出世番号を背負う2年生左腕

花巻東の2年生左腕・萬谷が背番号17で躍動した[写真=田中慎一郎]
【第107回全国高等学校野球選手権大会】
8月15日 2回戦
阪神甲子園球場
東洋大姫路[兵庫]8-4花巻東[岩手]
背番号17が、5回4失点(自責点1)の先発マウンドを悔いる。
「力強いバッターが多かった初戦。2回戦はもう一段階、レベルの高いバッターが多くいた中で、力負けでした」
優勝候補でもあった智弁和歌山との1回戦で完投していた萬谷堅心(2年)は、東洋大姫路との2回戦でも先発。1回裏は、先頭打者の内野失策による出塁を起点に1点。3回裏は、先頭打者への四球をきっかけに、四番打者に左中間への適時二塁打を浴びて1点。5回裏は内野の失策で、またもや先頭打者に出塁を許して2点を失う。
「冷静に対応できなかった部分もあった。味方のエラーをカバーし切れなかったのが悔しい」
菊池雄星(エンゼルス)、
大谷翔平(ドジャース)と、世界へ羽ばたいていった歴代の先輩たちもつけた出世番号を背負う2年生左腕は、敗戦を一身に背負う。
それでもこの夏、萬谷にとっての甲子園には「成長の糧」が詰まっていた。春先からグッと球速が上がったストレートで強豪校相手に真っ向から勝負ができた。スライダーはキレを生み、100キロに満たない超スローカーブや「一番、自信がある」というチェンジアップで打者の打ち気を逸らす投球も冴えた。
左腕をしならせ、テンポよく投げ込む投球フォームは、「お手本」にもなるほどに実に綺麗だ。父・武俊さん(52歳)は元高校球児。岩手県の大野一中(現大野中)から久慈工(現久慈翔北)へ進み、無駄のない「綺麗な投げ方」の捕手として活躍したものだ。
兄もエースとして甲子園出場
萬谷の投球フォームの綺麗さは、「最初に投げ方を教わった」父親譲りか。小学生時代に所属した盛岡東リトルでは、コーチだった武敏さんから「ボールの回転数を意識しなさい」と言われながら、ピッチングを磨いたという。
萬谷の兄・大輝さんは、かつて花巻東のエースとして甲子園に出場した左腕である。現在、中大準硬式野球部に所属する兄からは、「スライダーを教えてもらってコツを掴んだ」。盛岡北リトルシニアから花巻東への進学を決めたのも、「神宮大会や甲子園で活躍する兄の姿を間近で見た」ことが影響している。
父や兄からも多くの刺激をもらって成長してきた萬谷は今、自らの力で花巻東のマウンドを任せられる左腕になった。萬谷を「頼れる存在」と言うのは、盛岡北シニア時代から一緒に投打で刺激し合ってきた同じ2年生の
赤間史弥だ。三番を担った3年生の新田光志朗もまた「頼もしい後輩」と評する。今夏の甲子園、2回戦で敗れた直後の左腕は、確かな口調で語るのだ。
「高校時代の菊池雄星さんのように、強い気持ちを持ち続けて、ピンチでも抑えられる投手になっていきたい」
そして、いずれは「エースナンバーをつけたい」とも。投手としての上積みを求め続ける萬谷は、さらに信頼される投手となって再び甲子園に帰ってくることを誓う。
文=佐々木亨