激しい正遊撃手争い

7年目の今季、飛躍を誓う小幡
開幕が近づいてきたが、
阪神の布陣はほぼ固まっていると言ってよいだろう。一塁・
大山悠輔、二塁・
中野拓夢、三塁・
佐藤輝明、中堅・
近本光司、右翼・
森下翔太は当確といえる。左翼はオープン戦で打撃好調の
前川右京が一歩リードする形に。捕手はバッテリーを組む投手との相性や対戦相手を考慮して今年も
梅野隆太郎、
坂本誠志郎の併用になる可能性が高い。そして、残りの1枠となった遊撃の定位置争いが熾烈だ。
岡田彰布前監督が指揮をふるっていた2年間は
木浪聖也がレギュラーを務めていたが、今年は
小幡竜平も攻守でアピールしている。ともにオープン戦では打撃好調で、どちらをスタメンで起用するか
藤川球児監督はうれしい悩みになりそうだ。
木浪は2023年に127試合出場で打率.267、1本塁打、41打点をマーク。得点圏打率.310と勝負強さを発揮し、「恐怖の八番打者」として38年ぶりの日本一に大きく貢献した。ただ、昨年の開幕前は定位置を保証されたわけではなかった。岡田前監督が発言したレギュラー陣の名前に木浪の名はなく意外に思えたが、本人はこの状況を冷静に受け止めていた。週刊ベースボールのインタビューで、以下のように語っていた。
「僕は、びっくりはしなかったですよ(笑)。昨年しか活躍できていないですから。開幕戦も出ていませんし、優勝と日本一には貢献できたかなとは思いますが、個人的には満足していないです。143試合すべてに出て、日本一になったとしても、性格上、満足はしないと思いますし、実はもっと良くなるはずだと思っています。監督のコメントが載った記事を読んだときは『当然のことだよな』と納得しましたし、今年はレギュラーをがっちりとつかんでやるぞ、という気持ちにもなりました」
「3、4年実績を残して初めて一流で、レギュラーと呼ばれるのだと思っていますので。自分はわずか1年のみです。シーズンが終わったときには、2024年はもっとよくなるとさらに前を向いていました」
さらなるレベルアップを目指したが、昨年は6月に死球により左肩甲骨骨折で離脱。116試合出場にとどまり、打率.214、1本塁打、35打点。チームもリーグ連覇を逃して悔しいシーズンになった。
オープン戦で攻守走にアピール
一方、遊撃の定位置奪取を目指した同期入団の小幡は50試合出場で打率.241、1本塁打、9打点をマーク。6月末から11試合連続ヒットを放ったが、7月17日の
巨人戦で戦列を離れたのが悔やまれる。「木浪(聖也)さんを超せるようになりたい」と意気込んでいたが、木浪との序列をひっくり返すまでには至らなかった。
プロ7年目の今年は期する思いが強い。オープン戦で攻走守にアピールを続けている。3月8日の
DeNA戦(甲子園)では、初回のプレーボール直後に先頭打者・
梶原昂希の中前に抜けようかという打球をダイビングキャッチ。素早く立ち上がり一塁に送球してアウトにした。打撃でも3回に右翼線に二塁打を放つと、次打者の
島田海吏の投ゴロに好判断で三塁へ。島田が二盗した際に捕手・
山本祐大の送球がややそれた隙を見逃さず、先制の本塁生還をした。その後の打席も四球を選んだ後に遊撃内野安打を2本放ち、全4打席で出塁した。
小園海斗(
広島)、万波中世(
日本ハム)など高卒で同期入団の選手たちはチームの核になっているだけに、負けられない。特に小園は高校時代から同じ遊撃で存在を意識していた。小幡は身体能力の高さで引けを取らない。入団会見の時に「根尾(
根尾昂、
中日)、小園、太田(
太田椋、
オリックス)には負けないように。“小幡世代”と呼ばれるようになりたいです。出塁率の高いバッターになっていきたいです」と誓っていた。小園にリードされる形となったがまだまだ巻き返せる。有言実行を果たすため、今年は大きく飛躍したい。
写真=BBM