打率でも上位に立つ背番号8

豪快な打撃だけでなく、つなぐ意識の高さも見せる佐藤輝
セ・リーグの打率部門は、
近本光司(
阪神)が打率.292でリーグトップ。1950年に2リーグ制になって以降、初となる打率2割台の首位打者が誕生する可能性が出てきた。その中で、
佐藤輝明(阪神)にもタイトル獲得のチャンスが。打率.280はリーグ5位。28本塁打、72打点はリーグトップで、三冠王を狙える位置につけている。
ここぞという勝負所で、申し分ない働きを見せている。8月5日の
中日戦(バンテリン)で、2点差を追いかける8回無死一、二塁で左腕・
橋本侑樹の直球を右中間スタンドに運ぶ逆転3ラン。起死回生の一撃で両リーグ最速の60勝に到達に貢献した。佐藤輝がアーチを放った試合は10連勝。セの対戦成績で唯一負け越していた中日相手に逆転勝利を飾った意味は大きい。広いバンテリンドームで今季は早くも4本塁打をマークしている。規格外のパワーと打撃技術の高さが際立つ。
魅力は豪快なアーチだけではない。翌6日の同戦では1点ビハインドの8回二死三塁で、
藤嶋健人の初球のスプリットを低弾道の打球で三遊間を抜ける同点の適時打。6回一死満塁の好機では
柳裕也のカットボールで遊飛に仕留められたが、気持ちを切り替えた。今年の佐藤輝は4打席目が打率.284、10本塁打、5打席目以降が打率.412、3本塁打と試合終盤の集中力が際立っている。試合を決める一打だけではなく、2ストライクと追い込まれた後に簡単にアウトにならず、軽打や四球で次の打者につなぐ意識が垣間見える。
相手バッテリーは佐藤輝に長打を打たれたくない。外角中心の配球になることがあるが、強引に引っ張ると凡打が増えて術中にはまる。広角に安打を打つ現在の打撃スタイルを貫けば、高いパフォーマンスを発揮できるだろう。
バースが残した圧巻の数字
阪神で三冠王を獲得すれば、1986年の
ランディ・バース以来の快挙となる。「史上最強の助っ人」の呼び声高いバースの残した数字は圧巻に尽きる。来日3年目の85年は打率.350、54本塁打、134打点をマーク。勝利打点22はプロ野球新記録だった。
西武と対戦した日本シリーズでも第1戦から3試合連続アーチと史上初の快挙で日本一に貢献。三冠王に加えて、シーズンと日本シリーズでダブルMVPを受賞した。
翌86年もプロ野球史上最高打率.389、47本塁打、109打点で2年連続の三冠王を獲得。6月に7試合連続アーチを放ち、当時
巨人の
王貞治監督(現
ソフトバンク球団会長)に並ぶ日本記録を樹立すると、夏場以降は打率4割に向けて異次元の挑戦を続けた。
“最強助っ人”と同じ誕生日

86年に2年連続三冠王に輝いた“最強助っ人”バース
バースは2023年1月に野球殿堂入りしている。その際に週刊ベースボールの取材で、現役時代に打撃コーチで助言を受けた
並木輝男氏へ、感謝の思いを口にしている。
「並木さんは辛抱強く私の練習に付き合ってくれました。センターからレフトへ打球を運ぶんだということを教えてくれました。そのきっかけは『ガイジンストライク』でした。来日直後、明らかにアウトコースに外れたボールを審判にストライクと
コールされたときに聞いた言葉です。そこで考えました。その外角のボールを打てるように練習するのか、あるいは三振し続けるのか。その結果、並木コーチと一緒に外角球を逆方向に打つ技術を習得するため、練習を繰り返しました。自分のモノにするまでには半年かかりましたね。並木さんの助けがなければ、来日3年目、85年の活躍は考えられません。さらに言えば、殿堂入りもなかったでしょうし、こうしてインタビューを受けている私もいなかったはずです」
バースと佐藤輝は45歳の年齢差があるが、共に3月13日生まれという不思議な運命で結ばれている。「バースの再来」と形容されてきた助っ人外国人、和製大砲が過去に何人もいたが大輪の花を咲かせることはできなかった。佐藤輝は真の後継者になれるか。26歳のスラッガーには無限の可能性が広がっている。
写真=BBM