二番・遊撃で存在感発揮

攻守でチームに欠かせない存在の中野
首位を走る
阪神は
森下翔太、
佐藤輝明、
大山悠輔の強力クリーンアップが目立つが、一番・
近本光司と共にチャンスメークしている二番・
中野拓夢の存在が大きい。
7月10日の
広島戦(マツダ広島)。逆転を許した直後の7回に1点差に詰め寄ってさらに二死一、二塁の好機で打席が回ると、
島内颯太郎の高めの直球を詰まりながらも左前に落とす同点適時打。逆転勝利に貢献し、チームは11連勝を飾った。12日の
ヤクルト戦(甲子園)でも、2点を先制された直後の4回に先頭打者で1ボール2ストライクと追い込まれたが、ベテラン左腕・
石川雅規のカットボールを右前にはじき返して出塁。この回に一挙3得点と逆転劇の口火を切った。二塁の守備でも俊足を生かした広い守備範囲で内外野間に飛ぶ難しいフライを何度も好捕。今季は遊撃のレギュラーが固定されていないが、息の合ったプレーで併殺を完成させている。
1年目からレギュラーに定着
ドラフト6位で入団した当初は注目度が高いと言えなかったが、チームに不可欠な存在になった。1年目の2021年から遊撃の定位置をつかみ、盗塁王を獲得。新人の30盗塁達成は
赤星憲広、近本光司に続く球団史上3人目の快挙で、盗塁成功率.938は歴代最高記録だった。23年は侍ジャパンのメンバーに選出され、WBCで世界一を経験。
岡田彰布前監督の方針で二塁にコンバートされたシーズンでも
牧秀悟(
DeNA)と共に最多安打(164本)のタイトルを獲得し、リーグ優勝と日本一に大きく貢献した。中野は安打を積み重ねた要因について週刊ベースボールのインタビューで、以下のように語っていた。
「一番は、初球を振らなくなったことが大きいとは思います。その中で、二番としての役割、例えば犠打、四球、進塁打……しばりがあり、チームバッティングをしなければいけない打順の中で、最多安打が獲れたことは、すごく有意義なことだったな、と思います。僕の中では、“四球で出塁すること”を最初から意識して打席に立っていたということはなかったんです。近本(近本光司)さんが塁に出たときに、盗塁をするのを待ちながら、という状況もありましたので。たとえ近本さんが出塁できなかったときでも、簡単に初回を終わらせたくないという考えもありました。その中で少しでも球数を投げさせる、それだけでも相手バッテリーの受け取り方が違うな、とも感じていました」
初球から積極的に打つ打撃スタイルだったが、現状維持で満足せず変化を恐れない。球数を投げさせることで新たな自信が芽生えた。
「今年になってそのスタイルから変えていく間に、うまくいくことのほうが多くなったんです。そこで『このスタイルのほうがいいのかな』と思い始めたんです。見逃す怖さはなかったですね。でも、2ストライクに追い込まれる確率が高くなったのは確かです。そこで打ち取られる可能性が高まることへの怖さは少しありました。そこは慣れるにつれて、薄らいでいきましたけど」
昨年味わった試練
順調に階段を駆け上がっていたプロ野球人生だったが、昨年は試練を味わった。2年連続で全143試合出場したが、打撃の状態が上がらず打率.232はプロ入りワーストの数字に。規定打席に到達した選手の中でリーグワーストだった。盗塁数も新人の21年から3年連続20盗塁をマークしていたが、6盗塁と大幅に減少。「もう1回、自分がどういう打者なのか、ここからコンタクト率を上げるには、どういう練習をすべきかを考えていくことが大事だと思っています」と昨年の秋季キャンプでは打撃改造に取り組んだ。「近本さんが出たらつないで、出られなかったら出ることを意識する。盗塁もマイナスなことを考えてしまっていた。自分らしい二番をつくりたい」。
相手バッテリーのマークが厳しくなる中、その壁を乗り越えて成績を残すことが一流選手の証しと言える。今年は攻守でダイナミックなプレーを取り戻すと共に、真骨頂である打席での粘り強さを取り戻している。リーグトップの打率.297をマークし、14盗塁を記録。盗塁成功率82.4%はセ・リーグでトップクラスの数字だ。
2年前に日本一、世界一を経験したことは野球人生の大きな財産になっているだろう。勝負の夏場もダイヤモンドを疾走する。
写真=BBM