異彩を放つ投球スタイル
阪神がリーグ優勝に向け、突き進んでいる。8月17日の
巨人戦(東京ドーム)で3対1と快勝し、マジックを22に減らした。2位・巨人に13ゲームの大差をつけて独走している。
悪い流れをすぐに断ち切る強さがある。「伝統の一戦」の初戦となった15日の試合は、逆転負けを喫した。2点リードの7回に送り込んだグラント・ハートウィグが誤算だった。先頭の
甲斐拓也に四球で出塁を許すと、続く代打の
中山礼都に右翼へ同点2ランを浴びた。
阪神は救援防御率1.98と驚異の安定感を誇る。来日して5試合目の登板となったハートウィグを大事な場面で起用したことに疑問の声が上がったが、
藤川球児監督は中・長期的な視点でチームを作っている。過去4試合は無失点に抑えており、期待値の高い投手だ。決して意外な起用法ではないだろう。実際に対戦した球団のスコアラーは、ハートウィグの投球に驚きを口にしていた。
「スイーパーが衝撃でしたね。150キロを超えるツーシームが投球と軸になっていますが、ツーシームだと思って振りにいくと外角に大きく曲がっていく。制球力がまとまれば攻略が難しくなってくると思います」
投球スタイルは異彩を放つ。195センチの長身だがサイドスローからツーシーム、スイーパー、スライダー、チェンジアップを操る。2023年にメッツでメジャーデビューして28試合登板し、5勝2敗2ホールド、防御率4.84。マイナー通算163回で208三振をマークし、奪三振能力が高い。
学業優秀で頭脳明晰
今年から新加入した
ジョン・デュプランティエが学業優秀で、進学したライス大学は米国で有数の難関大で知られるが、ハートウィグも頭脳明晰だ。MLB公式サイトによると、マイアミ大で微生物学を学び、医学部進学を目指していた時があったという。整形外科医を志していたが、野球の才能を評価されたことで進路を変更した。
日本野球に適応するためには時間が必要だ。来日初登板となった8月5日の
中日戦(バンテリン)は7回から登板し、先頭打者から3連続四球で無死満塁のピンチを招いたが、
山本泰寛をスイーパーで空振り三振、
石伊雄太をツーシームで三ゴロ併殺打に仕留めた。直後に
佐藤輝明の3ランで逆転し、来日初登板初勝利が転がり込んできた。2試合目以降は制球が改善されるように。15日の巨人戦は逆転弾を喫したが、今後の成長への糧にしたい。
順風満帆ではなかったレジェンド助っ人
阪神の助っ人外国人で歴代最長の10年間所属したランディー・メッセンジャーも、最初から順風満帆だったわけではない。来日1年目の10年はセットアッパーとして期待されたが結果を出せず、シーズン途中に先発転向。26試合登板で5勝6敗、防御率4.93と安定感を欠いた。翌年の契約は流動的だったが、今後の伸びしろと新外国人投手を獲得するより計算できると首脳陣が判断。1年の再契約を結んだことにより、異国で成功の道を切り拓いた。翌11年はチームトップタイの12勝を挙げ、その後も先発陣の軸として稼働。8年連続規定投球回到達、通算1475奪三振はNPBの外国人投手の最高記録だ。
メッセンジャーは日本で成功した秘訣として、週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っている。
「『do not get Comfortable』。意味は『自分が成功したからといって偉ぶらないこと』。そして『keep open-mind』の心が大事だと思っているし、これからもその気持ちが変わらないよ。
「最近は痛みに弱い選手が多いし、バケーションだと思って日本に来ている選手もいるから。そこは勘違いしないでほしい」
そして、「続ける」ことの重要性に言及している。
「そう、やり続けること、気持ちを常に同じ方向に持ち続けることが、何かを成し遂げることにつながっていくと思う。とにかくベースボールはクレージー、クレージー、クレージーなゲームだから、余計にそういう気持ちで、日本に来てほしいと思うよ」
ハートウィグは27歳とまだまだ若く、ブレークする可能性を十分に秘めている。ハイレベルの救援陣で信頼を勝ち取るため、マウンドで実力を証明する。
写真=BBM