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中日に不可欠な存在へ どん底からはい上がった「天才打者」に他球団から警戒の声

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勝負強さが光る打撃


5月7日のDeNA戦で初回に決勝の先制2ランを放った上林


 中日に不可欠な存在になっているのが、移籍2年目の上林誠知だ。5月7日のDeNA戦(バンテリン)で、初回に右中間へ3号先制2ラン。ガッツポーズしてダイヤモンドを一周した。試合の主導権を握る一発が決勝打となり、チームの連敗を4で止めた。

 今年はオープン戦で12球団トップタイの3本塁打をマーク。開幕戦はDeNAの左腕・東克樹が先発した兼ね合いでスタメンに名前を連ねなかったが、出場した試合できっちり結果を残す。5月4日の広島戦(マツダ広島)で今季2度目の猛打賞。左腕・玉村昇悟から打った安打の価値は高い。初回に143キロ直球を右前へはじき返すと、3回二死二塁の好機では外角低めのスライダーに反応して左前適時打。5回一死一、三塁でも、初球の143キロ直球を中前にはじき返す適時打を放った。

 31試合出場で打率.281、3本塁打、16打点をマーク。得点圏打率.346と勝負強さが光る。左投手に対しても打率.286と決して苦手にしているわけではない。他球団のスコアラーは「ローボールヒッターだが、高めの球もきっちりコンタクトしている。打撃フォームがしっくりきているのでしょう。もともと能力が高い選手ですし厄介な打者です」と警戒を強める。

シーズン前につかんだ手応え


 実は今年のシーズン前に、打撃で手応えをつかんでいたという。上林は週刊ベースボールのインタビューで、以下のように語っていた。

「キャンプは量を増やす時期。とにかく強く振るようにということは(コーチから)言われていました。意識していたのは、インパクトと左足の内転筋を合わせること。そうするとインパクトの瞬間の音というものが違ってくるので。量をこなして染み込んでくるものもあるし、その中で自分で気付くこともありますから。キャンプ中に何かつかんだということは特になかったですが、オープン戦でちょっとしたきっかけはありました」

「キャンプが終わったあと、ファームで4試合ぐらい出るようにと言われました。その中のナゴヤ球場での試合が中止になって(3月4日)、その日の練習で、自分はヘッドを使って打つんですけど、バットの握りというか、手首の揺れというか、それが昔の感覚にちょっと近づいてきたなという感触をつかんだんです。そのあと札幌遠征で(一軍に)合流したんですが、そこから(打撃が)上がっていった感じですね」

中日でキャリアハイの成績へ


 打撃だけでなく、守備や走塁でも貢献度が高い。6盗塁はリーグ2位タイ。4月1日の巨人戦(バンテリン)では、SNS上で「神走塁」と称された高度な走塁技術で本拠地初勝利をもたらした。同点で迎えた7回無死二塁で村松開人が犠打を試みたが、打球が強く、投手は三塁へ送球。タイミングは完全にアウトだったが、ヘッドスライディングを試みた上林が三塁手のタッチをかいくぐるように右手をとっさに引っ込め、左手でベースに触れた。セーフの判定で巨人はリクエストを要求したが覆ることなく、この好走塁が決勝点につながった。

「短い時間の中での判断でした。バントした瞬間は(打球が)強いなと。サードに投げて来ると思ったので、足から行けば絶対にアウトですけど頭から行けば何かを起こせるなと。グラブがベース前に置いてあるのが見えて、その直線上に(自分の)右手があったので咄嗟に引っ込めて左手でタッチに行った感じです」と語ったプレーに、天才的な野球センスが凝縮されていた。

 ソフトバンク時代から応援しているファンは多い。18年に全143試合出場し、打率.270、22本塁打、62打点をマーク。チームの中心選手として羽ばたくかに見られたが、その後は19年に右手薬指の剥離骨折、21年に右肩甲骨骨折、22年に右アキレス腱断裂と大ケガが続き、一軍での出場機会が減った。23年オフにチームの戦力構想から外れる形で退団。中日に移籍した昨年も右肋間筋損傷で出遅れ、46試合出場で打率.191、1本塁打、3打点と不完全燃焼だった。

 身体能力の高さは誰もが認めるだけに、ケガで戦列を離れることなくシーズンを最後まで駆け抜けられるかが大きなポイントになる。今年でプロ12年目。経験を重ねた29歳はこれから野球人生で脂がのり切る時期に入る。ソフトバンク時代の輝きを取り戻すのではく、中日でキャリアハイの成績を目指す。

写真=BBM

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