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【首都大学リポート】「どんなサインが出ても決めてやる」 優勝の行方を占う大一番でサヨナラスクイズの日体大・田邊広大

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延長タイブレークの激闘


日体大・田邊は大一番で役割を果たした[写真=大平明]


【5月10日】首都大学一部リーグ戦
日体大4x-3東海大(延長10回)
(2勝1敗)

 首都大学リーグ第6週1日目。首位に並ぶ東海大と日本体育大が1勝1敗のタイで迎えた3回戦。リーグ優勝の行方を占う大一番は1対1の同点のまま延長タイブレークへ突入。10回は共に2点を取り合う激闘となったが日体大が4対3でサヨナラ勝ち。勝負を決めるスクイズを決めたのが田邊広大(4年・常総学院高)だ。

 11回裏、一死満塁で打席に立った田邊。カウント2ボール1ストライクからの4球目に、古城隆利監督が出したサインはスクイズだった。「前の回に走塁でミスをしてしまったのですが、チームメートがつないでくれたので『どんなサインが出ても決めてやる』と思っていました。

 東海大はエース・米田天翼(3年・市和歌山高)が先発し、ロースコアの接戦になることは分かっていたので、どうやったら1点を取ることができるのかを練習してきたのですが、スクイズの練習もやってきました」。

 さらに、古城監督が褒めたのは守備だ。今季は正捕手としてほぼすべてのイニングでマスクをかぶっているが、この試合も七番・キャッチャーで先発出場。6回表、無死一塁で大塚瑠晏(4年・東海大相模高)を迎えた場面では大前圭右(3年・大阪桐蔭高)の二塁への盗塁を刺してみせた。「田邊は肩が強いのが武器。あの場面はキープレーヤーの大塚君が打席に入っていたので、盗塁を刺すことができたのは大きかったです」(古城監督)。

 タイブレークでは10回、11回と立て続けに満塁のピンチを迎えたが、フェンス際に上がったファウルフライに対し、捕ってすぐに体がフェンスに触れるほどだったが難なくつかむ好プレー。投手のワンバウンドのボールもしっかりとキャッチして後逸しなかった。

「1年生の時、矢澤宏太さん(日本ハム)のボールを受けていたのですが、低めのボールをはじいてばかりで『これでは試合に勝つことができない』と感じ、それからずっとストップの練習をしてきました。コツコツとやってきたことが今になって成果として表れているのだと思います」

今年に懸ける強い思い


 田邊は常総学院高の3年春、センバツ甲子園に出場。日体大は高校1年時に指導を受けた佐々木力監督(現:郁文館高監督)の母校だったこともあって進学した。

「日体大は部員数が多いので一つになるのはたいへんですが、チームワークはとれていますし、応援もすごい。大所帯のなかでもしっかりまとまっているのが良いところだと思います」

 1年秋にはリーグ戦にデビュー。しかし、腰を故障してしまい、先輩の山下航汰(三菱自動車岡崎)や後輩の北島蒼大(2年・東海大菅生高)といったライバルの台頭もあって出場機会を増やすことができなかった。しかし、そんな苦境のなかでも、4年生となった今年に懸ける思いは強かった。

「昨春は開幕から6連敗してしまいましたが、同じ失敗をしないように4年生がチームを引っ張っていかなければといけないと感じていました。高校時代はキャプテンだったので、いろいろと口に出して言うことは慣れていたのですが、大学では試合に出場できていなかったこともあって、その場の雰囲気に流されてしまいがちだったんです。でも、最上級生になって自覚も生まれ、チームを勝たせるためにも言うべきことは言うように心掛けています」

 指導にあたる古城監督も「4年生になって発言が増え、チームに苦言を呈することもできるようになっています」と田邊の成長を認めている。

 バッティングについては「いろいろと試してきたのですが、3月になってから力を抜いて打つようにしたところ、その打ち方がハマりました。これまではどうしても力んでしまうことが多かったのですが、打つ瞬間は自然と力が入るので、その瞬間ですら力を抜いて打つことをイメージしてスイングしています。そうしたらオープン戦でホームランも出るようになったんです」と開眼。

 前週までの9試合すべてでヒットを放ち、リーグ5位の打率.375(32打数12安打)。ホームランはまだないものの、三塁打は1本、二塁打は4本と5本の長打を放ち、打点もリーグ4位の8打点を記録。まさに攻守の要として活躍している。

 リーグの単独首位に立ち「優勝したいです」と田邊。さらに「ベストナインを獲って、チームの勝利に貢献する選手になりたいです」と続けた。東海大とのデッドヒートから一歩抜け出した日体大。次週は完全優勝を懸けて筑波大と対戦する。

文=大平明

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