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女子硬式野球選抜大会で大会史上初の3連覇 神戸弘陵が強さを誇る3つの理由

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3年連続5度目の優勝


優勝に貢献した3選手。左からエース・阿部さくら、主将・山本詠、一番打者・矢島莉々果[写真=菅原淳]


 巨人阪神による伝統の一戦を終えた127分後の18時、東京ドームには次のステージが用意されていた。第26回全国高等学校女子硬式野球選抜大会の決勝が4月6日に行われた。神戸弘陵高が大会史上初となる3連覇(3年連続5度目の優勝)を遂げた。神戸弘陵高は2018、19年に連覇を遂げており、自校の記録を塗り替えたことになる。

 2023、24年には全国高等学校女子硬式野球選手権大会も制し、春夏連覇。今年は3年連続の偉業に挑戦することになる。

 なぜ、強いのか。3つの理由がある。石原康司監督は言う。まずは、危機感である。春頂点は通過点にすぎない。

「まだまだのチームなんです。足りないところが、たくさんある。今日のゲームを見ていても、履正社さんのほうが、良かったところがある。他のチームからも学ぶべきところがありました。運良く勝たせてもらった。夏に向けてはチーム力を上げていかないといけない。リセットしてやっていきます」

神戸弘陵高は大会史上初の3連覇。喜びを爆発させた[写真=菅原淳]


 正捕手の山本詠主将(3年)は明かす。旧チームで春夏連覇を達成した際はベンチ外で、スタンド応援組だったという。

「先輩たちが連覇を達成していた中で、プレッシャーがありました。勝たせていただき、ホッとしました。安心した気持ちです。(昨年8月末の)ユース大会決勝で負けて、その後の練習試合でも勝てない時期が続き、心が折れそうになったときもありました。どんなに実力がなくても、目標に向けて毎日、コツコツやれば、日本一という夢を追い続ければ達成できる」

 昨秋以降、冬場にかけては「その一球で負けるぞ!!」と、練習から1プレーに対して集中力を持って取り組んできた。

左腕エース・阿部は1失点完投した[写真=菅原淳]


 そして、最大の勝因は左腕エース・阿部さくら(3年)の好投である。準々決勝から決勝まで3試合連続完投(7イニング制)。大会を通じて33イニングで3失点(防御率0.82)に抑えた。決勝では自己最速を121キロに更新し、鋭く変化する90キロ台のスライダーを駆使した緩急自在の投球は抜群だった。昨年のエース左腕・伊藤まことが故障で投げられなくなり、その間に台頭したのが当時2年生の阿部。昨夏、甲子園で行われた花巻東高との選手権大会決勝でも勝利投手となっている。

「たくさんの方の応援、その気持ちを背負っている。絶対に勝とうと思いました」

 度胸十分の左腕を支えた司令塔・山本が3つ目の勝因である。惜敗した昨年のユース大会決勝以降、一塁手だった主将・山本を捕手へコンバート。石原監督は称える。

「ムードメーカーでもありますが、キャッチャーとしても伸びました。阿部の良さを、引き出してくれた。ベンチでも、その日のコンディションを確認するんですが、説明が的確で分かりやすい。センターラインが固まり、守りも良くなりました」

神戸弘陵高を指揮する石原監督は選手の手によって、東京ドームで宙を舞った[写真=菅原淳]


 打線も鋭いスイングが印象的で、相手のミスに乗じて1回表に2点先制するも、4回裏に1点差とされた。6回表4長短打を集中して一挙3得点で、試合を優勢に進めた。何よりもエース・阿部を支える堅守が印象的。無失策でスキを与えなかった。

 最後に最大の勝因は、野球に取り組む姿勢である。ベンチ入りした25人だけでなく、部員69人は統率が取れていた。試合前、控え部員がいるスタンドを含めた円陣では、球場全体を制圧するだけの一体感があった。

 場内インタビューで石原監督は主催者、後援、特別後援、協賛社、東京ドーム、読売ジャイアンツなどに感謝の言葉を述べた。春決勝は東京ドーム、夏決勝は甲子園での開催が定着化した女子高校硬式野球。昨今、競技力向上が目覚ましいのも、ファイナルに夢舞台が用意されているのは、言うまでもない。一時代を築いている「打倒・神戸弘陵」というターゲットが今後、さらなるレベルアップにつながるはずだ。

文=岡本朋祐

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