崖っぷちからはい上がって

現在、一軍での出場機会が増えている増田陸
巨人が緊急事態に見舞われた。5月6日の
阪神戦(東京ドーム)で、
岡本和真が初回に負傷交代。一塁の守備で、
中野拓夢の犠打を処理した三塁手・浦田俊輔の送球が本塁側にそれ、左腕を伸ばして捕球したが中野と交錯。ミットを持った左手が引っ張られた。そのままうずくまり、痛みで表情をゆがませたまま交代した。都内の病院で診察を受けて「左肘のじん帯損傷」と診断され、翌7日に登録抹消に。不動の四番は替えがきかない存在だ。一人でも多くの若手が活躍してほしい。その有力候補がプロ7年目の増田陸だ。
崖っぷちからはい上がろうとしている。4月30日の
広島戦(東京ドーム)に「七番・一塁」で今季初のスタメンに抜擢されると、0対0の6回に
大瀬良大地のカットボールを左翼線に運ぶ先制の2点適時二塁打。一軍で打点をマークするのは、2022年8月4日の阪神戦(東京ドーム)で8回に代打で
及川雅貴から左越えソロを放って以来ちょうど1000日ぶりだった。この一打が決勝打となり、3年ぶりのお立ち台に上がると、「本当にここに立つために(二軍で)必死でやっていましたし、本当にメチャクチャうれしいです」と喜びを爆発させた。
「00年世代」の一員
紆余曲折を経てきた。ドラフト2位で巨人に入団し、21年オフに育成契約となったが、翌22年に支配下に復帰すると、代打で結果を残して存在感を発揮する。
中田翔(現
中日)、
中島宏之を押しのけて、一塁でスタメン起用されるように。69試合出場で打率.250、5本塁打、16打点をマークした。感情を前面に出すプレースタイルでファンからも愛され、さらなる飛躍が期待されたが、23年は一軍出場なし。打撃不調に加えて左肘内側側副靭帯損傷、浅指屈筋損傷で離脱するなど悔しいシーズンに終わった。昨年も4試合出場にとどまり、5打数無安打。チームは4年ぶりのV奪回を飾ったが、貢献できなかった。
今年がラストチャンスであることは覚悟していただろう。開幕は二軍で迎えたが、4月22日に一軍昇格すると、殊勲打を放った4月30日の広島戦以降は5試合連続でスタメン出場するなどチャンスを与えられている。毎試合毎打席が人生をかける勝負だ。24歳という年齢は期待を込めて起用される立場ではない。チームメートの
戸郷翔征はエースとなり、他球団でも
小園海斗(広島)、
森下翔太(阪神)、
松山晋也(中日)がチームの主力選手となっている。
日本ハムは「00年世代」がチームの中心軸に。
金村尚真、
矢澤宏太、
松岡洸希、
田宮裕涼、
野村佑希、
水野達稀、
奈良間大己、
水谷瞬、
万波中正と投打でタレントがズラリ。互いの存在が良い刺激になっている。
チームに不可欠な存在へ
田宮は今年2月に週刊ベースボールのインタビューで、同学年の選手たちの存在について以下のように語っていた。
「ポジションも違ったのでライバル意識は全然なかったですけど、1年目から僕が置いていかれているのは分かっていました。同じ野手のジェイ(野村)は2年目に開幕戦スタメン出場で、まんちゅう(万波)も4年目からレギュラーでずっと出ていたので、なんとしてもこの2人に追いつこうという思いでずっとやってはいたんですけど、同じスピードではやっぱり追いつけなかった。なので昨年、みんなが出ているところにしっかりと出られたというのが、すごくうれしかったですね。2人(野村と万波)がやっているところにようやく来られたという気持ちです。やっぱりずっと一緒にプレーして、初めて追いついたと言えると思うので。まだ1年しか一軍でプレーしていないので、ずっと一緒にできるように、と思っています」
増田陸は一軍定着を目指す立場だが、他球団の評価は高い。23、24年はファームで暮らす時期が長かったが、セ・リーグ球団の首脳陣は「タイミングの取り方が抜群にうまい。パンチ力もあるしトレードで獲得する価値が十分にある」と絶賛していた。一過性の活躍で終わるつもりはない。打撃でアピールを続け、チームに不可欠な存在を目指す。
写真=BBM