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昨年は1勝のみも…「天才的な野球センス」で覚醒期待の巨人右腕は

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粘り強いピッチング


今季は安定感ある投球を見せている赤星


 開幕から巨人の緊急事態を救っている右腕がいる。プロ4年目の赤星優志だ。

 3月29日の開幕2戦目・ヤクルト戦(東京ドーム)に先発予定だったフォスター・グリフィンが発熱で登板を回避。赤星が先発のマウンドに急遽上がると、5回1安打無失点の快投で、勝利に導いた。その後の登板で試合を作ったものの打線の援護に恵まれず2連敗したが、首脳陣は投球内容を評価していた。エースの戸郷翔征が不調で二軍降格したことに伴い、中5日で4月18日のヤクルト戦(神宮)に先発登板した。

 昨年までは突然崩れることがあったが、今年は粘り強い。4回に1点を失い、さらに無死一、二塁のピンチを背負ったが、山田哲人を三直で併殺に。続く赤羽由紘をカットボールで一ゴロと最少失点に切り抜け、5回6安打1失点で今季2勝目をマークした。貢献したのは投球だけではない。打撃でも3回二死で二塁へのボテボテの打球で全力疾走。内野安打で出塁し、3得点を先制する口火を切った。

 昨季は1勝7敗1ホールド、防御率3.12。もっと白星がついても不思議ではなかったが、勝負どころで踏ん張れないマウンドが目立ったのも事実だった。ナインから「天才的な野球センス」と評される右腕はスライダー、フォーク、ツーシーム、カーブ、カットボールと多彩な変化球を操り、制球力もいい。身長175センチと決して上背に恵まれていないが、常時140キロ台中盤の直球は球速表示以上のキレを感じさせる。その投球スタイルが重なるのが、桑田真澄(現巨人二軍監督)だ。

投球の幅を広げたスプリット


 桑田二軍監督も174センチと小柄だったが、野球センスが抜群だった。直球と縦に割れるカーブ、スライダーに加え、1988年にスプリットの習得に取り組んだことで投球の幅を広げた。翌89年にはリーグ最多の249イニングを投げて自己最多の17勝をマーク。その後も斎藤雅樹槙原寛己と「先発3本柱」で活躍し、通算173勝を積み上げた。桑田二軍監督はスプリットについて、週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っている。

「私自身は、指が長くないので、槙原寛己さんのように大きな手の、長い指で、広げてボールを挟んで投げられなかった。これは無理だと思っていたときに、このスプリットが話題になり、当時外国人投手のガリクソンに話を聞いて、少し教えてもらいやってみよう、と。そこからですね、投げ始めたのは。当時投げているときには、ただ落ちればいいという考えは一切なかったですね、その考えは今でも変わりません」

1988年に自己最多の17勝を挙げた桑田


「スプリットの落ちる度合いですが、私の全盛期のときには空振りを取れるくらいの落差はありました。そのほかにはダブルプレーが欲しい場面では、真ん中を狙い、ストライクからストライクに落として打者にバットを振ってもらう、という投球もしていました。そうするとショートゴロ、セカンドゴロになるというイメージで投げていました。その中で、空振りを取りにいくときには、人さし指と中指を広めにして握っていましたし、ダブルプレーを取りにいくときには、その指の間隔を狭めて握り、投げていました。そうすると落ちが小さくなりますが、一方で打者は限りなくストレートと判断します。打ちにいったときに少し落ちることで、バットの下にボールが当たりゴロになりやすい。そういうことも計算して投げていました。ただ、落ち過ぎるとバットのさらに下の部分に当たるので、力のない打球になってしまい、ダブルプレーが取れない。そこで強いというかそれなりの当たりの打球を打ってもらえるように落ち具合をイメージしながらこの球種を投げていました」

 桑田二軍監督は野球センスに優れていただけでなく、分析力や洞察力に長けていたからこそ、プロの第一線で22年間投げ続けられた。赤星も直接指導を受けて得られることは多い。ただ、桑田2軍監督はファームで会うことは望んでいないだろう。今年こそ一軍に定着し、ブレークできるか。

写真=BBM

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