最多の72試合で先発マスクをかぶり、リーグトップの盗塁阻止率.475をマーク。打撃面でも打率.242、4本塁打、26打点と残した数字以上に貢献度は高い。パンチ力があり、勝負どころでの殊勲打もあった。甲斐と共に23年のWBCで侍ジャパンのメンバーに選出された大城は強打の捕手として定評がある。昨年は攻守で精彩を欠き、正捕手の座を明け渡す形となったが、23年に打率.281、16本塁打、55打点をマーク。小技もきっちりこなし、21犠打はリーグトップだった。
そして、昨年のリーグ制覇を縁の下の力持ちとしてさせたのが、小林だった。同学年の
菅野智之(現オリオールズ)が登板したすべての試合で先発マスクをかぶり、復活をアシスト。菅野は15勝3敗で最多勝に輝いたが、この貯金12がなければ4年ぶりのV奪回はなしえなかった。小林は菅野の登板試合だけでなく、接戦の終盤でマスクをかぶり、リリーバーたちを好リードで引っ張った。投手陣の信頼は非常に厚い。
OBは3捕手の働きぶりを評価
巨人OBのデーブ大久保氏(
大久保博元)は週刊ベースボールのコラムで、3人の捕手の働きぶりを高く評価していた。
「現代のプロ野球では捕手1人でシーズンを戦うことはほとんどなくなりました。2人以上で戦っています。それはデメリットもあるかもしれませんが、メリットも大きいんです。3連戦ですべてスタメン捕手が違うと配球が変わります。そこは対戦打者はなかなか的を絞りにくい。特に巨人の3人は本当に配球の傾向がまったく違います。卓三(大城卓三)は試合前のチームの方針に沿った配球を中心に組み立てていきます。つまり相手打者の弱点を突くような配球です。誠司(小林誠司)は本当にしつこいリードをする。つまりリード中心の配球。その日の先発のカーブのキレが良く、対戦している打者のタイミングが合っていないと感じたら、徹底的にその球種で攻めていくというパターンを持っています」
「岸田(岸田行倫)は投手に寄り添った配球が中心。つまり、投手がその日、一番気持ちよく投げられる球種を多く使っていく、というタイプです。もちろん、その特長を生かしながら、チームが打ち出した各対戦打者への方針を、3人ともここぞの場面で使ってくるので、それは各チームともに苦労しますよ。打者への目先を変えるというのではなく、個々の特長が生かされた中でシーズンを戦い、優勝へと導いていったのです。まさに捕手3人がMVP級の価値を見せたリーグ優勝だったと思います」
最善の準備を尽くす
今年は新加入の甲斐が正捕手争いの本命になるだろう。小林は相棒の菅野が退団したため、現段階では「4番手捕手」という位置づけか。春季キャンプは二軍でスタートしたが、最善の準備を尽くすことは変わらない。3月5日に一軍合流し、オープン戦に出場する一方で、実戦勘を養うためにイースタン・リーグの試合に出ている。「八番・捕手」で先発出場した18日の
DeNA戦(横須賀)では、5回二死一、二塁で
トレバー・バウアーの148キロの直球を中前にはじき返す同点適時打。4回まで完全投球を続けていた元サイ・
ヤング賞右腕から快音を響かせ、塁上で笑みを浮かべた。
現時点では開幕一軍メンバーに入るか不透明だが、小林が必要とされる時期は必ず来る。
写真=BBM