2023年、24年に続いて3度目の開催

「全早稲田戦」が8月9日、新潟・南魚沼市の大原運動公園ベーマガSTADIUMで行われた。試合後、早大・小宮山監督[右]は稲門倶楽部を率いた大阪ガス・峯岡監督[左]と挨拶を交わした[写真=矢野寿明]
早大の現役学生と、早大OBの現役社会人で編成する「稲門倶楽部」が対決する「全早稲田戦」(主催:早稲田大学野球部、共催:南魚沼市教育委員会、後援:稲門倶楽部、(株)ベースボール・マガジン社)が8月9日、新潟・南魚沼市の大原運動公園ベーマガSTADIUMで開催された。
社会人チームはエイジェック、茨城トヨペット、JFE東日本、鷺宮製作所、東京ガス、Honda、JR東日本、ENEOS、トヨタ自動車、大阪ガスから副部長、コーチ、選手の総勢18人が参加。8月28日に開幕する都市対抗野球大会への出場メンバーも顔をそろえ、早大は社会人トップベルに胸を借りた。なお「全早稲田戦」は初開催の2023年、24年に続いて、3度目の開催だ。
23年は計23安打を放った稲門倶楽部が21対2で勝利し、昨年は現役大学生が社会人相手に9対3と雪辱している。
今年は両チームの意地が激突する接戦となった。稲門倶楽部は5回表に大阪ガス・
吉澤一翔(大阪桐蔭高出身)の左越えソロで先制すると、早大は5回裏に��丸快晴(1年・大阪桐蔭高)の適時打で追いつく。6回裏には一死満塁から内野ゴロの間に勝ち越すと、石郷岡大成(4年・早実)の2点適時打でリードを3点に広げた。
稲門倶楽部は7回表に東京ガス・
加藤雅樹(早実出身)のバックスクリーンへのソロアーチ、8回表にはHonda・
檜村篤史(木更津総合高出身)の適時二塁打で1点差とする。その裏、早大は敵失で1点を追加し、2点リードを逃げ切った。投げては先発の
伊藤樹(4年・仙台育英高)が3回1安打無失点に抑え、4回は
高橋煌稀(2年・仙台育英高)が1回無失点、以降は
宮城誇南(3年・浦和学院高)、
田和廉(4年・早実)、
小松龍一(1年・花巻東高)と1イニングずつをつなぎ、9回は
安田虎汰郎(2年・日大三高)が打者3人で仕留めて、5対3で勝利した。
なお、稲門倶楽部の投手はエイジェック・
伊藤大征(早実出身)のみの参加。チーム事情により前日のオープン戦に登板しており、この日は投げられず、JFE東日本・
須田幸太コーチ(土浦湖北高出身、元
DeNA)が急きょ準備して、先発で1イニングを無失点。2回以降は早大の投手陣が、代行として登板している。
この日は地元・南魚沼市のファン、学童野球チーム、早大野球部OBなど多くの観衆が詰めかけた。また、内野スタンドでは早稲田大学応援部の約50人よる大応援が繰り広げられ、リーダー、吹奏楽団の迫力ある演奏、華やかなチアリーダーズと、東京六大学リーグ戦が行われる神宮球場さながらのムードの中で行われた。
下記は早大と稲門倶楽部のコメントである。
早大・日野愛郎部長
「稲門倶楽部の人数の調整で10選手ほどが稲門倶楽部のベンチに入りましたが、試合後、学生からは多くの学びがあったと聞きました。レベルの高い声がけがあり、ベンチ内での言語が違ったと明かすのです。OBの方には毎年、多く参加してくださり、学生たちは多くを吸収し、ありがたい機会です。応援部も東京から足を運び、1回から9回まで力強い応援を展開してくれました。試合に携わったすべての方に、感謝を申し上げたいと思います」
早大・
小宮山悟監督
