光ったテンポの良い投球

法大の先発・野崎は8回3失点で今季2勝目を挙げた[写真=田中慎一郎]
【5月10日】東京六大学リーグ戦
法大9-3東大(法大1勝)
法大が東大に快勝し今春、3カード目にして初めて1回戦で先勝した。勝利投手となったのは8回3失点の左腕・野崎慎裕(4年・県岐阜商高)である。早大2回戦では救援でリーグ戦初勝利を挙げていたが、先発では今季4試合目にして初白星となった。
「入りを大事にしてきました。序盤に点を取られましたが、最少失点で乗り切れたので自分の中では良かった」
4回を終えて2対2。法大は5回表に無死満塁から熊谷陸(2年・花巻東高)の適時三塁打など一挙4得点で、勝ち越しに成功した。「野崎さんが頑張って投げていたので、何とか助けたいと思っていました」(熊谷)。後輩の援護を受け、野崎は中盤以降、安定感ある投球で8回まで投げた。9回表に代打を告げられ降板。「9回を見据えて投げていたので、投げ切れなかったのは残念ですが、次回登板に向けて、準備していきたい」と振り返った。
法大は第2週の立大戦で連敗し、第3週の早大戦も1勝2敗で勝ち点を落とした。野崎は空き週となった第4週を活用して再調整。「真っすぐの調子が上がってきたのが大きいです。この期間で状態を上げてきました」。8回で8奪三振、無四球とテンポの良い投球が光った。
野崎は今春から背番号18を着けている。昨秋まで3年間、背負ったのは右腕・
篠木健太郎(
DeNA)。法大のエースの称号である。
「最初は(篠木さんの姿が)よぎりましたが、大島さん(
大島公一、監督)はよく『新しい100年、新しい法政をつくっていくんだ!!』と言われます。それ以降は、過去の先輩を気にすることなく『自分が18』という意識で投げるようにしています」
昨秋のチームから篠木、山城航太郎(
日本ハム)、吉鶴翔瑛(東芝)、
安達壮汰(三菱重工East)と中心で投げていた旧4年生投手が卒業。経験値の少ない投手陣の中で、野崎は主戦投手としての自覚を増している。
チームを背負う覚悟
県岐阜商高では2020年夏の甲子園交流試合、21年春夏の甲子園に出場した。1学年上には主将・佐々木泰(青学大-
広島)がおり、鍛治舍巧監督(当時)の下で徹底的に鍛えられた。法大では3年秋に神宮デビュー。4試合に先発したが、勝利を挙げることはできなかった。最終学年、チームを背負う覚悟がある。
リーグ戦中、神宮球場のスタンドには県岐阜商高で2度の準優勝(1956年春、夏)に貢献したレジェンド左腕・清沢忠彦(慶大OB)の姿が見られた。母校・慶大の試合に加えて、法大戦も観戦する。後輩・野崎の投球に、目を凝らして見ているのが印象的だった。
野崎は東大1回戦で今季2勝目。チームは厳しいシーズンが続いているが、背番号18の魂を込めた投球が、法大の光明となっていく。
文=岡本朋祐