ゲームメーク能力を発揮

東大・渡辺は今季先発した3試合すべてで、ゲームを作っている[写真=田中慎一郎]
【5月3日】東京六大学リーグ戦
慶大3-0東大(慶大1勝)
侍ジャパン大学代表監督に、強烈なインパクトを残した。東大のエース・渡辺向輝(4年・海城高)は7回7安打3失点の力投を見せた。打線の援護がなく0対3で1回戦を落としたが、今季登板した3試合は、いずれも安定した投球を披露している。早大1回戦では8回4失点(1対4)、明大1回戦では9回2失点(0対2)でともに完投。自身開幕3連敗と白星には恵まれないが、防御率3.38とゲームメーク能力を発揮している。
24イニングで奪三振6が示すように、アンダースローから打たせて取る投球が持ち味。ストレートは120キロ台、シンカーなどの変化球を織り交ぜ、フライアウトを目指している。慶大2回戦では5回裏、今津慶介(3年・旭川東高)に先制2ラン、7回裏には中塚遥翔(2年・智弁和歌山高)にソロを浴びた。2本塁打で3失点を喫した試合後にこう語った。
「一発は付きものです。ソロ本塁打はOK。リスクがあっても、早く打たせることを考えています。1本目は仕方ない部分がありましたが、2本目はストライク優先で取りに行ったところを打たれました。防げた事故でした」
1本目の被本塁打の要因は何か。
「相手打者のバットの軌道を見ながら配球、対策をしていくんですが、(打たれた)スライダーはコントロール優先で、ボールが垂れてしまった。垂れていなければセカンドフライだったと思うのですが、ボールが伸びずに垂れた分、スイングの軌道と合ってしまいました。相手のほうが上だったということです」
今季3本塁打と好調の四番・常松広太郎(4年・慶應湘南藤沢高)は3打数無安打。注文通りの2つのフライアウトに仕留めている。自チームのアナリストが集計したデータを信じて、渡辺は自らのボールを投げ込んだ。
「1試合2失点以内にしていけば、勝ちにつながってくる」
一塁ベンチから見つめた慶大・堀井監督は「昨年も良い投手だな、と思っていました。対策を立ててきましたが、簡単に打てるピッチャーではない。よく長打が出た」と回顧した。
渡辺は卒業後の進路志望を表明していない。1月の練習始動日には「大学日本代表の候補合宿にいけるくらいになったら(プロ志望届を)出す可能性があると考えています。昨年は東京六大学の推薦を受けることはできましたが、大学日本代表候補に入ることはできなかった。そこを一つ、乗り越えれば、可能性も生まれてくると思う」と、基準を明かした。
慶大・堀井監督は昨年から侍ジャパン大学代表の監督を務めている。例年、全国27大学連盟が推薦した一次候補選手から6月上旬、二次選考として、同中旬の最終選考合宿に招集する代表候補約50人を選出する。今年は日米大学選手権が日本で開催されるが、変則投手は国際試合において必要不可欠だ。堀井監督は昨年からの渡辺の成長を、自らの目で確認した。神宮での直接アピールがどう影響するのか、今後の選考が見逃せなくなってきた。
文=岡本朋祐