打球直撃も続投志願のエース

早大・伊藤樹は7回1失点でリーグ戦通算14勝目を挙げた[写真=矢野寿明]
【4月12日】東京六大学リーグ戦
早大4-1東大
(早大1勝)
リーグ3連覇を目指す早大が東大との開幕戦を白星で飾った。投げては先発のエース右腕・伊藤樹(4年・仙台育英高)が7回1失点で通算14勝目を挙げた。2回表の先頭打者で、打球を左膝に当たるアクシデント。しばらく立ち上がれなかったが、続投を志願した。
もちろん、万全ではなかったが、勝利に徹する投球を心がけた。昨年は9年ぶりの春秋連覇へと導き、2季連続ベストナイン。豊富な経験値が技術と心の支えになり「低め、両サイドに丁ねいに投げる」ことを意識した。
「ここで代わって、試合に負けるのは……。交代する選択肢はなかったです。何が何でも試合をつくるぞ、と。個人的にも20勝を目標としていますので、何とか、勝ち星をつけられて良かったです。初めて出る選手が多く、接戦を経験できたのは、今後の財産になる」
攻撃面では、足を使った作戦が機能した。主将・
小澤周平(4年・健大高崎高)は「機動破壊」を旗印とするチームで高校3年間を過ごし、走塁力をチームに浸透。実際に走るだけでなく、走るアクションで警戒させることも、相手バッテリーに重圧を与えられる。
1対1の5回裏。一死から一番・尾瀬雄大(4年・帝京高)がこの日2本目となる中前打で出塁すると、初球に二盗を仕掛けた。続く二番・渋谷泰生(4年・静岡高)の右前打で勝ち越し。渋谷は次打者の初球で二盗を成功させ、二死二塁から四番・寺尾拳聖(3年・佐久長聖高)の右前打で貴重な追加点を挙げた。
6回裏には一死から七番・石郷岡大成(4年・早実)が遊撃内野安打で出塁すると、二盗、三盗を決め、次打者の
吉田瑞樹(4年・浦和学院高)の中犠飛で4点目。早大が2025年に目指す攻撃を、体現することができた。
2つの記録更新に挑む不動の一番

不動の一番・尾瀬[左]は2安打1盗塁と打線をけん引し、5回裏には勝ち越しのホームを踏んだ。勝利投手の伊藤樹[右]とポーズを取った[写真=BBM]
現役最多75安打となった不動の一番・尾瀬は通算打率.371とした。早大の先輩・
岡田彰布(
阪神前監督)の通算打率.379の更新を目指している。岡田氏は早大史上最多117安打を放っており、尾瀬は2つの記録更新に挑む。
「冬場からそれを超えるという思いで練習を重ねてきました。初戦で2本を打つことができましたので、この先、どんどん調子を上げていきたい。今日は目指してきた足を使った攻撃が形になったので、良かったです」
ただ、小宮山監督は試合内容に納得していなかった。1対0で迎えた2回裏の攻撃。無死満塁のチャンスで後続3人がフライを打ち上げた。一気に畳みかけることができず、追加点を奪えなかったことが、接戦の一因になったとも言える。東大との開幕週で圧倒し、第2週を空けて、万全のコンデションで法大との第3週を迎えるという思惑があった。今年は連盟結成100周年。特別な思いもある。
「簡単に100年と言っていますが、とんでもない数字。100周年のその瞬間にこうして携わらせていただき、相当な運だと思っています。歴史のある東京六大学、神宮の試合をご覧頂いている方々に対して、早稲田としてしっかりとした野球をお見せしたいと、学生たちには厳命している。きょうは最初でこういう試合でしたから、説教します」
勝って兜の緒を締めよ。4月13日に予定されていた2回戦は雨天中止。「打線の爆発を期待している」。小宮山監督は力を込めた。
文=岡本朋祐