すご味を増した打撃

5月7日の巨人戦で4試合連続アーチを放った森下
首位を走る
阪神の原動力になっているのが、大卒3年目の
森下翔太だ。
今年から就任した
藤川球児監督の構想で開幕から四番で起用されていたが、4月中旬以降は三番に座り、四番・
佐藤輝明、五番・
大山悠輔のクリーンアップで固定されている。確実性とパワーを兼ね備えた打撃はすご味を増している。5月4日の
ヤクルト戦(甲子園)から4試合連続アーチ。7日の巨人戦(東京ドーム)では、4点差を追いかける5回にフルカウントから
山崎伊織の151キロ直球を豪快に振り抜き、左翼席に6号2ランをたたき込んだ。
本塁打以外の活躍も光る。10日の
中日戦(甲子園)で5試合連続アーチを達成できなかったが、初回の右翼の守備で一死二塁から
上林誠知の打球を捕球し、素早く本塁へ返球。二塁走者・
岡林勇希を本塁で刺し、先制点を許さなかった。打撃でも直後の初回一死二塁で球界屈指の好投手・
高橋宏斗の151キロ直球を詰まりながらも中前に運ぶ適時打。二塁走者・
中野拓夢が好走塁で本塁生還してこの一打が決勝点となり、「積極的に甘い球があればいくという気持ちでいった結果がすごく難しい打球だったのですが、良いスタートを切ってくれて(中野)拓夢さんに感謝したいと思います」と試合後のお立ち台で先輩を称えた。
コンタクト能力の向上
今季37試合出場で打率.318、6本塁打、25打点。打撃3部門でいずれもリーグ3位以内に入っている。目を見張るのがコンタクト能力の向上だ。新人の23年は打率.237、昨年は打率.275、今季はまだシーズンの途中だが3割を超えるアベレージと年々数字が上がっている。森下は中大のときにアマチュア球界屈指のスラッガーとして名を轟かせていたが、東都大学リーグ通算.240と確実性に課題を残していた。ドラフトでは
浅野翔吾を1位指名して当たりクジと縁がなかった阪神から「外れ1位」で指名された。
その後の活躍は周知の事実だ。飽くなき向上心でレベルアップを積み重ね、昨年11月の国際大会「プレミア12」で侍ジャパンの四番を担った。スポーツ紙記者は「大学時代は広角に長打を打てるスラッガーでしたが、ボールを捉える技術がアマチュア時代より格段に上がっている。本塁打、打点だけでなく首位打者のタイトルも十分に狙える」と期待を込める。
打撃部門の争いが混とん
本塁打、打点のタイトルを獲得してきた
岡本和真(巨人)、
村上宗隆(ヤクルト)が今年は故障で長期離脱している。打撃部門の争いが混とんとしている状況は、森下にとって大きなチャンスだ。過去に三冠王を獲得した選手は8人しかいない。最後の達成者は村上で、22年に打率.316、56本塁打、134打点を記録している。現役時代にNPBトップの通算3085安打をマークした
張本勲氏が、週刊ベースボールのコラムで三冠王の価値を強調していた。
「私は村上がシーズン56本塁打を打ったことには、さほど興味がない。もっと言えば、どうしてこれほど大騒ぎするのか不思議でならなかった。それはおそらく
王貞治(巨人)の55号を超えたからだとは思うが、日本のプロ野球のシーズン最多本塁打は2013年の
バレンティン(ヤクルト)の60本ではないか。その記録を超えたのならまだ分かるが、私に言わせれば56号はシーズン歴代2位、つまりは銀メダル。56号と三冠王、どちらが価値があると思うかと聞かれたら、迷うことなく三冠王と答える。もちろんシーズン56本塁打は立派だし、村上の偉業にケチをつけるつもりはないが、価値があるのは打撃タイトルを3つも獲得した三冠王のほうだと強く言っておきたい」
目を見張る成長速度で進化する森下は伝説を塗り替えられるか。殊勲打を積み重ねれば、2年ぶりのV奪回にもグッと近づく。
写真=BBM