「負けない投手を目指す」

ヤマハの左腕・佐藤は強打を誇るHonda熊本との1回戦で1失点完投した[写真=藤井勝治]
【第96回都市対抗野球大会】
9月1日 1回戦 東京ドーム
ヤマハ(浜松市)4-1Honda熊本(大津町)
「もうちょっと行けたかな」
141球を投じてもなお、ヤマハの佐藤廉(共栄大)には余力が残っているようだった。
9月1日の大会5日目、強打を誇るHonda熊本との1回戦で完投勝利を手にした左腕の佐藤は「負けないピッチャーを目指してやってきた」と言う。
相手の先発投手よりも先にマウンドを降りない。その強い思いが「長いイニングを投げられている」要因だとも話す。
いかに1試合を投げ切るか――。そのテーマを強く意識するのは、前年夏の悔しさがあるからだ。
昨年の都市対抗1回戦。明治安田戦で登板した佐藤は、5回裏にソロ本塁打を浴びるも、6イニングスを投げ切って1失点。先発投手の重責を担った。だが、7回以降に代わった投手陣がことごとく打ち込まれて
コールド負けを喫する。佐藤は、先発投手が「投げ切る」ことの大切さを痛感した。ゆえに、「今年は特に完投することを強く意識して投げてきた」と言うのだ。
JR四国の右腕と意気投合
ヤマハに入社して5年目。ピッチャーとしての意識は、年齢を重ねて変化してきた。「今は、走って血流を良くして、次の日に疲れを残さないように意識しています」。ピッチングフォームも、入社当時からずいぶんと変わった。
ゆったりと両腕を高く上げるワインドアップ投法に変えるきっかけは、2023年の冬にあった。JABA選抜としてアジアウインター・リーグに出場した佐藤は、チームメートとなったJR四国の
近藤壱来と意気投合する。「スライダーの球質が似ている」ことで2人の投球話は熱を帯びたという。23年の近藤は、都市対抗1回戦で東京ガスを相手に11回を投げて無失点など、シーズンを通して活躍していた。
「逆に僕はシーズンを通して調子がよくなくて、何かを変えなければいけないと思っていました。勇気のいる決断でしたが、ピッチングフォームを変えてよかった」
23年のヤマハは都市対抗で準優勝。チームが描いた確かな軌跡の一方で、佐藤は自身のピッチングに納得ができなかった。その夏を経て、自らの姿を見直すきっかけを得たのだ。
同い年でもある近藤のピッチングフォームを参考に、アドバイスももらいながらワインドアップ投法に変えて球威と安定感が増した。
チームの垣根を越えて、近藤とは今でもこまめに連絡を取り合う間柄だ。互いの登板試合をチェックして「投げ終わったあとに、その日のピッチングの反省会」を2人ですることもあるという。
共栄大時代からの武器で、「自信がある」と言い切るスライダーを中心とした多彩な変化球が、独特なワインドアップから投げ込まれる。この夏、熟成されてきた佐藤のピッチングは輝きを増すばかりだ。
文=佐々木亨