有力校と繰り広げた連戦

花巻東高はノーシードから勝ち上がり、夏3連覇を遂げた[写真=佐々木亨]
みちのくの夏空に、馴染みの校歌が響きわたる。2023年夏から変わらない、岩手大会決勝の風景だ。第107回全国高校野球選手権岩手大会を制した花巻東高が、夏13度目の甲子園出場を決めた。夏3連覇は、18年ぶりとなるノーシードからの厳しい戦いの末にあった偉業である。
18年前の2007年夏は、1年生左腕・
菊池雄星(現エンゼルス)が躍動して、決勝では専大北上高と激闘を演じて岩手を制した。それ以来のノーシード。春季岩手大会初戦で敗れた花巻東高は今夏、1回戦から登場して県内の有力校と連戦を繰り広げた。
1回戦の盛岡中央高、3回戦の一関学院高、さらに準々決勝の専大北上高は、いずれも甲子園出場経験がある強豪私学だ。準決勝の久慈高もまた、1979年に甲子園出場経験があり、今春の東北大会に出場した県立の実力校。そして、決勝の相手は県内で何度も覇権争いをしてきた盛岡大付高である。大会を振り返る花巻東の佐々木洋監督が、安堵の表情を浮かべるのも無理はない。
「監督になって、こんなに険しく、厳しく、長い夏はなかったなあ、と。優勝候補ばかりが相手でしたので、本当に長く感じました」
準決勝までの5試合中4試合が
コールドゲームとあって、結果だけを見れば盤石の勝ち上がりだ。ただ、簡単なゲームは一つもなかった。それでも、試合を追うごとに花巻東は強さを増していった。
決勝の7月24日。ゲーム前には、花巻東OBの
大谷翔平(現ドジャース)が、海の向こうで5試合連続となる37号ホームランを放ったニュースが流れる。
そんな“追い風"もありながら、花巻東は初回に1点を先制。5回裏には、佐々木監督も「大きかった」と振り返る一挙6得点のビッグイニングを作って試合を優位に運んだ。
「伝説を創る」思いを体現する夏

四番・古城は勝負強い打撃を披露した[写真=佐々木亨]
準決勝まで打率.625、8打点と勝負強さが際立った四番・
古城大翔は、決勝でも貴重な追加点を生む左前適時打を放った。大会を通じて投打に躍動した五番・
赤間史弥は、左投げ右打ちの稀有な選手だ。その打撃は破壊力があり、佐々木監督も「飛距離は歴代トップクラス」と言うほど。決勝でも、左中間へ2点適時二塁打を放つのだから、実力は本物だ。
そして、決勝で完投した左腕・萬谷堅心。「春から夏にかけて球速が上がった」というストレートはキレがあり、変化球も効果的に散りばめてエース級の働きを見せた。いずれもが2年生だ。その下級生トリオに、俊足の二番・佐藤謙成や好打の三番・新田光志朗といった3年生の意地が加わり、花巻東は6試合をたくましく戦い抜いた。
巨人の
古城茂幸コーチを父に持ち、木製バットで快打を連発する古城は言う。
「チャンスでの勝負強さが自分自身の強みでもあると思うので、支えてくれる3年生、そしてメンバー外でもサポートを続けてくれるチーム
メイトに感謝しながら、甲子園では岩手大会よりさらにいい結果を求めていきたい」

左から4人目から赤間、古城、萬谷の2年生トリオ[写真=佐々木亨]
出場機会こそ少ないが、チームの支柱である主将・中村耕太朗(3年)は、岩手大会をこう総括するのだ。
「岩手大会の夏3連覇は意識していませんでした。春の大会では1回戦で負けてしまっていたので、この夏は一戦一戦やっていく。その意識だけで戦いました」
中村の帽子のツバには「伝説を創る」と記されている。ベスト8だった今春のセンバツ大会から書き込んでいる言葉だ。その思いを体現する夏。甲子園では、部史にさらなる色合いを加えたいと思っている。今夏の合言葉でもある「一戦必勝」も忘れずに――。佐々木監督は、3年連続となる夏の聖地の戦いに視線を送る。
「スタイルを変えることなく、甲子園でも一戦必勝で戦いたい」
文=佐々木亨