夢を追いかけてメジャーへ

今季はマリナーズとマイナー契約を結んでいた藤浪[写真=Getty Images]
マリナーズ傘下を退団した
藤浪晋太郎が、日本球界に戻ってくる。メディア報道によると、
DeNAが獲得に向けて交渉する姿勢を示しているという。
阪神からポスティングシステムを利用して海の向こうに渡ったのが2022年オフ。日本球界からステップアップで挑戦する選手が多い中、藤浪は違った。高卒1年目から3年連続2ケタ勝利をマークしたが、その後は制球難に苦しみ、一軍定着がままならない。それでも、憧れの舞台に挑戦する夢を追いかけた。
1年目は2チームで計7勝
米国での活躍に懐疑的な見方があったが、藤浪は己の力で道を切り拓く。23年にアスレチックスで34試合登板して5勝を挙げると、シーズン途中にオリオールズにトレード移籍。7月の月間防御率は3.48に向上し、8月6日のメッツ戦では日本人メジャー歴代最速の102.6マイル(約165.1キロ)を計測した。9月に7試合連続無失点をマークし、9年ぶりの地区優勝に貢献。剛速球にメジャーの強打者たちのバットが空を切る。球の質が上がったヒントは握り方にあった。アスレチックスに在籍していた時、これまでと違った握り方を試してみたところ、高校時代の感触を取り戻したのだという。
「(直球の)回転数は実際に上がっていました。1900ぐらいだったのが2300ぐらい出ているときもあったそうです。シンプルに考えれば、ボールに指が掛かっていたのかもしれません。実は今季中盤、指を掛ける場所を少し変えました。『深く握る』じゃないけど、指先を縫い目に掛けていたところを、第1関節が縫い目にくるようにしたんです」
「そのころには、無理をしなくても自然に100マイル(約161キロ)が出ていました。阪神で中継ぎをしていたころ、アドレナリンマックスで腕を振って160キロを出していたときとは、全然違いました」
複数の球種を似た軌道から変化させ、打者の見極めを難しくする。「ピッチトンネル」を活用したことも投球の幅が広がる要因になった。
「持ち球が真っすぐ、カット、カーブであれば、真っすぐの軌道に合わせて右打者の内角高めに投げれば全部ストライクゾーンに収まるという計算の仕方。持ち球によってトンネルの場所が変わって、真っすぐとスプリットが主体の自分は真ん中高めになる。そこを通せば打者が見分けにくいでしょ、と。実際、高めのトンネルにしっかり通せるようになって、空振りやファウルを取れる確率は高くなったと思います」
6月中旬に自由契約に
さらなる飛躍が期待されたが、メジャーの世界は厳しい。昨年はメッツと単年契約を結んだが、オープン戦に5試合登板で防御率12.27と結果を残せず3Aに降格。右肩痛の影響もあり、メジャー昇格は叶わなかった。今年はマリナーズとマイナー契約を結び、春季キャンプに招待選手として参加。オープン戦8試合で防御率5.87とアピールできず、3A・タコマで開幕を迎えた。21試合登板で2勝1敗、防御率5.79。5月以降は11試合登板でわずか1失点だったが、四球で出塁を許すケースが目立ち、6月17日に自由契約となった。
米国でプレーした3年間。思い描いたパフォーマンスができなかった時期のほうが長かったかもしれない。だが、無我夢中で走り抜けた経験は今後の野球人生で貴重な財産になるはずだ。アスレチックスでプレーしていたときは、「フジ、シンプルにいこう」と投手コーチやチームメートが声を掛け続けてくれた。「オマエはいいボールを持っているんだから、ストライクを投げることに集中すればいいじゃないか。ただでさえ野球は難しいモノなのに、なぜもっと難しく考えるんだ」。その言葉に右腕は救われた。
160キロを超える直球を投げられるのは稀有な才能だ。課題である制球難を克服できるか。藤浪が再びマウンドで輝く姿を、日本の野球ファンは心待ちにしている。