波に乗り切れないピッチング

今季は苦しいマウンドが続いている戸郷
プロ野球人生で、最も大きな試練を迎えているかもしれない。
巨人のエース・
戸郷翔征だ。
聖心ウルスラ学園高からドラフト6位で入団すると、高卒2年目の2020年に9勝をマーク。先発ローテーションに定着すると、22年から3年連続12勝を挙げ、最多奪三振のタイトルを2度獲得した。昨年は5月24日の
阪神戦(甲子園)でノーヒットノーランを達成するなど、8、9月で計5勝をマークし、4年ぶりのリーグ優勝に貢献。23年のWBCではリリーバーで侍ジャパンの世界一を経験するなど、順調に階段を駆け上がっていた。
戸郷の最大の強みはタフなことだ。21年からの4年間で計670イニング以上投げ、23年から2年連続リーグ最多の4完投を記録。昨年の3完封もリーグ最多だった。だが、今年は春先からピリッとしない。開幕から3試合連続で痛打を浴びる登板が続き、4月11日の
広島戦(マツダ広島)で4回途中10安打10失点と自己ワーストの投球内容で登録抹消に。5月5日に再昇格し、巻き返しに必死だった。25日の
ヤクルト戦(東京ドーム)で6回7安打2失点にしのぎ今季初勝利をマーク。6月8日の
楽天戦(東京ドーム)では7回3安打無失点で今季自己最多の8三振を奪い、2勝目を挙げた。
巨人終身名誉監督の
長嶋茂雄さんが逝去した後に上がった初のマウンドで快投を見せ、「球場に足を何度も運んでいただいて、僕らにすごいエールをたくさんくださったので、そんな方が亡くなってすごい悲しいですし、でも何とかやっぱり勝つことが一番の喜びだと思うのでそれを見せれてよかったなと思います」とお立ち台で思いを口にした。
エースの輝きを取り戻したかったが、波に乗り切れない。6月15日の
オリックス戦(京セラドーム)で5回9安打5失点KOされ5敗目を喫すると、22日の
西武戦(東京ドーム)は5回6安打3失点。直球にキレがなく、変化球も制球が甘くピンチの連続だった。4四死球と球を操れず、持ち味の投げっぷりの良さが見られない。6敗目を喫し、今季2度目のファーム降格が決まった。
大物OBのフォームに関しての指摘
巨人OBで野球評論家の
広岡達朗氏は、戸郷の投球フォームの変化について週刊ベースボールのコラムで言及している。
「戸郷翔征は5月25日のヤクルト戦(東京ドーム)でようやく今季初勝利を挙げた。私は再三彼の手投げを指摘してきた。上から下の順に体の部位を動かすのではなく、腰からほうれ。肩を後ろに引いて投げるのは手投げ。右の腰をグッと引けば力のベクトルは捕手のミットへ向かう。それが、腰が入るということなのだ。バッティング、盗塁でも重心から動けば上体も後を追うように動く。順番を逆にしなければいけない。横綱に昇進した大の里はアマチュア時代の恩師から重心を落とすことの大切さを教わったという」
「戸郷は少しずつ投げ方が変わってきた。腰から投げるようになった。誰かが投げ方を教えているのだろう。若さの勢いに任せて上体でギャッとほうっていたのが、正しい投げ方に変えさせられた。6月1日の
中日戦(バンテリン)では初回、内角直球を
岡林勇希に右翼席へ運ばれた。立ち上がりから直球をとらえられ、毎回のように走者を背負いながら変化球主体の投球で6回途中9安打、1失点で勝敗はつかなかった。今は改良途中のため、まだモノになっていない。中途半端。むしろ平凡な投げ方になって、打者からすると打ちやすい。そこが気になる」
11試合登板で2勝6敗、防御率5.24。クオリティスタート(先発投手が6回以上を投げて自責点3以内)達成率は27.3%と、昨年の80.8%から大幅に落ちている。チームにとって大きな誤算だが、一番悔しい思いをしているのは戸郷だ。首位・阪神は投手陣が安定しているだけに、これ以上ゲーム差を離されると苦しくなる。逆転優勝でリーグ連覇に向け、完全復活を目指す。
写真=BBM