今季からスプリットを決め球に

東海大のエース・米田はエースとしての自覚を前面に出している[写真=大平明]
【5月3日】首都大学一部リーグ戦
東海大6-1日体大(東海大1勝)
首都大学リーグ第5週1日目。6勝1敗で首位に並ぶ東海大と日体大の直接対決である。両チームのエースが顔を合わせた大事な一戦を6対1で制したのは東海大。期待に応え、8イニングを1失点に抑えて勝利投手となったのが
米田天翼(3年・市和歌山高)だ。
初回の立ち上がりはヒットとエラーで一死一、二塁のピンチを迎えるもツーシームでサードゴロに打ち取り、注文通りのダブルプレー。
「序盤はツーシームでインサイドを攻めることができたので、後半は外にスライダーが決まって楽に投げられました」
中盤からエンジンがかかってくると、4回表は2三振。5回表は九番・小林聖周(2年・浦和学院高)を148キロの高めのつり球で空振り三振。続く才田和空(1年・東海大相模高)もこの試合最速の149キロのストレートで空振り三振を奪って、3者三振。
「この冬はメディシンボールやウォーターバッグを使ったウエイト・トレーニングと、いろんな種類のランニングメニューをこなしてきました。試合になったら球速のことは考えずに投げているのですがここに来てスピードが出るようになっています」
米田はカーブ、パワーカーブ、スラーブ、スライダー、カット、スプリット、ツーシームの七色の変化球を操っているが、今季からはスプリットを決め球にしている。
「これまではスライダーピッチャーでしたが、
酒井勉コーチ(元
オリックス)から『落ちる球ひとつで人生が変わる』と言われました。酒井コーチ自身が社会人1年目は真っすぐとカーブだけだったのが、2年目にフォークを覚えてドラフト1位で指名されるほどの投手になったと聞いて、この冬はスプリットに磨きをかけてきました。スプリットを投げる時はストレートを投げる時以上に腕を振っているので真っすぐの軌道から沈むボールになっていて空振りが取れますし、球速も140キロを超えるようになってきました」
これまでは横の変化が主体だったが、スプリットの精度を上げたことで縦でも横でも打者を揺さぶることができるようになっている。
打線は4回裏にドラフト候補・大塚瑠晏(4年・東海大相模高)のライトへのツーベースを足掛かりに、柳元珍(4年・八王子高)の犠飛で先制。その後も笹田海風(3年・東海大相模高)のソロホームランなどでリードを広げると、味方の援護をもらった米田は7回に1点を失ったものの快調なピッチング。点差が開いたことで9回は救援陣に譲り、4安打8奪三振の好投を見せた。
背番号「18」のプライド
米田が背負っている背番号は「18」。2年春からエース番号を託されているが、長谷川国利監督によると「実は、18番を付けると故障してしまうジンクスがあったんです。でも、米田が『18を着けて頑張りたい』と言ったので着けさせたのですが、これまでの悪い流れを覆してくれると思います」と話す。米田本人も「18番は着けたかった背番号。エース番号を付けるからには普段の立ち居振る舞いから『チームで一番のピッチャーなんだ』という姿を見せないといけないと思っています」と自覚している。
米田の野球への姿勢について、長谷川監督は絶賛しており「マウンドを整備している姿を見るだけでも見習うべきところがある。きっと野球の神様も彼のストイックに取り組んでいるところを見ていると思います」と絶大な信頼を置いている。
前週の筑波大戦では1回戦で9回完投。翌日の2回戦では同点に追いついた直後の9回裏からリリーフのマウンドに立ち、タイブレークの10回裏までの2イニングを無失点に抑えて2日連続の勝利投手となった。
「特別な練習をしているわけではないのですが体が強く、投げる体力があるのでタフさが自分の一番の武器。先発をする時は9回を投げ切ることを考えていますし、とにかくイニングを投げるようにしています」
その言葉の通り、今季はチームの8試合中7試合に登板。イニング数はリーグ最多の40イニングを投げている。そして、長谷川監督によると「先発した翌日の試合でも本人が6回くらいから行きたがるので、こちらが止めているくらい。明日も本人が引っ込んでくれないですよ」と日体大との2回戦もベンチ入りする予定だ。
先発、抑えにフル回転の米田は「チームの完全優勝。個人としては防御率0点台をずっと目標にしています」と話しているが、現在の防御率1.35。チームも単独首位と、2つの目標の同時達成も視野に入れている。
文=大平明