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2025夏の甲子園

【甲子園】日大三の野球部と吹奏楽部、アルプス席を彩るダンス部を含めた応援部隊は一心同体

 

甲子園でしか味わえない音


決勝前、小倉全由前監督[右]がアルプス席に訪れ、学校関係者、卒業生らにあいさつ。吹奏楽部の顧問・細谷先生[左]にも「よろしくお願いいたします」と頭を下げた[写真=BBM]


【第107回全国高等学校野球選手権大会】
8月23日 決勝 阪神甲子園球場
沖縄尚学[沖縄]3-1日大三[西東京]

「甲子園応援」は感無量である。

 1985年から日大三高の吹奏楽部顧問の細谷尚央先生は、沖縄尚学高との決勝を前に、一塁アルプス席で興奮を隠し切れなかった。

「今日で通算56試合目です。赴任して以降、すべての試合を引率していますが、毎試合、新たな気持ちで臨んでいます。甲子園球場に足を運ばせてもらうたびに『良い場所だな』と、感慨深い思いになるんです。何度来ても、ここの音しかない、コンサートホールです。銀傘の影響が大きいと思います。プレーする音を含めて、この甲子園でしか味わえない」

 過密スケジュールだった。8月1日から3日まで富士山での夏合宿。その後、甲子園入りし、いったんは帰京したが、3回戦の16日以降は決勝まで現地に滞在。酷暑の演奏で、選手同様、疲労はピークに達していたが、細谷先生は生徒の体調をケア。万全のコンディションで毎試合、甲子園に乗り込んでいた。

 宿舎は野球部の1、2年生と同宿だった。

「学校生活においても、野球部からはチームワーク、思いやりと日々、学ぶことがたくさんあります。今回は球場入りの際に、楽器を一緒に運んでくれたり、そういった気遣いが助かりました。今回の甲子園でより一層、野球部とは距離感、親密な関係になりました」

 取材中、アルプス席に2023年3月まで野球部を指揮した小倉全由前監督が姿を見せた。試合前は必ず、関係者にあいさつし、アルプス席で観戦する。細谷先生にも「今日もよろしくお願いします。今日は(テレビの)解説が入っているので、ここで見られず、すみません」と深々と一礼。律儀な人柄は変わらない。

「素晴らしいです。私の人生で、最高の人物です。あんな方を、見たことはありません。家族全員が、小倉監督のファンなんですよ」

 23年4月から小倉監督を継いだ三木有造監督は、細谷先生が最初の担任の教え子にあたる。また、責任教師の中島健人部長は3年間、担任を受け持った縁がある。23年夏、エース・安田虎汰郎(早大2年)を擁した甲子園出場メンバー(3年生)も3年間、担任をしてきた間柄だった。甲子園を決めた同夏の西東京大会を制し、神宮での胴上げは一生の宝物だ。

「感謝」を胸に帰京


 現チームにも、特別な思い入れがあった。主将・本間律輝(3年)の2人の姉はともに同校卒業生で、吹奏楽部の主将を務めた。本間は幼少時から日大三高の野球応援に魅了され、同校を志望したというエピソードがある。

「入学前から聞いており、保護者とも話をしたことがあります」

 日大三高は沖縄尚学高との決勝で惜敗し、14年ぶりの全国制覇はならなかった。2時間2分、お馴染みのオリジナル応援曲を軸に、全力応援を送り届けた。日大三高ナインは試合後、一塁側アルプスに一礼すると、外野席、そして沖縄尚学高の応援団がいる三塁側アルプス、さらにバックネット裏の観客へも頭を下げた。彼らの心を込めた「感謝」は、十分に4万5600人の大観衆に届いた。

 野球部と吹奏楽部、そしてアルプス席を彩るダンス部を含めた応援部隊は一心同体である。「野球応援とは、言葉に言い表せないほどの教育が詰まった活動です」。野球部の活躍があって、初めて応援の場がある。吹奏楽部も「感謝」を胸に、帰京した。吹奏楽部の目的は、演奏を通じての人間形成。今夏の甲子園での5試合は野球部同様、人生の財産になる。

文=岡本朋祐
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