感覚のズレが生じた2回

京都国際は準々決勝で敗退し、夏連覇ならず。エース左腕・西村は最大の武器であるチェンジアップでチーム躍進の原動力も、この日は相手打線に攻略された[写真=田中慎一郎]
【第107回全国高等学校野球選手権大会】
8月19日 準々決勝
阪神甲子園球場
山梨学院[山梨]11-4京都国際[京都]
約2分の守備時間。
要した11球すべてがストライクゾーンに吸い込まれる。ボール球は一つもない。1回裏に見逃し三振に倒れた山梨学院の二番・宮川真聖(3年)は言う。
「最後はアウトローに一番いい球が決まったので、手が出なかった」
三者凡退。京都国際の先発マウンドに上がった
西村一毅の立ち上がりに、捕手の猪股琉冴(3年)は「コントロールがまとまっている」。エースの状態の良さを左手で感じ取っていた。

1点リードの2回裏、山梨学院・横山[背番号2]に同点ソロを浴びた[写真=牛島寿人]
その感覚にズレが生じたのは1点リードの2回裏だ。イニングの先頭となった横山悠(3年)に左翼ポール際へ同点ソロアーチを浴びる。右打席に立つ四番打者に投じたインコースへの直球。「ベストボールだった」と振り返る猪股は、その時点でもエースを信じていた。
「うまく対応されてホームランを打たれましたが、1点なら大丈夫。悪くても3点以内には抑えられると思った」
だが、山梨学院打線は、その感覚のはるか上をいった。西村の得意とするチェンジアップやスライダーが通用しない。カットされ、空振りが取れず、痛打された。

西村は6回を投げ終わり、一塁ベンチへ戻ると京都国際・小牧監督が交代を告げ、労いの言葉をかけた[写真=田中慎一郎]
2回裏だけで5点を失う。試合中盤にも失点を重ねて計9失点。西村は、6回裏を投げ切ってマウンドを降りた。左腕エースが悔しさをにじませる。
「コースに投げ分けても対応されて、自分の力のなさを感じた」
猪股は、山梨学院打線の脅威を語る。
「決め球のチェンジアップやスライダーをカットされて、リードが難しかった。いつもなら空振りが取れている低めの変化球には反応しない。山梨学院の各打者は、普段のバッターとは違った。2回以降、西村が変わったというよりも、相手がうまく対応してきた」
西村の前に、1打席目で見逃し三振だった宮川は、2回裏に左前適時打を放った。「2打席目からは立ち遅れないように始動を早めにした」。わずかな修正で大会屈指の左腕を攻略した。
悔しさを財産に上の世界へ

甲子園を引き揚げる直前、西村[写真中央]は土をかき集めた。初の全国制覇遂げた昨夏から通じて、成長を遂げた場所だった[写真=牛島寿人]
昨夏は決勝のマウンドで笑い、歓喜の瞬間を味わった。「甲子園優勝投手」の肩書を背負って聖地に帰ってきた西村は、1年前と同じ景色を見ることはできなかった。昨夏の甲子園を経て、もがき苦しみながらも前へ進んできた道のりを西村が振り返る。
「秋春、そしてこの夏と、大事な試合では僕で負けてしまった。最後まで成長し切れなかった」
それでも、京都国際の監督である小牧憲継は、甲子園に辿り着き、準々決勝でも左腕を振り続けた西村を称えるのだ。
「しんどくて打たれる場面では逃げ出してしまっていた子が歯を食いしばって向かう姿に成長を感じました。この悔しさを財産に、上の世界でも頑張ってほしい」
プロ野球選手になる夢がある――。京都国際のエースはそう言い切って甲子園を去った。
文=佐々木亨