春先からエンジン全開
日本ハムが好スタートを切った。
西武に敵地・ベルーナドームで球団史上63年ぶりの開幕3連勝を飾ると、
ソフトバンクと対戦した2カード目の初戦は1対5で敗れたが、翌日の2戦目は3対1で快勝して単独首位に浮上。現役ドラフトでソフトバンクから移籍した
吉田賢吾が「一番・左翼」でスタメン出場すると、1点リードの7回に逆方向の右翼へプロ初アーチを放った。記念の一発が古巣との対決で飛び出し、本拠地・エスコンフィールドの盛り上がりは最高潮に達した。
新庄剛志監督が就任4年目を迎えた今季は選手層が厚くなり、各ポジションにレギュラー級の選手を複数そろえている。ただこの強打者は替えが利かない。来日2年目を迎えたフランミル・レイエスだ。
昨年は打撃不振で5月にファーム降格を経験したが、夏場以降は状態を上げて球団史上最長の25試合連続安打をマーク。規定打席に到達できなかったが、103試合出場で打率.290、25本塁打、65打点の好成績を記録した。日本野球への適応能力が上がったことで自信を高めただろう。今年は春先からエンジン全開だ。
開幕・西武戦で9回に
今井達也のスライダーを左中間に運ぶ2年連続開幕アーチ。開幕3戦目も猛打賞で、四球を含めて4打席すべて出塁した。貢献しているのは打棒だけではない。5回に痛烈な打球が遊撃手・
源田壮亮のグラブをはじき、打球は右中間方向へ転がるのを確認すると、迷わず一塁を回り二塁へスライディング。次の塁を積極的に狙う遊撃強襲二塁打に、新庄監督が一塁ベンチから拍手を送っていた。2日のソフトバンク戦でも4回に中越え二塁打を放つなどバットが振れている。
強烈なインパクトを残したD砲
黄金時代を築くチームは、強力な助っ人がチームの軸として活躍しているケースが多い。1980年代中盤から90年代にリーグ優勝8度飾った西武は、89年のシーズン途中に途中加入したオレステス・デストラーデが翌90年から3年連続本塁打王に輝くなど、ホームランアーチストとして輝いた。左右の両打席で本塁打を量産する打撃スタイルは強烈なインパクトを与え、NPB初のスイッチヒッターで本塁打王に。
秋山幸二、
清原和博と組んだクリーンナップは「AKD砲」と呼ばれ、他球団を震撼させた。デストラーレは当時の主力選手だった
田邊徳雄(現西武三軍野手コーチ)と対談した際、西武の強さの秘訣について以下のように語っていた。
「何も変化がないとチームが勝ち続けるのは難しい。前年これで勝ったからと言っても、同じことをしていてはいけない。満足することなく、さらに良くなることを求めるべき。当時の西武はそれができていた。野球は常に敵を知っていくことが大事。相手が自分の分析をしてくるから、こっちも相手を研究しないといけない。ワタシは最初の年、83試合で32本塁打したが、次の年、相手投手はすべてワタシのことを知っていた。だから、ワタシはオフに球団から相手投手の映像を送ってもらっていた。次の年の準備はきっちりとオフにしておかないといけない。広野(
広野功)打撃コーチのアドバイスも重要だった。相手投手がどういうアプローチをしてくるか事前に教えてくれたから。それは非常に助けになった。それに、ワタシは森(
森祇晶)監督のリーダーシップにも非常に感謝しているね。とてもモチベーションを上げてくれた」
9年ぶりのリーグ優勝へ
「カリブの怪人」と称されたデストラーデは主に指名打者で活躍したが、現在のNPBで「最強の指名打者」はレイエスになるだろう。他球団のスコアラーは「パワーが注目されますが、状況に応じた打撃をできるのが一番の強みだと思います。広角に打てますし、前の打席で打ち取られた球にその後の打席できっちり対応してくる。個人的に言えば、
近藤健介、
山川穂高(共にソフトバンク)より厄介ですね。パ・リーグで最も怖い打者です」と警戒を強める。
ムードメーカーでもあるレイエスが打てば、チーム全体が活気づく。9年ぶりのリーグ優勝に向け、頼もしい助っ人がナインを引っ張る。
写真=BBM