最後まで粘ったのが収穫

東大・渡辺は昨秋まで背番号38も、今春からはエース番号18背負う[写真=矢野寿明]
【4月12日】東京六大学リーグ戦
早大4-1東大
(早大1勝)
何とか、最後まで粘ったのが収穫である。渡辺向輝(4年・海城高)は早大との開幕戦で8回4失点。敗戦投手となったが、マウンドを譲ることなく、1試合を投げ切った。ただ完投することが目的ではなく、チームを勝利へと導くのが、エースに求められる役割だ。
課題は明確だ。早大は2025年、走塁に力を入れているが、6盗塁を決めた。渡辺はうち5盗塁が失点に絡んだことを深く反省している。1対1で迎えた5回裏も、2つの二盗で得点圏に走者を進められ決勝点、追加点を許した。
「(捕手の)杉浦(海大、4年・湘南高)に(リードは)任せきり。ゲームの中でのタイムを計られていて、完全に決められた。注意を払えなかったのが原因。細かいところの注意力。スキのないところを見せていきたい」
見せ場もあった。1回裏に1点を先制されると、2回裏には無死満塁のピンチも、後続3人を抑えた。「全体的にヒットを打たれ過ぎ(被安打8)。ストライク先行でいきましたが、2回は力んでしまってグダグダ……。(満塁の場面では)フライを気持ち良く打ってもらう。早く振ってくれ、早く振ってくれ、と」。持ち味の緩急自在の配球を駆使して、思惑通りの3つのフライアウトで見事に切り抜けた。
3年秋から主戦投手となり、最終学年の今春はまさしく、チームの大黒柱である。
「チームとしての目標は(2017年秋以来となる)勝ち点を挙げること。第1戦で勝つためにも、9回2失点以上はしたくない。昨秋は2試合炎上したゲームを除いた防御率が2点台前半。そこを、目標にしています」
つまり、渡辺が2点以内に抑え、打線が3点以上で逃げ切る。いずれにしてもロースコアの展開に持ち込むには、細かいミスが許されない。今春からエースを意味する背番号18を着ける。渡辺はプロ志望届を提出する一つの基準として、6月の大学日本代表候補合宿に招集されることを挙げていた。評価を受けるには、神宮で結果を残すしかない。サブマリンエースは、赤門をけん引していく覚悟だ。
文=岡本朋祐