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2025夏の甲子園

【甲子園】広陵高が出場辞退 2回戦は津田学園高の不戦勝

 

広陵高が8月10日、兵庫県西宮市内で会見を開き、大会の出場辞退を表明。深々と頭を下げた。右は堀正和校長、左は浅田哲雄事務局長[写真=田中慎一郎]



【第107回全国高等学校野球選手権大会】
8月10日 広陵[広島]出場辞退

 広陵高(広島)が8月10日、大会本部に出場辞退の申し出をし、受理された。今回の出場辞退により、第9日の第4試合(8月14日)に予定されていた広陵高の2回戦は津田学園高(三重)の不戦勝となる。

 広陵高の運営母体である広陵学園から8月10日に出された「第107回全国高等学校野球選手権大会の出場辞退について」の全文を掲載する。

 平素は広陵高等学校及び本校硬式野球部の活動に多大なるご理解を賜り、厚く御礼申し上げます。

 本学園は9日、緊急理事会を開催し、第107回全国高等学校野球選手権大会の出場を辞退することを決定いたしました。

 本校硬式野球部をめぐっては、過去に公益財団法人日本高等学校野球連盟(日本高野連)に報告した部員間の暴力を伴う不適切な行為だけでなく、監督やコーチから暴力や暴言を受けたとする複数の情報が、SNSなどで取り上げられています。

 こうした事態を重く受け止め、本大会への出場を辞退したうえで、速やかに指導体制の抜本的な見直しを図ることにいたしました。現在、第三者委員会などで調査していただいている事案につきましては、全面的に協力してまいります。

 被害を受けられた部員および保護者の方には、重ねてお詫びを申し上げます。また、今大会に出場しているチームのみなさま、高校野球ファンのみなさまをはじめ、本校が加盟している日本高野連、広島県高等学校野球連盟ほか、各方面のみなさまに多大なご迷惑、ご心配をおかけしましたことを、改めて深くお詫び申し上げます。

 本校は、正課の活動のみならず部活動などの課外活動においても、いかなる暴力も認めないことを掲げてまいりましたが、今回の事態を招いたことは誠に遺憾であり、今後二度とこうした事案が起きないように再発防止に全力を注いでまいります。それとともに、辞退による選手の心情を十分にくみとり、選手のケアに努めてまいります。

 なお、現在、SNS等で発信されている画像や投稿の中には、事実と異なる内容、憶測に基づく投稿、生徒の写真等を報道等から盗用した投稿、関係しない生徒への誹謗中傷も見受けられます。生徒及び職員の名誉と安全を確保するためにも、このようなことがないよう、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

広陵高の出場辞退を受けて、日本高野連・井本亘事務局長は『学生野球要覧』を手に、今回の広陵高の「厳重注意」に至るまでのプロセスなどを説明した[写真=田中慎一郎]


【出場辞退までの経過】
▽1月22日
硬式野球部の部員間で暴力を伴う不適切な行為が発生。

▽2月14日
学校は広島県高野連に報告書を提出。被害生徒は3月末で転校。

▽3月5日
広島県高野連から報告された事案にについて日本高野連の審議委員会で審議し、野球部には厳重注意、当該部員4人には1カ月間の公式戦出場禁止の指導を通達。学生野球憲章に基づく「注意・厳重注意および処分申請等に関する規則」では、「注意・厳重注意」は原則として公表しないと定めている。

▽7月26日
広陵高が3年連続26回目の甲子園出場決定。

▽7月下旬以降
野球部で暴力問題があったとする情報がSNSで拡散する。

▽8月5日
日本高野連は一部報道を受け、一連の件について3月に審議し、厳重注意の措置をした事案であると発表。学生野球憲章に基づく規則では、注意・厳重注意は原則公表しないと定めているが、広がりを受けて対応した。

▽8月6日
SNS等(今大会直前の投稿から騒動が拡大)で拡散されている事案の内容と、広陵高が日本高野連に報告した内容に違いがあり、学校側から、報告していた内容以外に新たな事実関係はない旨、説明と報告の文書を公表。主催者は大会出場の判断に「変更はなし」とした。同問題では広陵の選手、関係者に対する誹謗中傷や差別的な言動などが、特にSNS上で拡散。主催者はこうした行為について名誉や尊厳、人権を傷つけるものであり、決して看過できるものではないと注意喚起した。

