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過少評価されている? 先発ローテで稼働する驚異の「40歳右腕」は

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お手本にしたほうがいい投手


今季で19年目のシーズンを迎えた岸


 楽天が4月13日のオリックス戦(楽天モバイル)で、オリックスに1-6と敗れて6連敗。借金は今季ワーストの5にふくらんだが、シーズンは始まったばかりだ。投打の立て直しが必要とされる中、先発ローテーションで稼働してもらわなければ困るのが、40歳右腕の岸孝之だ。

 直球の球速だけを見れば全盛期より落ちたが、打者の手元でホップするような美しい軌道は入団した18年前と変わらない。キレ味鋭いスライダー、打者のタイミングを外すチェンジアップ、縦に大きく割れるカーブと変化球もすべての球種が一級品だ。細身だがスタミナ抜群で肩、肘に大きな故障がない。毎年先発ローテーションで稼働できるため、首脳陣にとってこれほど頼りになる投手はいないだろう。

 野球評論家の荒木大輔氏は、読者からの質問にプロフェッショナルが答える週刊ベースボールの企画「ベースボールゼミナール」で、「投手を始める際に、お手本にしたほうがよい投手を選ぶときの基準を教えてください。また、現役だと誰がおすすめでしょうか?」という質問に対し、プロ野球新記録の24年連続勝利を達成した球界最年長の45歳左腕・石川雅規(ヤクルト)と共に、岸の名を挙げている。

「右投手であれば、楽天・岸孝之投手をお手本にしてもらいたいです。岸投手は私が西武の投手コーチを務めていた2007年に入団しましたが、そのときから今とまったくフォームが変わっていないですよね。投手は年齢を重ねていくにつれて、投げ方が少しずつ変化していくことが多い中で、まったく変わらないことは珍しいことです。また、岸投手は昨季39歳という年齢にもかかわらず、リーグ2位タイの2完封を記録し、規定投球回に到達しています。これだけ長く活躍ができるのは、1年目から理にかなった投げ方をしているからです」

「お手本にしたほうが良い投手の基準は、プロで長年活躍している選手です。そして、ある程度自分の投げやすいフォームが固まってきたら、ピンポイントで自分と似た投げ方をしている投手のマネをすることで、新しい引き出しを増やすことにもなります。自分の状況に合わせて、参考にする投手を変えてみてください」

先発の大黒柱としての存在感


 昨年は22試合登板で6勝11敗と負け越したが、打線の援護に恵まれなかったマウンドが目立ったことを差し引かなければいけない。3年ぶりに規定投球回に到達し、防御率2.83と6年ぶりに3点台を下回った。先発陣のチーム防御率3.81と比べても1点近く低いことを考えると、その安定感が際立つ。7月13日西武戦(楽天モバイル)で史上48人目の通算2500投球回を達成し、119球の熱投で3安打完封勝利をマーク。39歳7カ月の無四死球で完封勝利は、1978年5月3日の石井茂雄(クラウン)の38歳11カ月を抜いてパ・リーグ最年長記録だった。

 昨オフに田中将大が電撃退団して巨人に移籍したことで、先発の大黒柱としての存在感がさらに高まった。今季初登板となった4月3日の西武戦(楽天モバイル)で、7回3安打1失点の快投。無四球とテンポよく投げ込んだ。本拠地開幕戦を勝利で飾り、40歳以上の先発投手の白星は日本人で球団史上初となった。プロ入りから19年連続白星をマークし、「いい当たりが正面に飛んでラッキーなアウトもたくさんあったんですけど、みんなが守ってくれて打ってくれたので感謝しかありません」と謙虚な右腕はお立ち台で穏やかな表情を浮かべた。

 同月10日の日本ハム戦(楽天モバイル)では珍しく制球が定まらず、4回12安打8失点と打ち込まれたが、修正点を把握してきっちり立て直すだろう。他球団のスコアラーは「修正能力が高く、状態が悪い時期が短いのが岸の一番の強みだと思います。年齢を重ねてもパフォーマンスが落ちない。稼働率を考えるともっと評価されていい投手です」と分析する。

 仙台市内で生まれ育ち、地元球団の楽天にFA移籍したのが16年オフ。楽天ではまだ経験していない優勝の歓喜を味わうため、右腕を振り続ける。

写真=BBM

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