「在学時代に全早稲田戦に出場した、卒業したばかりのOBが参加してくれました。当時、社会人から得たものがあったからこそ、今度は逆の立場で後輩たちに示してくれたことは、ありがたい限りです。足が遅くても、準備さえしていれば、次の塁を狙える。勝負どころで、外野の好返球で俊足選手の生還を許さなかった。随所に社会人の完成度の高さに触れることができました。試合後に校歌(3番)を聞いた際は、球場全体が早稲田でしたので『未来永劫、夏は南魚沼で』という思いが芽生えました。早稲田の『夏合宿は軽井沢』と言われた時代がありましたが、あらためて南魚沼を定着させたいと思いました」
早大・
小澤周平主将(4年・健大高崎高)
「社会人選手のフィジカル、打球速度、スイングスピードは大学生とは別格です。守っている立場として常にプレッシャーを感じていました。すべてのプレーが際立っており、自分たちとの差を感じました。(二塁手で好守を連発)1日、1日でテーマを掲げており、今日は『足を動かして捕球する』という課題だったんですが、それが実践できたのは良かったです。昨晩のレセプションでは中川さん(卓也、東京ガス)からは実戦につながるアドバイスをたくさん聞きました。この2日間、充実の時間を過ごすことができました」

早大の先発・伊藤樹は先発で3回無失点と順調な仕上がりを見せた[写真=矢野寿明]
早大・伊藤樹投手(4年・仙台育英高)
「社会人トップレベルとの対戦で、どこまで通用するのか、現状を確認できる収穫の多い試合でした。内容、結果ともにこの段階では順調に行っており、リーグ戦開幕にベストの状態で入れるように練習を重ねていきたいと思います」
稲門倶楽部・峯岡格監督(大阪ガス監督)
「引き締まったゲームができました。早稲田は投手陣が安定しており、取られた後に得点する、きっちりした野球をやってきました。社会人も醍醐味であるパワー、走塁や守りでも後輩たちにハッとするようなプレーが見せられたのではないかと思います。社会人野球は一発勝負なので、その日の自分の良いプレー、悪いプレーは関係ないんです。そこを気にしていたら、試合は終わってしまいますので……。今日は各チームからの集まりでしたが、世代も近く、過去に一緒にプレーした仲でもあり、集中力を高めたプレーができていました。都市対抗に出場する選手は、母校の後輩たちとプレーすることで原点に立ち返り、良い形で本番に入れると思います。全早稲田戦は他の大学にはあまり見られない企画であり、良い取り組みだと思います」
稲門倶楽部・須田幸太投手(JFE東日本コーチ)
「(JFE東日本で2021年限りで引退して以来)4年ぶりのマウンドで、必死でした。練習ではフリー打撃、シート打撃で投げることがあっても、実戦マウンドはまったく違います。何とか1イニングを投げ切れました。今回は現役学生と関わりを持つことができて良かったです。僕たちのときは3連覇(2006年秋〜07年秋)で終わっていますので、後輩たちにはぜひ、東京六大学リーグ4連覇を達成してほしいです」
稲門倶楽部・吉澤一翔内野手(大阪ガス)
「今回、初めて参加させていただきましたが、本塁打はうれしかったです。早稲田の応援の下でプレーするのは懐かしい気持ちになりました。同級生の
瀧澤虎太朗(ENEOS)のバットを借りたんですが、気持ち良く振り抜けました。都市対抗開幕に向けて(大阪ガスの)峯岡監督にも良いアピールができました」
稲門倶楽部・加藤雅樹内野手(東京ガス)
「打ったのはど真ん中の真っすぐ。相手投手が(早実の後輩である)田和でしたので、喜びも一層、大きいです。2年ぶりの参加で楽しかったです。大学在籍時に、泥臭くプレーしていたのを思い出しました。全早稲田はとてもありがたい機会で、良い形で都市対抗本戦に入れます。今年はチームとして手応えもあるので、2021年以来の黒獅子旗を狙っていきます」
文=岡本朋祐