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【大学野球】「この春は5勝以上、最優秀防御率が目標」 慶大・外丸東眞が「復活勝利」

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チーム浮沈のカギを握るエース


慶大・外丸は東京六大学のキャプテンナンバーである背番号10を着けて、チームをけん引している[写真=矢野寿明]


【4月12日】東京六大学リーグ戦
慶大2-1立大(延長10回)
(慶大1勝)

 昨年5月8日以来(立大4回戦)の白星を手にした。通算15勝目を挙げた慶大の主将・外丸東眞(4年・前橋育英高)は「チームの勝利に貢献できないもどかしさがあった。苦しい展開だったが、チーム全体で我慢できた」と、喜びを語った。

 1年春から3年春まで、5季連続で勝利をマーク。2年秋はリーグ制覇、明治神宮大会優勝と下級生時代から「陸の王者」のエースとしてけん引してきた。ところが、昨秋は右肩大円筋肉離れのためシーズン途中離脱。入学以来、初めて未勝利に終わり、チームも5位に沈んだ。つまり、外丸の出来が慶大の浮沈のカギを握っていることが改めて証明された。

 昨年11月の新チーム結成時、慶大・堀井哲也監督から主将に指名された。慶大での投手キャプテンは2008年の相澤宏輔(熊本高)以来、17年ぶりである。「同学年の推薦で、私が承認する。満場一致です」(堀井監督)。外丸も「同学年でリーグ戦経験を積んでいる選手が少ない」と、自らけん引する覚悟でいた。だが、力んでも仕方ない。外丸は背伸びをせず、自らのスタイルでチームを動かしてきた。

「まずは自分のやるべきことをやる。キャプテンらしい振る舞いができていたか分かりませんが(苦笑)。自分のやるべきことに集中してきました。もちろん、責任というのはより一層、感じています。負けたくない思いが強い。チームの勝利だけを考えて投げている」

 慶大は、主将一人にすべてを背負わせるという風土はない。グラウンドは副将・今泉将(4年・慶應義塾高)、チーフコーチの金岡優仁(4年・慶應義塾高)を中心とした学生コーチがサポート。運営面は今年、6年に1度の当番校で連盟チーフマネジャーも務める主務・勝野淳(4年・慶應義塾高)に加え、副務・田村早絵(4年・慶應NY学院)と裏方も盤石。外丸は身近な仲間に恵まれているのである。

「チームメート、同期は野球、プライベートのときも励みになる言葉をかけてくれます。『焦らず、自分のことをやって、自分たちの代で投げてくれたらいい』と」

優れた対応力も武器


 この日は、調整が難しかった。午前8時30分から「東京六大学野球連盟100周年記念碑」の除幕式があった。加盟6校の主将が出席。慶大はこの日、第2試合に組まれており、試合開始は13時44分だった。ゲームまでのコンディションづくりはイレギュラーであったが、その優れた対応力も外丸の武器である。しっかりとプレーボールに照準を合わせ、ゲームメーク能力の高さを見せた。

「前半は神経質になりすぎましたが、後半はテンポ良く投げることができました」

 9回1失点。9安打を浴びながらも要所を締め、無四球と持ち味を発揮。試合は1対1のまま決着がつかなかったが、慶大は10回表に横地広太(3年・慶應義塾高)の適時打で1点を勝ち越し。10回裏は外丸を継いだストッパー・広池浩成(3年・慶應義塾高)が気迫の投球で1点のリードを守り切った。

 外丸は2年秋の天皇杯奪還を目指した上で、卒業後は「プロ志望」を明言している。

「球速を上げることも必要ですが、チームを勝たせる投球に徹すれば、目標も近づいてくる。持ち味のコントロールを磨いていきたい。この春は5勝以上、最優秀防御率が目標です」

 2年春からエース番号「18」を着け、今春からはキャプテンナンバーの「10」を背負う。通算勝利は「ライバル」を公言する早大・伊藤樹(4年・仙台育英高)がこの日の東大1回戦で14勝目を挙げ、一度は追いつかれた。しかし、すぐに外丸は追い抜いたのである。

「そうなんですか……。今知りました(苦笑)」

 外丸は主将となってもマイペースで、天真爛漫な性格も不変。そうした状況が受け入れられるのも、慶大の居心地の良さで、伝統のチームカラーでもある。オンとオフのメリハリ、ここぞという集中力に長けた集団。この日のゲームは、外丸の「復活勝利」だけで片付けられない。経験値の少ないチームだけに、神宮での白星は学生を大きく成長させたはずだ。

文=岡本朋祐

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