ロッテ戦で1カ月ぶりの猛打賞

6月13日のロッテ戦で3安打猛打賞をマークした山田
ヤクルトが苦しい戦いを強いられている。6月13日のロッテ戦(ZOZOマリン)でサヨナラ負けを喫して4連敗。借金は今季ワーストの21にふくらんだ。だが、明るい材料がある。今季3度目の猛打賞をマークした
山田哲人だ。
「六番・二塁」でスタメン出場し、2回に
石川柊太のパワーカーブを左前にはじき返すと、4回も高めに浮いたフォークを捉えて左翼線を破る適時二塁打。6回は
横山陸人の内角に抜けた直球で死球を受けたが大事に至らず、8回に149キロ直球を左前に運んだ。チームの敗戦に試合後は笑顔がなかったが、全4打席で出塁した。
トリプルスリーを3度達成という前人未到の記録を達成したが、度重なる故障で最近は本来の輝きを放てていない。昨年は下半身の故障で2度戦線離脱した影響で、110試合出場で打率.226、14本塁打、39打点。「やっぱり1年間戦い抜きたいという思いがめちゃくちゃ強いから、そのためにもう今から始まっていると思って、しっかり取り組んでいる。1年間一度も離脱しないというのが目標。自分の中で今日よりも明日、明日よりも1カ月後といい方向に自分の状態がいってくれれば」と昨オフに振り返っていた。
盗塁王を3度獲得しているが、昨年は1盗塁のみ。13年にレギュラー定着後最少の数字だった。「自分の長所はなんだと思ったときに、単純に一番はスピードだなと思った。やっぱりスピードを取り戻したい。スピードがあればおのずと成績もついてくると思った。1年間しっかり、自分のスピードを生かした野球をしたい」とキッパリ。シーズン中から試合前の練習で毎日のようにダッシュを繰り返していたが、オフも継続。期する思いは強かった。
故障で出端をくじかれた今季
だが、今年も故障で出端をくじかれる形に。左手指の腱を脱臼した影響で開幕を二軍で迎え、4月2日に一軍昇格。5日の
中日戦(神宮)で2回に先制の1号左越え2ランを放ち、
池山隆寛(現二軍監督、通算304本塁打)以来球団史上2人目の通算300本塁打を達成した。
翌6日の同戦も2試合連続左越え3ランを放ったが、快音が続かない。打率が2割と1割台を行き来する低調な状況が続き、6月に入ると8試合連続でスタメンを外れた。チームは
塩見泰隆、
村上宗隆、
長岡秀樹と主力選手が故障で次々に離脱し、14試合連続2得点以下とプロ野球ワースト記録を更新する苦しい状況に。主将の山田に掛かる期待は大きかったが、力になれない。打撃で精彩を欠き、盗塁は0と持ち味のスピードが影を潜めている。
落ち込んでいる暇はない。現状を打破しようと、必死だ。左足を高々と上げる打法が代名詞だったが、足をほとんど上げずに踏み込むすり足打法を試みた時期も。プライドをかなぐり捨ててでも状況を好転させたい。試行錯誤を繰り返した末、ロッテ戦でマークした1カ月ぶりの猛打賞が復調のきっかけになるか。
価値観をひっくり返すスター
ヤクルトの監督時代に黄金時代を築いた
野村克也氏は、生前に週刊ベースボールのコラムで山田を以下のように評していた。
「右打ちで、あれだけ欠点のないバッターは非常に珍しい。しかも長打力があって、足も速い。『天は二物を与えず』と言うが、プロ野球の歴史も80年ともなれば1人や2人、『与えられた』選手も出てくるということだろう。もう一つ不思議なのは、山田が173センチの私より小さく見えることだ。山田の身長は180センチ。十分大きいはずなのに、大きく見えないのだ。強打者、一流選手は体が小さくても、大きく見えるもの。小柄な役者だって、舞台に出れば大きく見えるではないか。昔から、そうだった。山田の俊敏さゆえか、それとも時代が逆さまになったのか」
山田はプロ野球の固定概念、価値観をひっくり返すスーパースターだった。まばゆい光を放っていたため、周囲の求める要求が高くなる。今も打席に立つと、ヤクルトファンの声援のボルテージが上がるのがその証左だ。山田が復活しなければ最下位からの巻き返しも叶えられない。まだ32歳。もう一度輝けるか。
写真=BBM