高身長の助っ人左腕

中日で開幕先発ローテ入りしたマラー
中日のカイル・マラーの評価が高い。4月15日の
広島戦(マツダ広島)で3回7安打6失点と打ち込まれて来日最短KOを喫したが、それまでの2試合の登板はきっちり試合を作った。
来日初登板となった1日の
巨人戦(バンテリン)は5回3安打1失点。
岡本和真にアーチを浴びたが、身長201センチの長身から投げ下ろす150キロを超える直球とカットボール、チェンジアップのコンビネーションで連打を許さなかった。8日の広島戦(岐阜)でも8回途中4安打1失点の力投。来日初白星はならなかったが、他球団のスコアラーは「腕の出どころが独特で左打者の内角を果敢についてくる。球数を費やしても球威が落ちないので攻略が難しい投手です。1年間先発ローテーションで回れば、投手タイトルを狙えると思います」と高い評価を口にする。
かつては「投手王国」と形容された中日だが、先発陣は盤石と言えない。絶対的エース・
高橋宏斗が今季3試合登板で防御率5.29とピリッとしない中で、
柳裕也、
松葉貴大、
大野雄大ら実績十分の投手たちが好投を続けている。その中でマラーも先発の軸としての活躍が求められる。
制球力が課題と言われていたが、2月の春季キャンプでは個別練習で
大塚晶文巡回投手育成コーチとフォーム矯正に取り組む姿が。右肩の開きを抑えることで制球力アップさせるのが狙いだった。「もっとうまくなりたいからね。周りから見て必要だと言われたことは何でもやるつもりさ」。貪欲な姿でナインにすっかり溶け込んでいる。
身長205センチで活躍した右腕

95年に来日し、いきなり14勝をマークしたブロス
身長が2メートルを超える投手はNPBで大成したケースが少ない。制球力を課題に持ち、フィールディング、クイックモーションを苦手にする傾向がある。その中で、印象深いのが
ヤクルト、
西武で現役時代にプレーした身長205センチ右腕の
テリー・ブロスだ。1995年2月にアリゾナ州ユマキャンプで、5日間の入団テストを受けて合格した。年俸4000万円の格安で首脳陣の期待が大きいとは言えなかったが、シーズンに入るとエース級の活躍を見せた。
巨人に相性が良く5勝0敗、防御率0.23と完ぺきに抑え込み、9月9日の巨人戦(東京ドーム)で外国人投手3人目の快挙となるノーヒットノーランを達成。「東京ドームのマウンドは足場が堅くしっかりしていて、投げていてもすぐに掘れてこないから、すごくいいね。神宮だとか広島とか、日本の球場というのはマウンドの土がやわらかくて、2、3イニング投げると、足を踏み出すあたりが大きく掘れてきてしまうんだ」と明かし、試合後にベンチ前で
野村克也監督にお辞儀した理由を聞かれると、「やっぱり、野村克也監督に感謝の気持ちを表したかったんだよ。記録が達成できたのは、野村監督があの試合に使ってくれたからだし、さかのぼれば、今年のユマキャンプでテストを受けたときに合格を出してくれたから、ヤクルトと契約できたんだしね」と感謝の思いを口にした。このシーズンは14勝5敗、防御率2.33で最優秀防御率のタイトルを獲得する大活躍。日本一に輝く原動力になった。
中日のキーマン
だが、その後は成績が低下していく。クイックモーションが苦手でフィールディング能力も低かったため、機動力で揺さぶられて本来のパフォーマンスを発揮できなかった。96年は7勝12敗、防御率3.61と負け越すと、97年も7勝8敗、防御率4.99と安定感を欠いて退団。西武に移籍した98年が2勝3敗、防御率5.74と輝きを取り戻せなかった。
マラーはフィールディング、けん制、クイックと投球以外の動作に苦手意識がない。シーズンを通じて規定投球回数を達成した時にどのような成績を残しているか。3年連続最下位からの巻き返しを誓う中日のキーマンであることは間違いない。
写真=BBM