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【大学野球】劇的なサヨナラで慶大に先勝 明治の伝統が凝縮された一戦

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指揮官は「粘った結果」


明大の2年生・田上[左]は人生初のサヨナラ打。試合後、一塁ベンチ内で戸塚監督から祝福される[写真=矢野寿明]


【4月26日】東京六大学リーグ戦
明大3x-2慶大(明大1勝)

 明治の伝統が凝縮された一戦だった。

 初回に慶大・常松広太郎(4年・慶應湘南藤沢高)の2ランが飛び出して、ビハインドの展開。慶大の先発・外丸東眞(4年・前橋育英高)の粘り強い投球で、明大は走者を出しながらも得点できずにいた。6回裏、二死一塁から途中出場の磯圭太(2年・作新学院高)の左適時二塁打で1点差とする。

 明大は7回裏から救援した慶大の二番手左腕・荒井駿也(4年・慶應義塾高)も打ちあぐね、さらには、15分の雨天中断。集中力を保つのが難しい状況だったが、9回裏にドラマが待ち受けていた。

 先頭の友納周哉(3年・福岡大大濠高)が気迫の遊撃内野安打で出塁。後続2人が倒れるも、二死から一番・榊原七斗(3年・報徳学園高)の中三塁打で追いつく。ここで慶大・堀井哲也監督は抑えとして信頼する右腕・広池浩成(3年・慶應義塾高)にスイッチ。打席の田上夏衣(2年・広陵高)は「自分が決める。強い気持ちで」と、1ボールからの2球目の「張って行きました」と明かす高めのストレートをたたくと、打球はライト前へ。明大は劇的なサヨナラ勝ちで先勝した。

 今春から母校・明大を指揮する戸塚俊美監督は「常日頃の練習から『粘り強く』をキーワードに最後まであきらめず、ミスもありましたが、粘った結果だと思います。慶應さんにサヨナラ勝ちができたのは、良い経験になる」と学生を称えた。今年の明大打線の新たな看板は一、二番コンビである。足が使え、長打もある一番・榊原に、場面に応じて何でもできる新戦力の二番・田上。榊原はこの試合、9回裏の打席を迎えるまで4打数無安打だった。戸塚監督は言う。

「オープン戦を通じ、1試合の中でとらえる打撃ができていたので、どこかで必ず出る、と。僕の中では、雰囲気を感じていました。最後の最後で出て、良かったです」

人生初のサヨナラ打


明大は1点を追う9回裏二死から追いつくと、二死三塁から田上が右前へサヨナラ打を放った[写真=矢野寿明]


 田上は人生初のサヨナラ打に「率直にうれしい気持ちです。つないで、つないで、ああいう結果になった」と笑顔を見せた。一塁ベンチでは、6回2失点の好投を見せた先発の左腕・毛利海大(4年・福岡大大濠高)が9回裏に追いついたところから、歓喜のあまりに号泣。涙が止まらなかった。上級生の勝利への執念が、下級生に伝わった。田上は言う。

「良いピッチングをされていた中で、打線が援護できなくて……。降板後はベンチから『勝とう』『勝とう』とプラスの言葉をかけてくれました。期待に応えようと思いました」

 昨年の主将で広陵高、明大を通じて3学年上の先輩・宗山塁(楽天)からの金言も、心の支えとしてあった。

「泥臭く、頑張れよ、と。一緒にやっていたとき、卒業後も言われていました。練習からフリー打撃では低い打球、フライを打ち上げないなど、一本に対する思いを強く持っている。昨秋のフレッシュトーナメント(2年生以下でチーム編成)から良い状態で、この春にかけていました。練習の成果が出ている」

 飛躍のきかっけをつかむ一打があった。昨年12月1日の全早明戦(大宮運動公園市民球場)。代打・田上は2点を追う二死、早大の守護神・田和廉(当時3年・早実)から同点2ランを放っている。昨年、9年ぶりの春秋連覇を遂げたライバル・早大戦での本塁打に「自信になりました」。レギュラー奪取の足がかりとなる一発となったのは、言うまでもない。

 田上は3試合を終えて、チームトップタイの打率.500(14打数7安打)をマークしている。チームトップの3盗塁と足でも魅了し、三振0とコンタクト率も光る。2年生・田上が明大打線の新たな顔として伝統を継承していく。

文=岡本朋祐

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