▽8月7日
広陵高は1回戦(対旭川志峯高)で勝利。試合後、SNS上で流れている新たな情報について、日本高野連にも被害を訴えている元部員から情報提供があった。広島県高野盟を通じて、学校に確認したところ、訴えのあった内容について確認できなかったとの報告を受けた。広島県高野連は「学校は元部員の保護者からの要望を受け、第三者委員会を設置し、現在調査中」とした。第三者委員会の調査結果を受けた学校からの報告を待ち、日本高野連が対応を検討することになっている。

▽8月10日
広陵高が出場辞退を発表。過去に野球部の元部員が監督とコーチ、一部の部員から暴力や暴言を受けたとする情報などについては、調査の結果、学校側は「それはあくまでもSNSに上がっているものであり、指摘された事項は確認しておりません」とした。選手はこの日の午前中にバスで宿舎から学校へと戻り、学校敷地内にある野球部寮で待機。堀校長は記者会見後、すぐに学校へ戻ると、野球部員、保護者会で出場辞退の経過を説明。なお、堀校長によれば、学校が野球部の運営体制、指導環境を調査している間、中井監督は現場の指導から外れることを明かしている。中井監督は広陵学園の理事5人の一人であり9日、宿舎から広島へ戻った。当事者ということもあり、同日の緊急理事会には出席せず、堀校長は「中井監督は、すべて理事会の決定に委ねます、と申しております」と説明した。

広陵高の出場辞退を受けて、夕方には大会会長と同副会長が取材に応じた。左は日本高野連・寶馨会長、右は朝日新聞社・角田克社長[写真=田中慎一郎]


 以下、10日に兵庫県西宮市内で行われた記者会見のコメントである。

広陵高・堀正和校長
(最終的に出場辞退した理由)
「大会運営に大きな支障をきたしている。同時に本校も一生懸命甲子園を目指して頑張ってきた学校ながらも、これ以上行けば、高校野球の名誉、信頼を大きくなくすことになる。また、我が事で大変申し訳ありませんが、本校にいる生徒が登下校で誹謗中傷を受けたり、追いかけられたり、寮に爆破予告があったり、そういったこともSNS上で騒がれています。校長として生徒、教職員、地域の人の人命を守ることは最優先であることを踏まえ、出場辞退に踏み切ることを決断いたしました。(今回の件を踏まえ)一つひとつの事案を最後まで円満に終える、両者が納得して終えることが何よりで最優先ですが、そこを校長として深く反省しています。そこのことを教職員に指導できなかったことは、校長としての私の責任だと思っております。一つひとつの事案をそこまで細かく確認できていなかったこと、そこが大きな問題と思っております。(今回の事案に関係のない野球部員も含まれていることについては)苦渋の決断です。校長としてこれからどうしていくのか、子どもたちのケアを含めて、真摯に考えてまいりたい」

【大会主催者】
朝日新聞社・角田克社長(大会会長)
(今回の一件で懸念されている「高校野球のイメージ低下」についての質問について)
「おっしゃる懸念は確かにあるかな、と思っていますが、多くの高校野球を一生懸命やっている全国の皆さん、ならびに今回の選手権大会で頂点を目指して頑張っている皆さん、多くの皆さまはこういったことはほぼ無縁であると確信しています。本質的に高校野球の、夏の甲子園の価値、社会的存在意義のようなものは、変わらずにいると思っております」

(SNSについての懸念)
「事実、ファクトベースが何かというところを、きちんと、かなりの確度で把握した上でないと、いろいろな判断は大変難しい状況です。そこがスピード感を持ってSNSは進んでいくので、そのスピード感に対応できる体制づくりは、真剣に考えないといけない」

日本高野連・寶馨会長(大会副会長)
(一連の経過について)
「主催者として、日本高等学校野球連盟会長として、深くお詫びを申し上げます。広陵高校は今回の一連の事態を重く受け止められ『大会出場辞退』という決断をされました。野球部については不祥事件の再発防止、指導体制の抜本的な見直しなど、今後のあり方を検討していくと、おっしゃっています。第三者委員会が調査中の事案を含めて、同校の今後の動向を注視していきたいと思います。学校として、一つのけじめとして『辞退』を選ばれたのかなと思っております。日本学生野球憲章では一切の暴力を排除し、いかなる差別も認めないとしています。日本高野連、都道府県高野連、加盟校はその理念に基づいて日々活動しています。今回のような事案をきっかけに、改めて暴力を一切認めない姿勢を全国の加盟校に強く求めていきたいと考えています。日本高野連としては、広陵高校が目下、報道等されている件への真相究明を進め、誰もが最も納得するような形で、本件が解決することを願っています。今一度、暴力・暴言・いじめなどがない健全な高校野球を追求してまいりたいと思っております。未成年の高校生の立場を慮ることも大変重要だと考えていまして、その面でも、ご指導、ご協力をいただきたいと思います」

