「環境に慣れたことが大きい」

今季は安定感が上がっているケイ
DeNAは強力打線のイメージが強いが、今年の大きな強みは「先発4本柱」だ。
東克樹、
トレバー・バウアー、アンドレ・
ジャクソン、アンソニー・ケイとエース級の投手たちがズラリ。特に日本で大きな成長曲線を描いているのが、来日2年目左腕のケイだ。
今季は5試合登板で3勝1敗、防御率1.03をマーク。球速が上がり、制球も大幅に改善している。昨年は136回2/3を投げてリーグワーストの53四球を与えたが、今年は35回を投げて6四球。「ゾーン内で積極的に攻められていることが影響している。環境に慣れたことが大きい」と好調の要因を分析する。
マインドコントロールできるようになったこともパフォーマンスに影響している。来日1年目の昨年は球審の判定に不満そうな表情を浮かべたり、打ち取った打球が安打になると苛立ちを隠せず叫んでいたりしたが、下克上を勝ち抜いたCS、日本シリーズでマウンド上の態度が明らかに変わった。走者をためても表情を変えずに淡々と投げ込む。
巨人と対戦したCSファイナルステージ第1戦では先発で6回を1安打無失点の好投で勝利に導き、パ・リーグ覇者・
ソフトバンクに挑んだ日本シリーズ第4戦でも初回から3者連続三振を奪うなど7回7奪三振無失点の快投。26年ぶりの日本一に輝く原動力となり、優秀選手賞に選ばれた。
メジャーでは主に中継ぎだったため、不慣れな先発で中盤以降に息切れしていたが、1年間投げ続けたことでペースをつかんだことも大きいだろう。今季は登板した5試合ですべて6イニング以上投げ、5月5日の
中日戦(バンテリン)は8回3安打1失点の快投で3勝目をマーク。他球団のスコアラーは「一番厄介な球種がカットボールですね。140キロ台後半の球速帯で直球と見分けがつかず、打者の手元でカットしてくるので芯で捉えるのが難しい。スライダー、チェンジアップも精度が高いので球種を絞りづらい。安定感で言えば、バウアーより上だと思います」と警戒を強める。
DeNAで進化した助っ人左腕
ケイは
大原慎司一軍チーフ投手コーチ、
小杉陽太一軍投手コーチの助言に耳を傾け、成長の糧にしていた。かつてDeNAでリリーバーとして活躍し、左投手でNPB最速の163キロを計測した
エドウィン・エスコバー(現オイシックス新潟)も日本のトレーニングを取り入れて、大きく飛躍したことが思い出される。2017年のシーズン途中に
日本ハムからトレード移籍した際は制球難で自滅するケースが見られたが、ストライクゾーンにどんどん投げ込む投球技術を磨いたことで、与四球率が改善。19年にリーグ最多の74試合登板するなど、5年連続50試合以上登板と鉄腕ぶりを発揮し、ブルペン陣を支えた。エスコバーは週刊ベースボールのインタビューで、以下のように語っている。

DeNA時代のエスコバー
「日本とアメリカで違いを感じるのは、日本は練習量やルーティンが多い。そのやり方が、自分に合っているのかもしれません。あとは年齢を重ねるにつれて、投球のメカニズムをより深く理解できているのが球速アップにつながっていると思います。実際に自分でもボールが速くなっているのは感じますし、感覚もよくなっています」
「球速そのものに関しては、それほどこだわりはありません。自分の仕事はしっかりとストライクを投げ、3アウトを取ることです。もちろんNPB左腕で一番速いボールを投げたということは、うれしいですし、とても光栄です。自分にとって真っすぐは自信のあるボールですからね。でも、試合になれば状況に応じて変化球も交えながらの投球術も大切になります」
ケイも日本で心身共にレベルアップしたことで、投手としてのステータスが一気に上がった。今オフは日米を巻き込んだ争奪戦になる可能性も十分考えられるが、今はもちろんシーズンに集中している。リーグ優勝、2年連続の日本一に向け、先発の軸として白星を積み重ねる。
写真=BBM