9試合連続出塁をマーク

高卒5年の今季、一軍でシュアなバッティングを見せる高寺
首位を快走する
阪神で、頭角を現しているのが高卒5年目の
高寺望夢だ。
8月10日の
ヤクルト戦(京セラドーム)でプロ初の猛打賞を記録。3回に中前打、6回に遊撃内野安打で出塁すると、8回一死三塁の好機で中前適時打を放ち、入団以来初の猛打賞を記録した。3試合連続のマルチ安打で9試合連続出塁をマークし、下位打線の核になっている。安打を打つだけでなく、打席の内容が濃い。この9試合で6四球を選び、粘り強さが見える。2ストライクに追い込まれた後も簡単にアウトにならず、相手バッテリーの神経をすり減らす。37試合出場で打率.282、2本塁打、3打点。出塁率.370で、出塁率と長打率を足し合わせたOPSは.765と高い数値をたたき出している。
2年目にはビッグホープ賞
巧みなバットコントロールには入団当時から定評があった。2年目の2022年にはウエスタン・リーグで90試合に出場し、出塁率.346をマーク。6月に一軍昇格すると、
DeNAと対戦したCSファーストステージ第2戦に、「七番・二塁」でスタメン出場。高卒2年目、10代野手のCSスタメン出場は球団史上初の快挙だった。同年にイースタン、ウエスタンの両リーグから将来の活躍が期待される「ビッグホープ賞」 (ベースボール・マガジン社選定)を受賞したが、さらなる高みを目指す若武者に満足感はなかった。
「走攻守すべて足りないな、と。その中でも、守備は一番、足りないと感じました。まったくダメだな、と。打撃に関しては打たされてしまうことばかりだなと」、「球際の部分での弱さ、一軍の選手はそこが強いなと感じました。それと二遊間は特に素早さが大事になってくるので、そのスピードが足りないな、と思いました。手さばき、足さばきがまだ遅いと感じました」と受賞者インタビューで課題を口にしていた。一軍の舞台を経験したことが、成長へのヒントにつながる。
「一軍のいい投手と対戦でき『このレベルの投手を打たないと』という意識が強くなりました。配球の面でもビックリしました。1球目にフォークを変な形で空振りしてしまったのですが、そのあとすべてフォークで三振。弱点を徹底的に攻められました。そこを何とか克服したいです。ただ今はまだまだスイング力、振る力が足りないので、技術の前に、そこを強化していこうと思っています」
昨年はウエスタン最多安打
23年から2年連続で一軍出場なしに終わったが、昨年はウエスタンでリーグ最多安打(124本)を記録。ファームで技術を磨き、同学年の大卒ルーキーが入ってくる今年が勝負の年だった。自身初の開幕一軍入りを勝ち取ると、4月28日に登録を抹消されたが、5月10日に再昇格。野球人生の大きな転機になる一撃を放った試合が、同月13日のDeNA戦(新潟)だった。「六番・遊撃」で22年10月以来となるスタメンに起用されると、1点差を追いかける9回二死走者なしで、相手守護神の
入江大生の直球を右翼に運ぶ同点アーチ。起死回生の一発で引き分けに持ち込み、強烈なインパクトを与えた。
2020年の「黄金ドラフト」
高寺は球団史上に残る20年の「黄金ドラフト」の一員だ。1位・
佐藤輝明、2位・
伊藤将司、5位・
村上頌樹、6位・
中野拓夢、8位・
石井大智と投打の主力選手がそろう中で、佐藤輝が「天才」と評していたのが、7位指名で唯一の高卒入団だった高寺だった。
5年の月日を経て一気に階段を駆け上がっているが、まだ外野の定位置を完全につかんだわけではない。左翼は
前川右京、
中川勇斗、
豊田寛などライバルが多い。高寺の活躍は他の選手の刺激になるだろう。ハイレベルな競争がチーム力の底上げにつながる。
現在は主に外野での起用が多いが、本職の内野の守備能力の高さにも定評がある。遊撃は
小幡竜平、
木浪聖也がしのぎを削っているが、この争いに割って入る可能性が十分にある。23年にリーグ優勝、日本一を飾ったときは一軍出場がなく、歓喜の輪に入れなかったが今年は違う。喜びを爆発させるためにも、攻守でチームの勝利に全力を尽くす。
写真=BBM