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【大学野球】プロ志望の4人を軸に北海道の大学野球の歴史を塗り替える北海学園大

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初めての関東遠征を実施


北海学園大は4選手がプロを志望する。左から工藤、木村、常谷、高谷[写真=BBM]


【5月4日】札幌学生リーグ戦
北海学園大9-0北海道文教大
(7回コールド)

 母校・北海学園大を指揮する島崎圭介監督は今年3月、初めて関東遠征を実施した。23日は巨人三軍、25日は西武三軍、26日は東京ガスとオープン戦を組んだ。

 このスケジュールには、意図があった。全日本大学選手権は1回戦から登場した場合、2回戦が連戦、中1日を空けて準々決勝という日程が組まれる。空き日も社会人のグラウンドを借りて調整。すべては大会本番を想定しての動きだった。島崎監督は「リーグ戦を10戦全勝。全国8強以上」と目標設定している。

 学生は指導者よりもさらに意識高く、大きなターゲットを定めている。159キロ右腕・工藤泰己(4年・北海高)は「投手陣で力を合わせて1点もやらず、圧倒して勝つ。大学日本一を狙っています」と言えば、153キロ右腕・高谷舟(4年・札幌日大高)も「全国大会で優勝する。札幌学生リーグはネームバリューとして弱い。神宮の大舞台で通用するところ見せつけたい」。北海道勢としてかつてない偉業に果敢に挑戦していくという。

 島崎監督は「4選手(投手3人、内野手1人)がスカウトの方に見ていただいています。素材だけではなく、試合で勝ってこそ本物。全国で結果を出すことができれば、その先の進路も見えてくる」と明かす。投手3人の共通点は、高校時代に控え投手だったことである。

 工藤が在籍した北海高時代のエースは左腕・木村大成(ソフトバンク)だった。3年時は春(背番号18)、夏(背番号11)の甲子園に出場しているが、いずれも出場機会がなかった(ともに神戸国際大付高に1回戦敗退)。

「鋭く変化する木村のスライダーを捕球できず、2年夏に捕手失格の烙印。その後は外野など、ポジションを転々しました。3年春は控えの外野手、3年夏は3、4番手投手という立場でした。木村は甲子園で相当な球数(春146球、夏152球)を投げていたにもかかわらず、出番が来ることはありませんでした」

 工藤には転機があった。「木村がドラフトにかかるのを見て、『自分もやれるところを見せてやろう』と心に誓ったんです。大学4年でプロに行く。大学入学時からずっと、ドラフト1位を掲げていました」。

学生主体の運営が実現


北海学園大・島崎監督は北広島市議会議員[議長]の顔もある[写真=BBM]


 北海学園大には寮、室内練習場がなく、グラウンドは準硬式野球部と共用。スポーツ推薦・特待生の制度がないため、野球部は原則、二部(夜間)の入試を受験して入学する。島崎監督のモットーは「組織として、自分で考えてやる」。部員は約150人。マネジャー5人、アナリスト2人、学生コーチ7人の役割が確立され、学生主体の運営が実現している。学生は自宅通いで、自己管理能力が試される。

 島崎監督は北海高で甲子園の土を踏み、北海学園大では全日本大学選手権に出場、NTT北海道では都市対抗に2回出場し、日本代表候補にも入った。現役引退後、北海学園大、北海道教育大で教員資格(公民科、保健体育科)を取得。NTTを退職後、札幌日大高の監督として2002年春のセンバツに導いた。

 15年には北広島市議会議員に初当選し、現在3期目。19年秋からは母校・北海学園大を監督として率いている。「野球の皆さんに応援していただいて、今の自分がある。町づくりに貢献したいと思っていました」。島崎監督は市議会議員として、日本ハムの「札幌ドーム」から「エスコンフィールドHOKKAIDO」への本拠地移転に携わった。人生経験が豊富な指揮官は、学生に対して自立を求め、4年間で成長できる環境にある。その象徴が工藤だった。

 高校時代の最速142キロから、1年秋に153キロ、2年夏に155キロ、3年秋に156キロと数字を伸ばし、今年4月、北海道ガスとのオープン戦で自己最速159キロを計測した。島崎監督は「西武・平良海馬投手のように、ダーン!! という球質。変化球も器用で5、6種類は投げる」と、潜在能力を認める。

 高谷は札幌日大高時代、前川佳央(日大)の控えだった。中学時代に在籍した軟式クラブチームのT・TBCからのチームメートで、工藤も在籍していた。当時のエースは前川、捕手は工藤、高谷は外野手だった。「工藤は小学校時代から知っていますが、大学で再び一緒になり、うれしかったです」。

 高校時代は最速144キロ。3年間でスピードは9キロアップした。プロ野球選手の回転数の平均が2300回転(毎分)と言われる中で、高谷は2600回転と俗に言う「キレのあるボール」を投げ込んでくる。島崎監督は「球の質で言うと山本由伸投手(ドジャース)を彷彿とさせます。この3年間で成長した要因を「1年生のときからプロを目指し、日常生活から気を使ってきました」。食事も徹底管理し、揚げ物などの脂質は避け、消化の良い食材を極力選び、冷たいものは控えるなど、ストイックな日常を過ごしてきた。

指揮官が「エース」として全幅の信頼を寄せる左腕


 数字では工藤、高谷が目立つが、島崎監督が「エース」として、全幅の信頼を寄せるのは146キロ左腕・木村駿太(4年・札幌国際情報高)だ。高校時代は大学日本代表候補でもある平川(仙台大)の控え。ゲームメーク能力に長け、北海学園大では2年春から先発をまかされている。「この春のシーズン前も工藤、高谷は自覚の欠けた行動があり指導しましたが、木村に関しては言うことはありません」と舌を巻く。好きな投手は「真っすぐで押せますし、変化球でも空振りを取れる」とオリックス宮城大弥を挙げる。進路については「プロ志望ですが、これから監督と相談します。まずは全国に行くことを考えたい」と、チームファーストの姿勢を曲げることはない。

 三番・遊撃の常谷拓輝(4年・札幌静修高)は勝負強い右打者として注目されている。北海道文教大1回戦では、センターバックスクリーンへ一発。開幕3連勝に貢献した。「持ち味は強肩強打です」。遠投120メートルで、鋭いスイングを見せる。投打二刀流で、サイドから最速144キロを誇り、これまでも試合終盤を任されてきた。島崎監督は今春も遊撃手から救援起用を示唆。頼りになる万能選手だ。

「上で野球を続けたい。これまで起用してくれた監督、コーチに結果で恩返ししたいです」

 プロ志望の4人を軸に2025年、北海学園大は北海道の大学野球の歴史を塗り替える。

文=岡本朋祐

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