伏線は1回戦のラストプレー

法大の主将・松下は勝ち点を落とした立大2回戦後、無念の表情を見せた。手前は大島監督[写真=矢野寿明]
【4月20日】東京六大学リーグ戦
立大12-3法大(立大2勝)
先発メンバーを見て驚いた。法大・
大島公一監督は開幕前から「四番・三塁」に固定すると明言していた主将・
松下歩叶(4年・桐蔭学園高)を、2戦目にして外したのである。
伏線は立大1回戦のラストプレーにあった。1対1の9回裏二死満塁。立大の代打・野村陸翔(4年・立教池袋高)の三ゴロを内野安打にしてしまった。アウトにすれば引き分け(プロ併用のため、連盟規定により9回打ち切り)だったが、セーフによりサヨナラ負けとなった。大島公一監督は「ベンチから見えないので、ビデオ検証は使わない」と明言していたが「選手の頑張りもある。委ねた」と行使に踏み切るも、判定は覆らなかった。
「少し余裕を持ち過ぎた動きではあったと思います。最後は野村君の執念にやられた」(大島監督)。捕球後、やや慎重に送球したことで、ヘッドスライディングした野村の手が一塁に到達するほうが速かった。代打要員、4年春にしてリーグ戦初出場である野村の脚力は、データとして入っていなかったようである。
立大2回戦で松下を先発オーダーから外した理由を試合後、大島監督はこう明かしている。
「コンディションもありますし、昨日の最後のプレーに対して、今後の松下の成長とチームへの影響を考慮し、先発から外しました。ただ、いい場面で起用したいと、最初から思っていました」
5点を追う4回裏無死満塁で代打起用も、空振り三振に倒れた。8回には気迫のヘッドスライディングで一塁内野安打。しかし、チームは3対12で、連敗で勝ち点を落とした。
「僕が昨日、今日と足を引っ張ってしまった。チームに申し訳ない。(4回の場面は)下級生がチャンスをつくって回してくれて、大島監督も期待を込めて送り出してくれたと思うのですが、打ちたい気持ちが先走ってしまって、自分のスイングができなかった……悔しいです。(8回の場面は)闘志を見せたというよりも、代打のところで1本出せなかったことが、悔しい限りです」。背番号10のキャプテンは、目を潤ませているようだった。
振り返れば、松下の野球人生はどん底から這い上がってきた。桐蔭学園高では3年夏の神奈川大会で、慶應義塾高に1回戦敗退。1球、1プレーの大切さを学んだ。
法大進学後、2年春の明大1回戦で屈辱的な展開を味わう。静岡裾野シニア、桐蔭学園高を通じて同僚だった明大・木本圭一が逆転2ランを放った。一方、代打で登場した松下は三振。この一戦を期に、取り組みのすべてを見直し、2年秋から3年秋まで3季連続ベストナイン受賞(二塁手1回、三塁手2回)へとつなげた。昨夏は侍ジャパン大学代表でプレーし、秋は5本塁打、13打点を記録した。
法大は2020年春以来の天皇杯奪還へ意気込んでいたが、いきなり開幕カードでつまずいた。今回は主将という立場であり、精神的にも相当なダメージを受けたはず。しかし、リーグ戦は待ってくれない。4月26日からは早大戦が控える。練習の虫である松下は悔しさを糧に、法大グラウンドで必死に汗を流すだけだ。逆境のときこそ同期、後輩たちはチームリーダーの所作を見ている。このままで終わるはずはない。開幕カードを消化したのみ。取り返すチャンスは、いくらでもある。
文=岡本朋祐