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新人王のダークホースに 評価急上昇中の「中日の司令塔」は

 

存在感を増している新人捕手


社会人出身の捕手で1年目からチームの勝利に貢献している石伊


 ヒヤリとしたファンは多かっただろう。8月15日のDeNA戦(バンテリン)。中日石伊雄太が9回無死一塁で顔面付近に抜けたフォークに犠打を試みたが、右手人差し指がバットと挟まる形になり負傷。延長10回の守備から退いた。病院に向かって患部の状況が心配されたが、骨に異常はなかった。翌16日は出場機会がなかったが、負傷した人差し指にテーピングを巻いて、試合前の練習を行った。

 1年目から扇の要になっている。開幕一軍入りし、4月10日の広島戦(バンテリン)で、5回二死一、三塁から玉村昇悟の直球を左前に運んだ。「直球に振り遅れている感じがあった。いつもバットを短く持っていますが、もう少し短く持ちました」と工夫で生まれたプロ初安打が初適時打となり、一塁でガッツポーズが出た。同点に追い付かれた直後の7回二死一塁では、一塁走者・菊池涼介を強肩で刺して初の盗塁阻止にも成功。試合は延長戦の末に敗れたが、攻守で実力をアピールした。

「大野(大野奨太)バッテリーコーチからは、試合でも木下(木下拓哉)さん、加藤(加藤匠馬)さんの配球を見て見習っていこうという会話をずっとしています。いろいろと取り入れながら、自分の色を出していきたいです」と試合に出られなくても得られることが多い。5月8日に登録抹消されたが、木下拓哉が左太もも裏を痛めて戦線離脱したため、3週間後に再昇格した。

 その後は試合を重ねるたびに、存在感が増している。8月6日の阪神戦(バンテリン)で、好投手・村上頌樹のフォークに反応して2回一死三塁の好機に左中間を割る先制適時二塁打を放つと、守備でも3回二死一塁からスタートを切った一塁走者・近本光司をストライク送球で刺した。11日の巨人戦(東京ドーム)でも、1点リードの4回に無死一塁で2球目にエンドランを仕掛けられ、緩い変化球だったが、一塁走者の佐々木俊輔を二塁で封殺した。盗塁阻止率.405は古賀優大(ヤクルト)に次ぐリーグ2位。肩が強いだけでなく、捕ってから送球までの一連の動作が早く送球が正確だ。井上一樹監督の求める水準も上がる。「もっとチームをまとめてほしい」と後半戦のキーマンに石伊を指名していた。

名門・日本生命で活躍


 近大工学部でアマチュア球界を代表する捕手と評価を高めたが、ドラフトでは指名漏れ。だが、気持ちは折れない。日本生命では強肩を武器に1年目からレギュラーの座を獲得した。センターラインのディフェンス面を重視する梶田茂生監督の信頼は厚かった。2023年の日本選手権で準決勝・大阪ガスに敗れた試合後の出来事が印象深い。梶田監督はベンチ裏で石伊を呼び止め、しばらく話し込んでいた。その内容は、継投に関しての確認だった。

「8回裏の大阪ガスさんの攻撃で(4回からロングリリーフしていた)喜多川(喜多川省吾)と(ブルペン待機していた)辻(辻祐希斗)のボール、どっちが勝負しやすかったか。喜多川をリードするより、辻をもっと早いタイミングでいったほうが良かったかと確認していました。石伊がどう感じていたかというところと、あのまま勝負ができたと感じるのか、もう一つ手前で代えたほうがリードしやすかったかの確認です。それだけ信頼を置いていますね。彼は投手のボールをよく見てくれているので」。

 社会人1年目から、名門・日本生命の司令塔として絶大な信頼を勝ち取った証左だった。

強打でもチームに貢献


 ドラフト4位で入団した中日は、正捕手が不在の状況が続いている。強肩強打に定評がある木下は23、24年と故障の影響で100試合出場を切っている。次世代を担う正捕手が待ち望まれる中、石伊の台頭はチームにとって大きな光だ。課題とされていた打撃面でも貢献度が高い。8月3日の広島戦(マツダ広島)では、1点を追いかける3回に遠藤淳志の直球を左中間に運ぶ2号ソロ。7月8日の巨人戦(山形)以来となる一発を放った。

 10日の広島戦(バンテリン)でも、同点の6回一死一、三塁でテイラー・ハーンの156キロ直球を振り抜き右翼に打球を放つと、スライディングキャッチを試みようとした末包昇大がボールを落としたため、三塁走者の細川成也が本塁生還。ハーフウェーで戻りかけていた一塁走者のマイケル・チェイビスが二塁で封殺されたため、記録は「ライトゴロ」となったが、一時は勝ち越しとなる一打に球場のボルテージが一気に上がった。

 注目されるのは新人王争いだ。大学、社会人を経て阪神にドラフト1位で入団した同学年の伊原陵人が21試合登板で5勝5敗、防御率1.97の好成績をマークしている。石伊はどこまで追い上げられるか。58試合出場で打率.255、2本塁打、14打点で得点圏打率.344と打撃面で勝負強さが光るが、求められるのは「チームを勝たせる捕手」だ。3位のDeNAとは4ゲーム差。借金11を1日でも早く完済し、逆転でのCS進出を目指す。

写真=BBM
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