2カードを終え打率.500、2本塁打

リーグ戦では自身初の1試合2本塁打。2つのホームランボールを手にポーズを取った[写真=矢野寿明]
【4月20日】東京六大学リーグ戦
立大12-3法大(立大2勝)
立大が法大を相手に連勝で勝ち点を挙げるのは2022年春以来だ。1回戦は1対1の9回裏にサヨナラ勝ち。2回戦は13安打12得点で圧勝した。立大は慶大との開幕カードを1勝2敗で落としており、今季初の勝ち点奪取である。法大2回戦で勝利の立役者となったのは一番・山形球道(4年・興南高)だった。
2回表に満塁本塁打、8回表にも2ランを放ち、3安打6打点の活躍だった。この日は立大OBの
本屋敷錦吾氏によるレジェンド始球式。1回表、打席に立ったのは山形だった。
「大先輩の本屋敷さんのボールを間近で見られたので良かったです。個人的にもチーム的にも良い形で入れた。1個も落とせない中で、勝ち点を取れたのは大きいです。(満塁弾は)大きい打球を狙ったのではなく、狙い球を絞ったボール(ストレート)を強く振ることができました。(2本目は)追い込まれていたので、コンパクトに振りにいった結果、風に乗ってくれてスタンドに入ってくれました」
父・純一さんは立大野球部OB。生田高(神奈川)出身で、大学では投手で、のちに学生コーチを務めた。「野球をしてほしい」と野球マンガの『中西球道』にちなんで名づけられた。「すぐに、覚えてもらえる。マンガ? 読んだことがなんです(苦笑)」。マンガには興味がなかったが、書籍には親しんできた。興南高・我喜屋優監督の著書に感銘し「この監督の下で、プレーしたい」。東京都出身も、沖縄でのプレーを追い求めた。3年間で甲子園の土を踏むことはできなったが、名将の下で「人生のスコアボード」を勉強した。つまり、野球が終わっても、人生という名のスコアボードは続いていくということ。人間性の大切さを身に染みて感じる、充実の時間だった。

2回表に満塁本塁打。「打った瞬間だった」と手応え十分の一発だった[写真=矢野寿明]
山形は3年秋までに規定打席に到達したことはなく、通算11安打(2本塁打6打点)。定位置を得た今春は2カードを終え、5試合で22打数11安打、打率.500、2本塁打6打点と、3年分の数字を積み上げたことになる。
「初球から強く振ることを心がけています。一冬で体重が5キロ増の83キロ。栄養士の下で、間食や食べる時間を勉強してきました。1日5食です」。チーム全体として肉体改造に着手しており、体の軸がしっかりした印象で、たくましさが増している。シーズン開幕前の調整段階には、社会人企業チームの練習に参加。1球にかける思い、1プレーの大切さ、その基本となるフィジカル強化の重要性を自チームに持ち帰った。打席では風格があり、スイング力はリーグトップレベルだ。
「大学卒業後は社会人で野球を続けていきます。これからも成長していきたいです。この春はまだ、強いチームとの対戦を残している。うまく調整していきたい」
神宮のスタンドでは毎試合、父・純一さんが観戦し、躍動する息子のプレーに目を細めていた。「まだリーグ戦は続きます。謙虚な気持ちを忘れずにプレーしてほしい」。先輩としてのアドバイス。5試合で23打席に立ち、各校は細部までデータを収集しているはず。真価が問われるのは、残り3カードである。
文=岡本朋祐