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【大学野球】法大OB山本浩二氏がレジェンド始球式 「育成の法大」の象徴…いまでも夢に出てきそうな猛特訓

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選手たちに授けた“金言”


法大OB・山本浩二氏がレジェンド始球式をした[写真=田中慎一郎]


【5月11日】東京六大学リーグ戦

 レジェンド始球式を前にして、山本浩二氏は一塁側の法大ベンチ前で学生を集め、円陣を組んだ。約1分間、選手たちは直立不動で大先輩からの“金言”に耳を傾けた。

「全国のOBが気にしているんだぞ! 社会に出る前、最後の勉強を大学でやっている。プラスになる大学4年間を大事にしてほしい」

 広島の永久欠番、愛着ある『8』を着け、マウンドの前からワンバウンド投球。スタンドに集まった8000人の観衆の声援にこたえた。

「(始球式は)何回かやっていますが、ここのところ届かないんですよ。自己採点? からい、からい(苦笑)。ゼロですよ。昨日は土井さん(土井淳、明大、91歳)、4月は本屋敷さん(本屋敷錦吾、立大、89歳)が投げてすごいですね」

レジェンド始球式後、法政大学野球部OB会[法友野球倶楽部]の会長を務める小早川毅彦氏[左、元広島ほか]と記念撮影。法大、広島東洋カープと同じ道を歩んだ2人は、固い絆で結ばれている[写真=BBM]


 HOSEIのユニフォームを着るのは、大学4年生だった1968年以来。山本氏は毎年1月、法政大学野球部OB会(法友野球倶楽部)に出席しており、母校を気にかけている。

「57年……。半世紀以上やで……(苦笑)。大学時代は背番号26だったんです。法政を卒業して以降、毎シーズン、母校のことは気にしているんです。出身校を見ると、全国から入学してくる。そこで、自分と重ねわせるんです。プロ入り後、全国に遠征に行くと、各地のOBから連絡をいただくんです。これほど、ありがたいことはない。人生の中で大きな意味を持つ時間でした。始球式で投げて、懐かしくもあり、あの当時を思い出しました」

「鍛えられた苦しさしかない」


 1960年代における「育成の法大」の象徴だ。ミスター赤ヘルとして、プロ野球の一時代を築いた山本氏は、生粋の「たたき上げ」。広島・廿日市高出身。法大には投手として入学した。

「1年生の新人戦(2年生以下でチーム編成)で田淵(田淵幸一、元阪神ほか)とバッテリーを組んだんです。この1回だけ。相手は東大で、神宮ではなく東大球場だったと記憶しています。変化球はカーブ、スライダーがありましたが、田淵は真っすぐのサインしか出さない。4~5イニングを投げましたが、そりゃあ、ストレート一本だと打たれます。後から田淵に聞くと、オヤジ(当時の松永怜一監督)の指示だったそうです。すでに野手転向が決まっていたようで……。田淵は1年からレギュラーで、将来的に前後を打たす打者を育てたかった、と。そこで白羽の矢が立ったのが富田(富田勝、元南海ほか)と私であったわけです」

 いまでも、夢に出てきそうな猛特訓である。

「鍛えられた苦しさしかない。本隊の練習、新人練習が終わると、松永さんがノックバットを持ち、内野手の富田と外野手の私の特守が始まる。暗くなるまで、ひたすらボールを追いかける。夕方になり、見えにくくなったら、ボールに石灰をつける。富田も一緒に受けており、先にへばるわけにはいかなかった。負けるわけにはいかなかったわけです」

 1年後、歴代1位48勝を挙げる後輩・山中正竹(全日本野球協会会長)が法大に入学した。

「シート打撃で対戦すると、あんな小さな体で(公称168センチ)、ものすごい真っすぐを投げる。しかもスライダーのキレはすごかった。『こんな投手がいるのか』とたまげたものです」。1年時からエースの山中氏に、三番・富田、四番・田淵、五番・山本の「法大三羽ガラス」でリーグ戦では優勝3度を経験した。

「良きライバル、仲間を持ちました。最終戦を前にして田淵は22本塁打(当時最多)、私は8本塁打、富田は7本塁打だったんです。最後に富田が打って、8本塁打にしました」

 プロ入り後、広島名物の猛練習を積み、1975年のセ・リーグ初優勝に貢献した。「昭和50年。今年が昭和100年だから、ちょうど50年前やね」。後楽園球場での歓喜は、鮮明な記憶として残っている。その後も70年代から80年代にかけてのカープ黄金期を、四番打者として支えた。「法政でレギュラーになれるとは思っていなかった。すべてオヤジのおかげです。野手に転向して、そこからきていますから」。練習は嘘をつかないことを学んだ法大時代が、ミスター赤ヘルの原点である。

文=岡本朋祐

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