心に染み入るメッセージ

日本高野連・寶会長は開会式の励ましの言葉で握り拳をつくり、高校球児へエールを送った[写真=牛島寿人]
【第107回全国高等学校野球選手権大会】
8月5日 開会式
阪神甲子園球場
観衆1万6000人が一つになった。
日本高野連・寶馨会長(大会審判委員長)の励ましの言葉は、異例の形で締められた。
「今日はいつもと違う開会式(初の夕方開催)になりました。私の励ましの言葉もいつもと違う形で、観客の皆さんのお力を賜りたく存じます。私のこの励ましの言葉、皆さんの力を得て、諸君に、そして、全国の高校生たちに何万倍もの励ましの言葉として、エールを送りたいと思います。私の『高校生』に続いて『頑張れ〜!!』とご唱和ください」
寶会長が音頭を取ると「頑張れ〜!!」と、甲子園球場のスタンドが一体に。寶会長も出場49校の選手たちへ、握り拳をつくった。
いつも選手に寄り添った、心に染み入るメッセージである。冒頭では優しく、語りかけた。
「高校野球とは何でしょうか? 高校野球はこれまで100年以上、続いてまいりました。日本の野球の基盤であります。諸君はそのど真ん中にいま、いるわけであります。この甲子園球場での野球大会、その意味を考えて、自覚をして、思う存分、躍動してください」
夏の甲子園、第107回大会が開幕した。「暑さ対策」のため、開会式は初めての夕方4時からの開催。昨年に続き、大会期間の一部では午前の部、夕方の部による2部制で行われる。高校球児の聖地・甲子園で大会をつないでいくため、主催者側は模索を続けている。
開会式は毎年、胸が熱くなる。お馴染みのファンファーレから、大会行進曲のイントロが流れると、一気にボルテージが上がる。出場49校がアナウンスされるたび、スタンドからは、厳しい地方大会を勝ち上がってきた健闘を称える大きな拍手だ。そして、大会歌『栄冠は君に輝く』の美声が球場内に響き渡る。真夏の風物詩。高校野球が「日本の文化」であることを、あらためて認識する空間。現場でしか味わえない臨場感は、言葉にできない。
目の前で繰り広げられた感動的シーンも、当たり前でないことを、記しておきたい。5年前の2020年夏は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で79年ぶりの中止。21年夏は無観客、22年夏も感染拡大予防ガイドラインの下で行われた。19年までの通常開催に戻ってからまだ、3年しか経過していないのだ。
寶会長が励ましの言葉で発信した大会開催の「意味」と、戦う上での「自覚」。高校球児の誰もが、周囲への「感謝」を口にするが、開会式で今一度、確認する場になったはず。主催者側の思いは、届いていた。智弁和歌山・山田希翔主将(3年)が選手宣誓を務めた。
「私たちは、人々の心に大きな感動を届けたいと思います。自然環境や社会状況が変わりゆく中で、高校野球のあり方も問われています。しかし、その魅力は変わりません。己の限界に挑戦し、仲間との絆を深め、相手チームを敬い、正々堂々とルールを守り、プレーする私たち高校球児の姿は、多くの人々の心を打つと信じています。野球を愛する仲間たち。これまでも、これからも私たちを支えてくださる全ての方々。そして、今、ここ甲子園で思う存分野球ができることに感謝し、勇気を持って全力でプレーすることを誓います」
1回戦から決勝まで48試合。新たな高校野球の歴史が聖地・甲子園に刻まれる。
文=岡本朋祐