春の開幕日に除幕式

「東京六大学野球 発祥の地」の記念碑が神宮球場の敷地内に建立された。左から立大・木村泰雄監督、法大・大島公一監督、慶大・堀井哲也監督、明大・戸塚俊美監督、東大・大久保裕監督、早大・小宮山悟監督[写真=矢野寿明]
【4月12日】東京六大学リーグ戦
東京六大学野球連盟が結成100周年を迎えた。
日本の野球界は、学生野球が原点にある。1934年に誕生したプロ野球よりも長い歴史を重ねてきた。1903年11月21日、早大と慶大による対抗試合からスタート。ところが、あまりの応援の過熱ぶりで06年に中断。14年に明大が加わり、三大学リーグ戦が展開され、17年に法大、21年に立大が加入も、早慶戦は開催されない変則的なリーグ運営が続いた。25年秋に当時の帝大(東大)が加盟し、東京六大学野球連盟が創設。中断していた早慶戦も復活し、6校によるリーグ戦が開始された。9月20日、駒沢球場での明大対立大が連盟創設試合として行われている。
翌26年には同連盟の協力の下で、明治神宮野球場が完成。第二次世界大戦の中断を挟み、戦後の一時期を除いて、すべてのリーグ戦は神宮球場で行われてきた。幾多の名勝負、名選手を輩出してきた。
2025年で結成100周年。東京六大学野球発祥の地として、神宮球場敷地内に記念碑を設置。春の開幕日の4月12日に除幕式が行われた。明治神宮外苑、明治神宮野球場関係者、連盟関係者(監督、先輩理事、主将、主務)らが出席した。記念碑は上から見るとホームベースの形状で、碑文が刻まれている。高さ120センチ、御影岩の台座は約2000キログラム、ボールは約500キログラム、碑文はブロンズ鋳造(銘板で約30キログラム)だ。

東京六大学野球連盟・加藤貴昭理事長[慶大部長]は除幕式の冒頭であいさつした[写真=矢野寿明]
東京六大学野球連盟・加藤貴昭理事長(慶大野球部部長)は「明治神宮外苑苑長・石井(拓藏)様をはじめ、明治神宮外苑、ならびに明治神宮野球場の皆様にご理解とご協力をいただいきましたことを、心より御礼申し上げます。歴史あるこの場所に発祥の地記念碑を建立させていただくことは、連盟といたしましても、この上ない喜びでございます。本日より100年目もシーズンが開始されることとなりますが、天皇杯をご下賜いただいています野球界唯一の連盟としてこれからも精進してまいりたいと思っています」とあいさつした。
東京六大学野球連盟・内藤雅之事務局長は「大安の日で晴天に建立できて本当に良かったです。出来栄えも立派なもので、観戦に来られた方は是非、記念撮影をしていただければありがたい」と話した。また、明治神宮野球場・永渕義規場長は「神宮球場は来年で創建100周年を迎えますが、東京六大学野球連盟さんと、ともに歩んできました。記念碑に足を運んでいただき、野球の歴史を知っていただく機会にしていただければと。新球場完成の際には、敷地内への移設を考えております。継承していきたいと思います」とコメントした。
開会式のあいさつで、加藤理事長は改めて、歴史について語っている。
「神宮球場では、偉大な先輩たちの数々の名勝負が生まれ、数多くの選手たちがあこがれる特別な『聖地』と呼ばれるようになりました。この100年の間には過去の戦争や、近年の感染症など、さまざまな危機がありましたが、数多くの皆さんのご支援により、六大学が協力し合いながら、乗り越えることができました。選手の皆さん、偉大な先輩方が築いてくれたこの歴史と、大学の誇りを胸に、今この一瞬のプレーに全力を尽くしていただきたいと思います。今日から始まるシーズンで、新たな歴史を刻むような素晴らしい試合が数多く見られることを期待します」
今春のリーグ戦から学生野球では例のない「ビデオ検証」が導入される。この案件を引き合いにし、連盟としての立ち位置を語った。
「私たち六大学は過去の歴史と伝統を引き継ぎつつ、学生野球、ひいては学生スポーツの先導者としての役割を果たすべく、未来に向けて歩んでまいります」

早大・小澤主将は開会式で堂々の選手宣誓を行った[写真=矢野寿明]
理事長からの熱きメッセージを受けて、選手宣誓を担った早大・
小澤周平主将(4年・健大高崎高)は堂々と語った。
「100年の歴史と伝統を継承し、この晴れ舞台に立てることを誇りに思います。この100年、先人たちは幾度となく鍛錬を重ね、己を高め、仲間と困難を乗り越え、六大学野球の日本野球史に刻んできました。その偉業に敬意を表し、我々もその伝統に恥じぬよう、最後の一球まで全身全霊を尽くします。次の100年は今、この瞬間から始まります。東京六大学野球の誇りを胸に、一球一打に魂を捧げることをここに誓います」
100周年だからといって熱量は変わらない。すべては1球、1試合の積み重ねである。加盟6校は互いにリスペクトしながら、目の前の対抗試合に全力を傾けていく。
文=岡本朋祐