言い訳は一切、口にせず

立大・小畠はゲームメーク能力に長けるが、本人は一切興味を示さない。過程よりも、結果だけにこだわる[写真=矢野寿明]
【4月12日】東京六大学リーグ戦
慶大2-1立大(延長10回)
(慶大1勝)
150球の力投も報われなかった。打線は慶大を上回る10安打を放つも、1得点のみに終わった。再三、得点圏に走者を進めたがあと一本が出ない。立大としては、苦しい展開だった。延長10回の末、1対2で惜敗。就任2年目・木村泰雄監督は開幕戦をこう振り返った。
「課題は点を取ること。ヒットも10本出て、相手投手に対応してチャンスをつくりながらも1点しか取れないのは、私の責任。好投してくれた小畠(小畠一心、4年・智弁学園高)にも申し訳ない。小畠はしっかり、開幕投手としての役目を果たしてくれた」
木村監督のすぐ横で聞いていた背番号18。試合は1対1のまま決着がつかず延長へ。小畠は10回表二死一、三塁から勝ち越し打(二塁内野安打)を浴びた。エースは一切、言い訳を口にはしなかった。
「(カウント1ボール2ストライクから)変化球のサインでしたが、真っすぐを投げた。この冬もやってきた真っすぐで、最後は真っすぐで決めようと思っていました。選択ミスというよりも、投げ切れなかったことが悔しい」
小畠は昨春から主戦の座を託されているが、打線の援護に恵まれないケースが多い。今年も「我慢の投球」が求められている。
「1戦目の先発を任されている身。チームに勝ちをつけられない責任。流れを持ってこられなかったことも、責任に感じている。ゲームを作ることが目的ではない。勝つことを目的としているので悔しい」
相手の先発である慶大の主将・外丸東眞(4年・前橋育英高)は、9回1失点と粘った。まさしく我慢比べだった。
「相手は見ていない。投げさせていただく試合は勝つ。悔しい試合でした」
勝利だけを見て、マウンドに上がる。マウンドに上がるため、すべてを犠牲にして、日々を過ごしている。日常生活、練習は「ストイック」という言葉に集約される。一切の妥協を許さないのが、小畠の譲れないポリシーだ。
振り返れば智弁学園高時代は左腕・西村王雅(東芝)と両輪を形成した。小畠は背番号「10」を着け「2人が背番号1を着けることはできない」と、ライバルを意識して成長してきた。3年夏の甲子園は準優勝。あと一歩で勝ち切れない経験を糧とし、歩んできた野球人生だ。勝利の女神はいつか必ず、微笑むはずである。
文=岡本朋祐