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【大学野球】「練習ハ不可能ヲ可能ニス」 先人が残した「金言」を体現した慶大副将・今泉将

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リーグ戦初本塁打


慶大は開幕カードで勝ち点1を挙げた。初本塁打の副将・今泉[左]と7回途中2失点で勝利投手の外丸[右]。主将兼エース・外丸の通算16勝を、2人でポーズを取った[写真=矢野寿明]


【4月15日】東京六大学リーグ戦
慶大9-2立大(慶大2勝1敗)

 慶應義塾体育会野球部合宿所の正面玄関を入ると「練習ハ不可能ヲ可能ニス」の文字が飛び込んでくる。1943年10月16日、出陣学徒壮行早慶戦(最後の早慶戦)の開催に尽力した元塾長・小泉信三氏の言葉である。

 慶大の副将・今泉将(4年・慶應義塾高)は先人が残した「金言」を体現してみせた。

 慶大は1回表、常松広太郎(4年・慶應湘南藤沢高)の適時打で先制すると、一死一、二塁から五番・今泉が左越え3ラン。立ち上がりに4得点のビッグイニングで主導権を握ると、その後も攻撃の手を緩めず、9対2で快勝し、勝ち点1を挙げた。今泉は第2打席で中前打、第3打席で右二塁打の活躍を見せた。

今泉は1回表の3ランが、うれしいリーグ戦初本塁打となった[写真=矢野寿明]


 3年秋までの通算成績は3打数0安打。前日の立大2回戦は、途中出場から2打席目にうれしいリーグ戦初安打を放ち、この日の初先発(五番・三塁)へとつなげた。そして、第1打席でリーグ戦初本塁打と答えを出した。昨春にベストナイン、秋に3本塁打を放った四番・清原正吾がそうであったように、慶大には最終学年に花を咲かせる土壌がある。今泉もずっと、己を信じてきたのである。

「最終学年ということで、今までの努力を結果につなげたい思いで取り組んできた、その成果が出ました。先取点を取って、良い流れで回ってきた打席だったので、ここで一気に追加点を奪いたいと思っていました」

 昨秋までに3打数で2三振。課題は明確だった。「コンタクト率を上げる」。そのために着手したのが「タイミングと目線」だった。

「低めの変化球に手を出し、ボール球を振らされ、カウントを作らされる傾向にありました。変化球を見極める練習。練習の一環として取り組んできた、低めのスライダーを拾って打つことができました」

「いつかチャンスがくる」


 慶大は秋のリーグ戦後、12月にもオープン戦を組む。数多くの実戦経験を積むことを目的としている。今泉は新チーム結成当初は四番を任され、本塁打も記録。ところが、今年2、3月のオープン戦を通じて、吉野太陽(3年・慶應義塾高)が三塁の定位置を手にした。ところが、吉野は開幕以降、本来の調子が出ず、今泉に出番が回ってきたのである。

「悔しい思いはありましたが、しっかり準備をしていれば、いつかチャンスがくる。とにかく次のチャンスに向けて準備することを意識していました」

 堀井監督は「本来は、これぐらいやってくれないと困る。当初は、四番を予定していた選手ですので……。競争の中で、スタメンを取り切れませんでしたが、開幕に関しては、私の目が間違っていた……(苦笑)。しっかりと準備してくれていたということだと思います」と目尻を下げた。

 超難関入試を突破した慶應義塾中等部時代は、同校の軟式野球部に在籍していた。慶應義塾高には、推薦入試で中学時代に硬式野球チームでプレーしてきた実力者が入学してくる。厳しいサバイバルの中で、今泉は四番・三塁のレギュラーをつかんだ練習の虫である。

「自分が活躍することで、いろいろな道から希望を持って入ってくれる選手も増えてくると思いますし、そういう思いを持って取り組んでいます」

慶大では17年ぶりの投手で主将を務める外丸は、強風の中でも丁寧な投球が光った[写真=矢野寿明]


 副将・今泉は投手で主将の外丸東眞(4年・前橋育英高)を支えてきた。この日先発した外丸は、7回途中2失点で1回戦に続く今季2勝目は、現役最多の通算16勝目となった。

 試合序盤からの大量援護。今泉の活躍には「これからも打ってほしいと思います」と笑顔を見せた。そして、こう続けた。

「目標の20勝、25勝というのはいきたいです。まずは目の前の一戦に全集中していきたいと思います」

 この日、慶大で先発出場した4年生は3人。ベンチ入りの登録メンバーは25人のうち8人と、3年生以下が中心のチーム編成である。主将と副将がヒーローとなり、今季初の勝ち点とは、幸先の良いスタートである。昨秋5位からの巻き返し。第3週では明大との対戦が控えており、一つのヤマ場を迎える。

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