(広陵高が1回戦を戦ったことで、混乱をきたしたことへの質問に対して)
「できれば試合をする前に辞退ということになれば良かったんですけど、試合当日に新たなことが発覚したということでしたので、試合をやらざるを得なかった。対戦校の旭川志峯にもご迷惑をおかけしたことになりますし、県大会の段階でも、対戦校が広陵高校に負けて敗退していったわけですから、結果として残念なことになりました。こういうことが今後、二度と起こらないように加盟校と、都道府県高野連、日本高野連と一体となってやっていきたい。加盟校が小さなことでも事案があれば、都道府県高野連に報告する。報告書をまとめて、日本高野連に出していただく。我々のほうは週1回の審議小委員会で報告書に基づいて裁定を下すわけです。よほど、ひどい案件になりますと、日本学生野球協会の審査室にて審査していただく。そういう段階を経て、1月に起きた事象を4月までの間に裁定はしていた。その後、第2、第3の事柄が浮上してきたものですから……。1回目の事象についてはは時間的な余裕がありましたが、それ以後、報告書に上がっていなかったことについては、対処のしようがなかったのが正直なところです。審査自体のやり方は今のところ、最善だと思っています。ただ、改善の余地があるかもしれません。(日本高野連の上部団体である)学生野球協会とも相談しながらやっていかないといけない」

(今回のようなSNSについての懸念)
「誤った情報も生まれている場合もあるかと思うんですけど、情報が流通するというのは決して悪いことではありませんし、今まで握りつぶされていたところが明らかになったり、従来ですと、被害者で泣き寝入りをしなければいけなかったところが、なくなっていくということでしょうから、悪いことばかりではない。ただ、やはり、誤情報、フェイク情報には気をつけないといけないと思いますし、我々も情報の洪水みたいな状況の中で、迅速に対応していかないといけないのは確かなので、従来のように手紙とかFAXでやり取りしていたのではなく、夜中に世界中に情報が飛び交う世の中ですから、時代の変化に対して、社会全体が対応していかないといけない」

日本高野連・井本亘事務局長
「加盟校に不祥事案があった際には学校が調査し、広島県高野連に報告するのが責務。広島県高野連からの報告を受けて、日本高野連では審議委員会で人数、回数、状況など過去の事例と照らし合わせながら平等、公平に審議しています。今回の広陵高校のチームへの厳重注意と付随した部員4人に対する指導(判明日から1カ月、公式戦に出場できない)は、規則の中に『公表しない』とあります。被害者、加害者、関係者を含め、部員ということになれば未成年。個人保護の観点から公表しません。守るのは、被害者も加害者も一緒です。悪いことをすれば指導を受け、反省するのは当たり前のことですが、どちらにも人権はあります。学校側もルールに基づいて、外には出さなかったということです。広陵高校の場合は『厳重注意』でしたので、日本高野連の審議委員会で終わりですが、重たい事案であると判断した場合は、上部団体の日本学生野球協会へ処分申請します。日本学生野球協会の審査室会議で審議し、処分内容が公表されるのが原則です。広く一般の方にも知ることになります。初戦については学校から報告をいただいて、審議もして、指導もさせていただいている。区切りがついていますので、そこで出場を差し止めるという状況ではありませんでした。ただし、試合当日にいろいろなSNS情報が出てきた中で、別の事案があるのか、と。そのことについても学校から報告をいただいて、不祥事件には認定できない、と、その時点で我々への報告は一旦、追わっています。その後、被害を受けられたとされる保護者の方からのご要望を受け入られて、第三者委員会を立ち上げられて、今、調査を進められている。これまでに学校から報告を受けた内容以外に新たな事実は確認できていません。調査の結果を待つ。新たな事実が判明すれば、審議をやり直さないといけない。現状はそれがでてきていない状況です」
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